主観客観

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山口彊さんを知っていますか

2011年2月3日

 山口彊(つとむ)さんを知っているだろうか。広島、長崎で二重被爆にあった山口さんを取り上げたイギリスの番組がいま物議を醸している。この英公営放送BBCのクイズ番組は山口さんを「世界で最も運の悪い男」として取り上げ、観客は大笑いをしていた。山口さんは広島に出張中に被爆し、列車で帰ってきた自宅のある長崎で二度目の被爆をした。2010年に93歳で亡くなるまで被爆者の語り部として活動され、日本で初めて二重被爆が認定された方である。日本大使館の抗議を受け、番組制作プロデューサーなどは謝罪をしたが、被爆者やその家族をはじめ多くの人が憤りを感じた。

 英国は核拡散防止条約で核保有を認められた5カ国のうちの1つである。もちろん、核を戦争目的で使うとどのようなことになるかは理解しているはずであるが、核の被害に関してはいまひとつ理解が足りないのだろうか。BBC側には「山口さんを笑いのタネにしたのではない」、「英国の文化としての一種のジョークである」という声もあるものの、日本人としては「はい、そうですか」と引き下がってはいけない問題だと思っている。

 唯一の被爆国である日本は今回の放送に対して憤るのももっともであり、厳格な態度を示すことが必要である。しかし憤りを持つだけでは何も変わらない。世界の人びとの被爆に対しての意識が薄れていることに危機感を持って行動を起こさなければ、核兵器に関する知識は薄いままで、今回のようなことが再発するだろう。同じように日本でも、この事件に対して無関心な人も少なくないと聞く。日本人は経験や教育などさまざまな過程を経て核兵器に関する知識を身につける機会を得ている。しかし、無関心者が増えれば、ゆくゆくは国内でもこのような問題が起きないとは言えない。

 長崎市の田上市長は1月の定例会見においてBBCに二重被爆の記録映画などを送付し、番組放送を要請する意向を示した。また日本では山口さんの語り部としての活動を納めた「二重被爆〜語り部・山口彊の遺言」が今夏に公開される。
 今回の事件における不幸中のわずかな幸いと言えば、国内外問わず、二重被爆についての関心を高める機会となったことである。英BBCの報道に心を痛ませられるなか、注目を浴びる機会となった原爆被害というものを是非とも日本人、英国人ひいては全世界の人びとに伝え、感じとってもらわなくてはならない。

(小夏)


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