主観客観

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アジアの成長の行方

2018年6月5日

 現役詐欺師たちと互いに騙し合う勝負をした経験がある。アジアから来た外国人が日本で起こす犯罪件数の増加を受け、アジアで今何が問題になっているのか、教育や経済の問題がどのような影響を与えているのかを調査するため、中国返還目前の混とんとした香港で取材をした。長く勤めたマスコミ時代のできごとだ。

 私はその日、早朝から目抜き通りにある公園で観光マップを広げ、接触を待っていた。女がひとり、すぐに声をかけてきた。穏やかな雰囲気の20代の中国人。彼女は自分の赤ちゃんだという写真を見せ、家族の話をし、朝食を一緒にどうかと誘ってきた。

 私たちは、公園前の人気の食堂に入った。10分もしないうちに、先の女の友人を名乗るフィリピン人が突然現れ、勝負は本格的に動き出した。二人は交互に仲間に電話しはじめた。

 一方で、私は相手の出方を見ながら誘導を試みていた。二人の仲間と接触するのが狙いであり、アジトに潜入するのが目的だった。そのうち、私はバスを乗り継いだ先にある、遠い町に連れていかれた。

 細い路地を入った、古いビルの中にそのアジトはあった。各部屋にはドアがなく、何の目的で居るのか分からない人たちが、何をするでもなく、たくさん居るという不思議な空間だった。私は、案内されたラオス人の男の部屋で、国籍もさまざまな詐欺師10人と接触することができた。

 ポーカーをしながら、彼らの話を聞く。アジアの貧しい土地の出で、家庭環境にも恵まれず、貧困から抜けだすすべがないまま苦労してきた人間の集まりなのだと感じた。この人たちが貧困や教育の不足をどこかで断ち切ることができたら、アジアはどのように変わるのだろう、と思わずにいられなかった。

 彼らと数日行動をともにした結果、私は多くのことを経験したが、自身の駆け引きは一歩及ばずだった。慣れたころに居室で出された飲食物に睡眠薬が混入されていたのだ。気が付くと、真っ暗になったマンションに私ひとりきりだった。隠し持っていた証拠データは抜き取られ、記録機材は無くなってしまっていた。

 いま、仕事はがらりと変えてしまったが、日本企業や世界情勢が、アジアとどうかかわっていくのかを追う機会に恵まれている。日々、投資や合併という文言と一緒に飛び込んでくるニュースの中身を見ていくと、最終的に勝つのは誰だ、というあの日感じた緊張が蘇ってくるような気がする。

 今後のアジアの姿は、テクノロジーの発展と掛け合わされることで、今わたしたちができる想像をずっと超えたところに変容していくのではないかと思う。ぜひ、自分の目で、各国の戦略と勝負の行方、その結果もたらされる人々の暮らしを見ていきたい。世に伝えていきたいと今は感じている。

(金田)


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