主観客観

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下町ロケットと街の洋菓子店

2016年1月8日

 TBSドラマ「下町ロケット」が2015年の民放連続ドラマの平均視聴率トップになったという。このドラマが人々を引きつけた理由はそれぞれあるだろう。私は毎週末、家族の住む北関東の都市と東京とをJR高崎線で往復している。以前、電車のなかで池井戸潤さんの原作「下町ロケット」を読み映像化への関心があったため、自然とドラマの視聴者に加わった。

 ドラマの舞台となった佃製作所は機械部品の製造業者で同社の佃社長が主人公。佃社長は宇宙航空分野の元研究者で父親の会社を継いだという設定である。いわゆる技術畑の佃社長は宇宙航空や医療機器分野で自社製品が活躍することをモチベーションとして東奔西走、協力者も現れライバル会社との競争に勝ち抜く、というのが大まかなストーリーだ。
 予算や仕事が天から降りてくるのを待つ、という営業形態とは真逆。自社製品にプライドを持ち、大きな決断をして従業員を牽引している佃社長の生き様が視聴者の心を引きつけた一因のように思われる。

 企業経営者は決断の連続で、その決断は従業員の生活を含め広範囲に大きな影響を及ぼす。決断が正解かどうかは後年、振り返るかたちで判断することになる。連続して正しい決断を下すのは簡単ではなく、決断を誤ると場合によっては経営破たんに至るケースも多々ある。振り返ると、私はこれまで幾度となくそのような倒産現場をみてきた。ここで、大きな決断が奏功した企業を思い出した。2000年代初頭、私が足を運んでいた北関東に本店を置く企業である。

 同社は1990年代まで家族経営のいわゆる街の和洋菓子店であった。2000年に発表した新商品の洋菓子(ラスク)が大ヒットすると時を経ずして同社は転機を迎える。年商を上回る借入金を金融機関から調達して新たに洋菓子工場を立ち上げたのである。当時、この大規模設備投資に対する悲観的な見解も周囲にあった。ヒット・流行には「一過性のブーム」「衰退」というマイナスのキーワードがつきまとう。貸出金の担保として経営者の親族名義の自宅に抵当権を設定する金融機関もあった。新工場への投資が失敗して経営が傾けば全てを失うかもしれない。まさに大きな決断だった。

 心配する周囲をよそに同社は順調に業績をのばした。街の和洋菓子店はいまでは年商100億を超えている(「下町ロケット」の佃製作所の年商を上回る規模)。同社の洋菓子は全国区となり、都内の百貨店の売り場には行列ができるという。私も正月休みのお土産として北関東の百貨店の行列にならび、その洋菓子を抱え高崎線で東京に向かった。車窓に映る同社の新工場は今まで以上に大きく見えた。

(週末高崎線)


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