主観客観

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流出情報との遭遇

2014年8月5日

 先日、首都圏に本店を置く中堅印刷業者を訪問した。同社は証券や手形、(金融機関の窓口でよく見かける)伝票・申込書などビジネスフォームの製造を手がけている。預金口座開設、生命保険の契約時などに利用される申込書は、署名捺印を必要とする記録媒体のため、「紙」のビジネスフォームの存在感は高い。しかし、株券や手形の電子化に代表されるように、ビジネス上の記録媒体が「紙」から「デジタル(データ)」に切り替わる潮流には抗えず、紙を中心とする汎用ビジネスフォーム市場は縮小を余儀なくされている。

 紙などを記録媒体とする環境で社会人生活をスタートした20年近く前、銀行勤務当時の記憶がよみがえる。各種伝票は営業日ごとに一束にまとめて製本し、並行してマイクロフィルムに入出金や預金・融資残高データを保存していた。そのなかには膨大な顧客情報も含まれている。保管や読み取り業務の煩雑さは否めないが、セキュリティ面を重視する銀行業界では、改ざんが困難なマイクロフィルムが数多く採用されていた。古今東西、顧客・個人データの流出は致命的な結果を招くことがある。  

 今夏、大手通信教育企業から大量の個人データが流出したことが明るみに出た。その数は2千万件を超え、容疑者はスマートフォンにデータをコピーして持ち出したと報道されている。紙やフィルムなどで顧客データが管理されていた時代には困難な事件だったろう。今後、流出した個人データが拡散し、管理・修正されずに一人歩きしていくことが気がかりである。

 管理・修正されていない個人データは不意に人の心を踏みにじる。先日、妻の実家を訪れた際、郵便受けのハガキの宛名に視線が向かった。妻の母あての販促用ダイレクトメールだ。義母は2年前に故人となっている。存命時のデータがこのDMに利用されてしまったのだろう。オレンジ色に輝く夕日が奥まで差し込む病院の廊下で妻の手を握り悲しみに暮れた2年前のその日を思い出した。
 今回、大手通信教育企業から流出した大量の個人データは子供に関するものだ。多くの子供は親元ですくすく成長していくが、離別あるいは図らずも夭折してしまうこともありうる。故人向けのDMが親元に届けられないことを願う。

(横井幸一郎)


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