主観客観

最新調査結果はこちら

ノーベル経済学賞を企業活動に利用すべき

2011年11月4日

 10月10日(日本時間)、スウェーデンの王立科学アカデミーは2011年のノーベル経済学賞をトーマス・サージェント(米ニューヨーク大教授)とクリストファー・シムズ(米プリンストン大教授)の2氏に授与することを発表した。受賞理由は「マクロ経済における原因と結果に関する実証的研究」に対してであり、同アカデミーは民間部門の合理的期待に注目して、財政・金融政策と経済の相互関係を実証する手法を発展させたと評価している。近年、リーマン・ショックやギリシャの財政危機などさまざまな経済問題が起こっているなか、財政政策や金融政策による効果を理論的・定量的に計測することの重要性は一層高まっている。

 消費者や企業は、過去から現在までの情報だけでなく、将来に対する見通しを考慮したうえで、現在の行動を決定する。これは当然のことのように考えられるかもしれないが、将来の見通しをどのように数値化し、またそれがどのような形で現在の行動に影響を与え、さらにそれを計量分析するとなると、なかなか難しい。サージェント教授はこれらを理論的に精緻化し、さらに実証分析手法を発展させた。しばしば、株式ニュースなどで「政府の対策について市場は織り込み済みで、大きな影響は与えませんでした」とか「今回の対策は市場予想以上の規模で、株価は大幅に値上がりしました」などの表現が使われるようになったのは、同教授の実証分析手法が実務的にも広く認識されて以後のことである。

 他方、シムズ教授は中央銀行による政策金利引き上げの影響などについて、時系列分析による手法を開発し、経済成長が短期間に減速しても、インフレが落ち着くのに1〜2年程度かかることを説明した。つまり、政策の持続期間を計測することを可能としたのである。例えば、バブル崩壊後に日銀が行った緩和政策が実態経済に及ぼした影響を計測した結果、その後の不況期間を短縮することは可能であり、そのためには日銀の金融緩和は不十分であったという研究もある。

 今回の受賞理由はマクロ経済の実証分析に対してであったが、両教授による手法は企業活動におけるさまざまな場面で活用することもできる。例えば、広告投入効果やブランド価値の持続期間とその大きさ、消費者の購買決定プロセス、あるいはマクロ政策が自社売り上げに影響を及ぼすまでの期間など多岐にわたる。今後は、これらの手法を用いた企業分析や販売戦略構築などが活発化する可能性もあるだろう。ノーベル経済学賞は、自社への利用価値としても貪欲に吸収すべき情報である。

(なんとか王子)


今月のトピックス・主観客観に戻る
最新調査結果はこちら

このページのトップへ

このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.