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電子書籍ノススメ

2018年4月4日

 ずっと「本は紙に限る」派だったが、今年になって電子書籍に寝返った。
実のところ、現行の電子書籍端末はまだまだ使いづらい。紙の本のようにパラパラ自由にページを行き来することができないし、画面サイズの制約から図表はかなり見にくい。本の種類によっては読めたものではないときもある。
 それでも電子書籍派に転じたのは、メリットのほうが大きかったためだ。

 まずは可搬性。一つの電子書籍端末で数千冊を持ち歩くことができるので、ふとした空き時間にその時の気分で読みたいものを読むことができる。その結果、読書の時間と量が一気に増えた。
 次に、書籍購入の効率化。ネットにつながる環境であれば、人との会話や広告などで興味を持った本を即座に購入・ダウンロードして読むことができる。そのため、「機会があれば」と思いながら結局読み逃してしまう本がなくなった。
 経済面でもメリットがある。電子書籍は再販売価格維持制度の対象外であるため、頻繁に割引セールが行われている。そうしたセールで掘り出しものを探すのも楽しい(代わりに「古本」を買うことはできないが)。

 個人的に最大のメリットは、「ハイライト」「メモ」という、本文に線を引いたりメモを書き込んだりする機能があることだ。
 私は書き込みしながらでないと本が読めない。「なるほど!」と思った箇所には線を引きたいし、思い浮かんだことは余白に書き込みたい。そうしないと頭に入ってこないし、再読するときにも目印となるものがなく不便だ。
 そのためには「紙の本でないと・・・」とずっと思い込んでいたのだが、それは大きな間違いだった。
 電子書籍端末の画面を指でなぞれば、本文に線を引くことができる。消して引き直すのも簡単。カラー対応の端末であれば色分けもできる。テキストも書き込むことができる。さらに、これらの箇所は自動的にクラウド上に保存されるので、読み終わったときには自動的に要約メモが出来上がっている。この機能がなんとも秀逸だった(Amazonの電子書籍サービス「Kindle」の場合)
 そんなわけで、知識を仕入れるために本を読む場合は、電子書籍一択となった次第である。

 2017年の電子出版市場は、前年比16.0%増の2,215億円と推計されている(全国出版協会・出版科学研究所「出版月報」)。紙媒体の市場(1兆3,701億円)に比べるとまだまだ規模は小さいが、着実に成長している。

 電子書籍市場を引っ張ってきたのは圧倒的に電子コミックであるが、最近は文字の書籍も電子化される点数が増えているのがうれしい。出版不況のなかで大手出版社が新刊の電子化を推進していることもあり、最近では気になった新刊書のほとんどが電子版で購入できている。

 電子書籍の進歩で私の読書生活は大きく変わったが、この調子で普及が進めば、社会にも大きな影響を及ぼすだろう。印刷・流通コストや物理的な売り場が不要であること、再販売価格維持制度の対象外で価格設定の自由度が高いといったことから、印刷、出版、出版取次、書店など関連業界の構造は大きく変わると予想される。古書店も、専門書・稀覯(きこう)本を扱う店以外は衰退するかもしれない。図書館のあり方も変わっていくだろう。

 本の中身も、ネット検索機能やハイパーリンク、機械翻訳といった電子媒体ならではのメリットを活用したものとなり、やがては音声や動画をともなうまったく新しいものに変化するかもしれない。教科書がそうした形で電子化されれば、教育のあり方も変わるだろう。

 そうはいっても、電子書籍には、紙の本に対するような愛着が湧かないのも事実である。読書家・愛書家と呼ばれる人には電子書籍を嫌う人も多い。かくいう私も、「知識・情報を得るための本」は電子書籍を買うが、「思い入れのある本」は紙で入手することが多い。
 電子書籍はこのまま順調に普及するのか。どういった形に進化していくのか。調査会社のスタッフとしても一ユーザーとしても、その将来に対する興味は尽きない。

(KH)


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