主観客観

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戦後復興からつながる現在の貯蓄

2012年8月3日

 日本の家計の金融資産残高は2011年度末で約1,513兆円ある。その内訳をみると、現金・預金が約835兆円、保険・年金準備金が約422兆円であり、金融資産の8割以上をこの2項目で占めている。一方、最も金融資産を保有している年代は60歳以上で64.6%である(30歳未満:0.4%、30〜39歳:5.0%、40〜49歳:12.2%、50〜59歳:17.8%)。
 これらの特徴はライフステージを軸として説明されることが多いが、少し視点を変えて戦後経済史からみていくとどうなるだろうか。

 かつての国によるポスター広告をみると、「昭和26年3月1日→31日 特別貯蓄運動 25年度3400億円はぜひ達成しましょう」(大蔵省/日本銀行)、「大きくなって戻っておいで 豊かな社会を育てる計画貯蓄 夏期特別貯蓄運動」、「国民貯蓄 五兆円達成記念 今年も貯蓄で国の地がためを」、「明るいくらしは貯蓄から」、「暮らし噛み合ってますか。生活の歯車、貯蓄で滑らかに。歳末特別貯蓄運動」(いずれも貯蓄増強中央委員会。後援:大蔵省/日本銀行)といった貯蓄を美徳として啓蒙する言葉が並ぶ。
 また、昭和23年からは全国の小学校に「こども銀行」がおかれ、学校現場においても貯蓄を奨励する教育を行なっていた(指針自体は平成16年5月に廃止)。そのため、この当時にこども銀行を経験した人の貯蓄率は現在でも高いというデータもある。
 つまり、戦後、長らく国をあげての貯蓄が推進されてきたのである。

 当然、その背景にあるのは戦後復興に向けた資金を確保するためであるが、その資金を海外からの支援だけでなく、家計が行う貯蓄にも求めたということである。ちなみに、海外からの支援の1つとして、世界銀行(国際復興開発銀行)からの低利融資によって、日本は新幹線や高速道路などのインフラ整備を行い経済発展の礎とし、1990年7月に世銀ローンをすべて返済し終えた。

 マクロ経済的に考えると、本来、貯蓄は経済成長率とバランスしていることが望ましい。貯蓄が少なすぎると投資に必要な原資が足りず経済成長を抑制する要因となり、貯蓄が多すぎると海外への資金流出や過少消費などにより経済成長の抑制につながる。

 戦後復興には投資のために多額の資金が必要なため、国民に貯蓄を求めたのは正しい選択であったろう。さらに、高度成長期にも高い貯蓄率が旺盛な資金需要に対する資金の供給源の役割を果たしてきた。しかし、結果として、60歳以上で家計金融資産の3分の2を占めるという歪みをもたらすことにもなった。また、現在、二人以上世帯での貯蓄ゼロ世帯は28.6%と約3割を占める。いわば、貯蓄できない人はできず、貯蓄できる人はしすぎている、というのが現状ともいえる。貯蓄について、成長率や世代間で最適なバランスとなるように促すことも経済成長に寄与する政策の1つといえるであろう。

(撞球者)


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