主観客観

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上場ゴール

2015年4月3日

 去る3月31日、日本取引所グループは、最近の新規公開を巡る問題について対応策をとることを発表。併せて、日本証券業協会と日本公認会計士協会を通じ、引受証券会社および公認会計士・監査法人に対し協力を要請した。この動きは、いわゆる“上場ゴール”を問題視したものである。


 “上場ゴール”について簡単に説明する。新規に株式を上場させて、創業者やベンチャーキャピタルなどの株主が保有株を売却し利益を得たり、主幹事証券会社が手数料収入を得たりということ自体は、一般的なことであり、そのものが問題視されることではない。しかし一部では、これら関係者が自身の短期的な利益を求めて株式を公開する一方、後に業績予想の下方修正や配当の見送り、目立った材料の不足などにより、株価が初値から下がり続けるようなケースもある。このように、株式上場が資金調達や知名度向上などの手段としてではなく、上場による利益そのものを目的としてしまっている(ないしは憶測される)状態が“上場ゴール”などと揶揄されているのだ。


 上場前後の粉飾決算や資金流出などがあった悪質なケースに関しては、東証から特設注意市場銘柄として公表されたうえで上場契約違約金の徴求を受けており、今年に入って4月1日までですでに4社がこの対象となっている。2014年が1年間で5社、2013年が同0社であったことと比較すれば、昨今の状態は異常であると判断するのが自然であろう。本来であれば、上場前に企業として解決すべきであった課題であり、取引所や主幹事証券会社、監査法人もその可能性について気づくべきである。場合によっては、「知っていたがわざと黙殺したのでは」との誹りも免れないだろう。

 近年、IPO銘柄と言われる新規公開株に関しては、初値が公募価格を上回るケースが多く、IPOそのものの増加もあって、一部ではIPOバブルの再来などとも言われている。2014年12月31日時点で824万口座の開設(金融庁調べ、速報値)があったNISA(少額投資非課税制度)の後押しもあり、個人投資家の動きが活発になってきていたタイミングだけに、投資家を不安にさせる昨今の“上場ゴール”騒動は株式市場に水を差したと言えよう。


 ただ、世間で“上場ゴール”と言われている銘柄のすべてが故意によるものではない。IPO銘柄へ人気が集中することで、実力以上の株価となってしまっただけで、中長期的な飛躍のための準備期間中の企業も中にはあるだろう。それこそ、本当にその企業の「見込みが甘かった」だけなのであれば、投資先として見誤った投資家に自己責任があるはずだ。
悪質な“上場ゴール”の増加による投資家被害自体も問題だが、“上場ゴール”という言葉ばかりが一人歩きしてしまい、株式市場全体が低迷してしまったり、よくよく見れば将来性のある企業まで非難の対象となってしまったりするような事態は望ましくないだろう。

 

(Ti)


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