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日本のモノづくり最後の砦が揺らぐ?

2017年3月3日

 写真・カメラを趣味とする者からすると、カメラ産業が日本メーカーの独壇場であることは非常に頼もしい。しかし最近は、カメラ市場の縮小やカメラ関連企業の苦境に関するニュースに心苦しい思いをすることも多い。
 ニコンが、高級コンパクトデジタルカメラ「DLシリーズ」の発売中止を発表した。「開発費の増加と市場の減速による販売想定数量の下落」というその理由は、カメラ好きからするといささかショックなものであった。
 DPEおよびカメラ販売大手のキタムラも、全店舗の約1割に当たる129店の閉鎖を発表した。専門店だけあって販売員の知識が豊富で、特に中古でカメラやレンズを購入する場合には頼りになる先であったため、これもまた不安が募るニュースであった。
 2016年のデジタルカメラ出荷台数は、レンズ一体型が前年比43.7%減の1,258万台、レンズ交換式が同11.0%減の1,161万台と大幅に落ち込んだ(カメラ映像機器工業会「デジタルカメラ統計」)。熊本地震による部品供給の滞りという要因はあったものの、それを差し引いても市場の縮小が加速していることは確かだ。
 最大の理由は言うまでもなく、スマートフォンのカメラ機能の性能向上である。画質は普及価格帯のコンパクトデジタルカメラに迫るレベルにまで向上し、大半の人にとっては「これで十分」という水準に達してしまった。
 かつては「スマートフォンのカメラで写真に興味を持った層が、その画質に飽き足らず本格的なカメラの購入層になることで、カメラ市場が活性化する」という楽観論もあった。そうならなかったのは、スマートフォンのカメラが単に写真を撮るだけでなく、それをメールに添付して送付したり、SNSにアップして共有したりする、新たなコミュニケーションツールになったためである。スマートフォンの画面で見るだけなら、なおさら付属のカメラで画質は十分。プリントの必要もないため、DPE店の需要も大幅に減少した。
 いまやスマートフォンがテレビ、音楽プレイヤー、ゲーム機、カーナビ、カメラを兼ねるようになり、コンシューマー向け機器の市場を大きく揺さぶっている。今後も驚くような機能が搭載されるに違いない。そのようななか、日本メーカーは淘汰を免れることができるのか。
 現在カメラ市場を日本メーカーが支配しているのは、必要とされる光学技術・画像処理技術・精緻な組み立て技術などが、一朝一夕では追いつくことのできない高度なノウハウに支えられているためである。各社はそれを基盤に事務機器、半導体製造装置、医療機器などを新たな事業の柱としている。しかし、カメラと異なりそうした分野では、海外メーカーの追い上げを受け苦戦している側面もみられる。
 家電、携帯電話、半導体・電子部品、液晶など、様々な分野において日本メーカーが存在感を失っていくなか、カメラメーカーが持つ技術は日本のモノづくり最後の砦ともいえる。新たなブレイクスルーを果たしてほしいと願ってやまない。

(KH)


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