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 【 円高がもたらすもの 】
 〜為替デリバティブ損失が表面化するとき〜
2010年7月5日
 米国景気の失速で、ニューヨーク外為市場の円相場は7月1日終値で86円にまで急騰し、日経平均は年初来の安値となるなど二番底の懸念も再浮上してきた。特に輸出企業への影響は大きく、電機、自動車関連株は売られた。
 ところが、為替変動とは関連の薄い内需主体の中小企業が、急速な円高の影響から経営の危機に瀕しているケースが数多く報告されている。2009年頃から突如として表面化した巨額の特別損失。詳しく見ると「為替差損」が計上されていると同時に、借入金の増加も見受けられる。その原因のほとんどが「為替デリバティブ」だ。
   ある日用雑貨輸入業者の場合はこうだ。設立約10年のこの企業は、自社で企画したキャラクター商品を中国のメーカーに発注し、それを輸入して国内取引先に納入している。中国のメーカーに対してはドル決済なので、当然為替の変動リスクを抱えている。そのため、円安になったときの為替差損をヘッジするために、米ドルのコールオプション(買う権利)などを購入していた。ところが実際に取引銀行と交わしていたデリバティブ取引とは「ゼロコストオプション」と呼ばれるもので、「ドルコールオプション(ドルを買う権利)」と「ドルプットオプション(ドルを売る権利)」を組み合わせた、高い為替変動リスクを持ったものであった。
 具体的な動きをみると、2006年3月に契約した取引は行使価格が1ドル110.5円となっているので、2010年2月時点の円相場88.8円では「ドルコールオプション(買う権利、5万ドル)」は放棄、また一方「ドルプットオプション(売る権利、10万ドル)」は銀行が行使する。すると1ドルあたり(110.5円−88.8円)×10万ドルで224万円の差損が確定する。当社の場合はこのほかにも条件を変えて、総額60万ドルの「ドルプットオプション」が行使され、1カ月だけで1500万円近い損失となった。
 こういった契約は、法令に基づいた「説明書」「確認書」などの書面が交わされ、「知らなかった」「判らなかった」とは言えない。さりとて、5年や10年にも及ぶ長期契約が多いデリバティブ契約で、為替相場の変動を中小企業の社長の立場で予測することが簡単ではない事は容易に想像がつく。ある金融関係者は「変額保険問題」の反省が生かされていないと指摘する。既に係争となったものや、救済スキームを組んで再建に向かっている企業も少なくない。しかし大きな損失や、今後も発生し続ける差損から、経営を断念するケースもあり、今後「為替デリバティブ」が問題となるのは避けられない状況なのだ。

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