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企業年金とマイナス金利政策

2016年7月5日

 「年金費用増が減益要因 金利低下で積み立て不足」。最近、このような内容の記事が新聞や雑誌などで散見されるようになった。マイナス金利の影響が企業収益を悪化させるという主旨だ。

 年金債務の計算方法は年金財政と企業会計で大きく異なる。企業年金基金が管理する年金財政では、予定利率を割引率として年金債務の現在価値を算出するが、この予定利率は、厚生労働省が5年に1度実施する財政再計算時などに予定利率を変更するケースはあるが、通常、毎年見直すということはない。
 他方、企業会計では、金融市場の債券の金利水準に連動する形で毎決算期に割引率を見直す。2015年度のように金利が低下すると、適用する割引率が低下するため、年金債務が膨らむこととなる。大きくなった債務は一定の期間で償却し、年金費用として計上する。したがって、即時認識など償却期間が短い企業ほど足元の決算の負担が重くなり、収益を下押しすることになる。

 年金債務を1〜2年の短い期間で償却する企業にとっては、一時的に負担が大きくなり、利益を圧迫することは避けられない。しかし、一般にこのような短期間で償却する企業は少数派であり、償却期間は10年前後とする企業が多い。したがって、割引率が下がることによる負担増は、一部の企業を除いてそこまで大きくなるとは考えにくい。

 企業会計基準委員会は、3月9日、マイナス金利に関する会計上の論点への対応について、「退職給付債務の計算における割引率について、平成28年3月決算においては、割引率として用いる利回りについて、マイナスとなっている利回りをそのまま利用する方法とゼロを下限とするいずれの方法を用いても、現時点では妨げられないものと考えられる」との見解を公表した。

 もしこの判断が続くならば、企業はゼロ%を割引率の下限とすることができる。現在、割引率がゼロに近づいているなか、割引率下落による企業収益への悪影響は最終局面に来ているともいえよう。

 割引率低下が意味することは企業会計上、退職給付費用の経費計上を前倒しすることと言える。したがって、割引率の変更で従業員に将来支払う年金額が変わるわけではない。ただし、マイナス金利の最大の問題は国債などの債券が収益を生まない状況に陥り、資産運用で従来見込んでいた利回りを確保するのが難しくなるという点にある。これは、企業会計においても、年金財政においても同様である。マイナス金利の状態が長引くにつれて、年金資産の運用利回りをいかに確保するかという問題が待ち受けることになる。

(撞球者)


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