主観客観

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ピケティブームの背後にあるもの

2015年3月4日

 トマ・ピケティ著『21世紀の資本』が売れている。2014年12月の日本語版発刊以来、700ページを超える大部でありながらビジネス書ランキングで上位を維持し続けているということは、多くのビジネスパーソンが抱いている問題意識と合致している点が多いのであろう。本書における“歴史的にみて資本収益率が経済成長率を上回っているため、資産家はますます富み、格差は拡大し、そしてその傾向は今後も続くだろう”という分析は、さまざまな論壇で賛否両論を交えた議論がなされている。

 資産家とそうでない人たちとの格差拡大が問題とされているため、往々にして資産課税や高額所得者への課税強化という方向で官民さまざまな場面で議論が進むのだが、それがはたと止まる瞬間がある。議論している当事者自身が高額所得者であることに気づくときである。同書で使われているデータベース、The World Top Incomes Databaseで日本の数字をみると、20歳以上人口のなかで上位1%に入る年間所得額は1,280万円である。さらに、日本の公的統計で確認すると、「平成23年所得再分配調査」(厚生労働省)では800万円以上でトップ3%以内となる。あるいは、1年間を通じて勤務した給与所得者を対象とした「民間給与実態統計調査(平成25年分)」(国税庁)をみても、1,500万円超で上位1%の高額所得者に入ってくる。

 “資産家”“高額所得者”といった言葉から抱くイメージと比べてどのように感じられたであろうか。現実には、給与所得者の年間給与水準は、300万円超400万円以下が809万人(構成比17.4%)で最も多く、平均給与は414万円、というのが実態である。もちろん、アメリカの所得上位1%は4,460万円以上(1ドル=120円で換算)という水準と比べると、日本の所得格差は小さいかもしれない。

 しかし、2014年7月に公表された「国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると、日本の相対的貧困率(貧困線=年収122万円に満たない世帯員の割合)は16.1%にのぼり、過去最悪を更新した。これは日本人の6人に1人が相対的な貧困層に分類されることを意味する。さらに、子どもの貧困率(16.3%)も過去最悪を更新したことを受けて、政府は2014年8月「子供の貧困対策大綱」を初めて策定した。親から子への貧困の連鎖を防ぐために、教育費の負担軽減や親の就労支援などに乗り出す方針である。

 データに基づき詳細に分析していることが同書の評価を高めている。そのうえで、このような具体的数値を意識せずとも国民の間で格差に対して抱いていた漠然とした不安感が、ベストセラーとなった背景にあるのだろう。

(撞球者)


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