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【 燻る東電問題とは 】

2011年6月3日

 福島原発の収束に向けての作業は一進一退で、行程表どおりの進捗も危ぶまれだした。当然、被害の確定にはまだ時間がかかり、賠償金額算出の遅れから、支援スキームも定まらないのが現在の状況だ。この間、マーケットの評価は、政府高官の発言にも翻弄され、銀行株の下落、CDSのワイド化、ひいては国債の格付け見直しにも発展している。さらにここ最近では「情報隠蔽」といった文字が紙面に踊り、感情的な東電の責任論、悪者扱いが取り沙汰されているが、問題はそんなものでは解決しない。そこで東電問題についての問題点を整理しておきたい。

 先ずは東電のステークホルダー(利害関係者)は、株主、貸し手の金融機関、社債債権者、政府、国民、そしてもっとも重要な被害者などだ。その他にも責任負担の所在として東電と、新たな賠償支援スキームとして浮上した「機構」に対して負担金を拠出する他の電力会社だ。そして求められる事項は、迅速かつ適切な損害賠償、福島原発の安定化、電力の安定供給である。

 現在のところ(1)「機構」を新設、(2)会社更生法など法的整理の二つが議論されている。(1)の「機構」新設案だと、枝野官房長官による「金融機関の債権放棄」要請があったように貸し手責任が重くなる。引き換えに、株主、社債債権者はいまのところ責任を負わずに済む可能性が高い。ただし、国民負担は避けられず、税金、電気代などに跳ね返るものと見られる。(2)の法的整理は既存のルールによるもので、透明性・公正の高い負担応分がなされ、海外からの信認は得られるようだが、他の電力会社の格付けへの影響も指摘されている。また、被害者の補償額カットに対しても反対意見があるが、これは「優先順位」の配慮で救済されるとの見解も出されている。

 さて当事者の東電であるが、2011年3月期末(連結ベース)をみると、社債が4兆9,740億円、借入金が4兆490億円に買掛債務が約2,800億円の合計9兆3,020億円が存在する。これに上限を設けない前提の賠償金が約5〜10兆円が上乗せされる。対して純資産は1兆6,000億円で、想定される賠償金をみれば、事実上債務超過である可能性は高く、東電の責任だけでは負担しきれないのは明白だ。政府が「機構」を介して上限なしに援助し続け、「債務超過にさせない」枠組みを示しているが、株価は6月3日も300円を割り込む状況だ。今必要なことは原発事故もそうだが、こういった責任の所在と負担を説明することであろう。政局の混乱はここにも影響しているのは間違いない。

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