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断食と消費

2015年7月3日

 今年4月にはネパールで発生した大地震で8,700人以上が、5月にはインドで発生した熱波で2,300人以上が死亡したとされており、南アジアにとって受難とも言うべき事態が続いている。こうしたなか、6月後半にパキスタンで発生した熱波により、熱中症などですでに1,100人以上の死者が出たと報じられている。電力インフラが不安定なことに加えて、同国の国教であるイスラム教がラマダーン(断食月)に入っており、日中の飲食が水を含め一切できないことが事態を悪化させているようで、世間の注目を集めている。

 このラマダーンだが、断食“月”というだけあって、1カ月(太陰暦)続くのだが、経済的にはどのような影響があるのだろうか。「断食は質素なものであるため、ラマダーンは消費を低迷させ経済に悪影響を与えるのではないか」というのが当初抱いていたイメージであったが、調べていくとラマダーンがそれとは正反対の性質をもったものであることがわかってきた。

 ラマダーン期間中は、夕方が近づくにつれ人々の空腹感や喉の渇きが増していき、肉体労働はもちろん、事務仕事でも集中力が落ち、労働生産性は下がるだろう。さらに、「ラマダーン・シフト」とも呼ぶべき勤務時間の短縮が行われているケースもあり、総じて生産性は落ち込むだろう。また、イスラム教徒の多い地域では、飲食店は日中の集客を期待できず、ランチ営業中心の店であれば売り上げの大幅ダウンは避けられない。

 しかし、日没後になると一転、日中に飲食しない分普段より“豪華な料理”を“多く”食べるそうだ。市場や飲食店は夜遅くまで(あるいは明け方まで!)賑わいが絶えず、ラマダーン中の食料消費はトータルでは普段に比べ多くなると言われている。

 また、ラマダーンによる経済的影響を語るうえで外せないのが、ラマダーン明けの祭りの存在だ。ラマダーンが明けると、日本での盆や正月のような祭りに入る。この際には、休暇やボーナスが与えられて、多くの人が実家に帰省する。また、祭りの間は晴れ着を着て出かける風習があり、前述のボーナスと相まってラマダーン期間中から衣料品商戦は大いに盛り上がるという。

 あくまで推測の域を出ないが、デメリットを差し引いたとしても、ラマダーンは経済に少なからぬプラス効果があるのではないだろうかと思われる。

さて、これまでラマダーンについて考えてきたが、断食そのものは今の日本においてさほど珍しいものではない。ダイエットや健康のために、「プチ断食」を行ったり「断食道場」に行ったり、という話を聞いたことがある人も少なくないだろう。これらは消費を抑制しているように見えるが、意外にも当人達は普段よりお金を使っているケースもある。

ラマダーンも、もともと商人であった開祖ムハンマドが、ビジネス面も踏まえて考え出したものなのかも知れない。

(Ti)


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