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【 TPP問題は農業を崩壊させるのか 】

2010年11月4日

 今月7日から横浜ではじまるAPEC JAPAN2010に向け、突如沸き起こったTPP(環太平洋経済連携協定)参加交渉入りの問題。菅首相が積極参加を表明し、論争の火蓋を切った形だが、野党のみならず民主党内でも議論が真っ二つに分かれている。反対派の主な理由は完全自由化による「農業崩壊」だ。先に農林水産省から公表された試算は、関税撤廃によって農業及び関連産業の影響としてGDPは毎年7兆9,000億円程度減少するとした。また就業機会は340万人を押し下げられ、さらに食料自給率は40%から14%にまで低下するなど、ショッキングな数値が並ぶ。

 それに対して経済界は、今回のチャンスを逃すと世界経済の発展から取り残されると、積極参加を後押しする立場だ。経済産業省の試算ではTPP参加を見送ると、ある条件下では自動車、電機関連、産業機械だけでも10.5兆円の損失が見込まれるとし、デメリットでは農水省の試算を上回る数字をアピールした。このほか内閣府も独自の分析結果を押し出し、「一筋縄ではいかない」ことだけがハッキリしたのが、今回の試算結果だ。

 以前から指摘されていた通り、自由化以前に「農業崩壊」は徐々に進んでいる。農林水産省によると、農家の戸数は1990年の383万戸から2008年では252万戸と、18年あまりで実に3割を超える130万戸減少している。また2008年時点の農業従事者の年齢は60歳以上が約7割を占め、同じくこの18年間で20ポイント以上増加した。農業は儲からないと言われて久しいが、確実に農業離れは進行しているのだ。

 一方「強い農業」に転換を図るため、国は農地法を改正や、異業種による農業生産法人への出資制限緩和などを打ち上げた。農家の戸数が減少する半面、農業生産法人数は1990年比で約3倍に増加するなど一定の効果は現れている。それでは農業は儲かるようになったのか。日本政策金融公庫が調べた「2008年農業経営動向分析結果」(サンプル数107)では、稲作は収入が100とした場合、営業損益が▲7と赤字が恒常化している。それをさまざまな補助金や交付金などの営業外収益でカバーし、かろうじて最終利益が維持されている。このようななか「戸別所得補償制度」が開始されたが、この制度によって収益の向上に必要な集約化は遅れるとの見方もあり、「農業」の方向性だけをとっても引き続き、難しい判断が迫られる。

 国の成長、食糧問題など複雑な問題が絡んだTPP参加交渉入りの決定判断だが、停滞する日本経済の方向性を決める事案だけに、さまざまな方向からの検証、議論が必要なことだけは間違いないようだ。

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