主観客観

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戦争の産物としてのGDP

2016年11月4日

 戦争はさまざまな発明を生み出す。インターネットやレーダー、コンピュータも軍の資金で開発されたものだ。そして、国内総生産(GDP)も第二次世界大戦が生んだ発明品のひとつである。

 GDPは国の暮らし向きを測定・比較するための指標といえるが、統計の中では歴史は比較的浅く1940年代に生まれたばかりである。それ以前は景気を測定するのに株価指数や貨物輸送量など別の指標が使われていた。

 現在、我々が目にするようなGDPができたのは、1930年代の大恐慌とそれに続く第二次世界大戦がきっかけとなっている。英国と米国でほぼ同時期に開発が進められたが、その目的は大恐慌から脱する手掛かりとなる情報を政府が求めていたことによる。最初に米国で出されたレポートは、国民所得が1929年から1932年の間に半減していることを明らかにした。当時の政府が国民に危機感を伝えきれていなかったなかで、国内生産が数年で半減しているデータを見せられれば、対策が必要なことは誰の目にもはっきりとわかる。

 米国初の国民総生産(GNP)統計は1942年に発表されたが、そこでは政府支出を含めた支出のタイプがいくつかに分かれており、戦争のための生産力を分析しやすい形になっている。GDP統計の有用性について、全米経済研究所(NBER)の元所長だったミッチェル氏は「国民所得の推計がどれほど大きく第二次世界大戦を支えてきたかについて、戦争の費用調達に関わってきた人にしか理解できないだろう」と論じている 1。しかし、戦争を機に生まれたGDPは、戦後、国際的に定義と測定が調整・統一され、戦後復興期にも大いに活用されることとなったのである。

 実は、GDPの開発時に方法論を巡って激しい論争が起きている。開発責任者は当初、GDPを単なる生産量ではなく、国民の経済的な豊かさを測定することを目指していたという。他方、政府側は、政府が支障なく財政政策を運用できるデータを作成することを目的としていた。政治的争いの結果、戦争を見据えた政府側の現実路線が勝ちを収めることとなったのである。
この決着は現在のGDP統計にも尾を引いており、GDPでは捉えきれていない国民の豊かさや幸福度を測る指標作成の試みにつながっていることも見逃せない。戦争を機に生まれたGDPは自然現象とは異なり人為的に作られたものであるが、時代の変化や新しい経済システムを取り入れながら、現在も改良され続けているといえよう。

1. J. Steven Landefeld, “GDP: One of the Great Inventions of the 20th Century,” in Bureau of Economic Analysis, Survey of Current Business, January 2000で引用されている。

(撞球者)


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