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【 債権放棄がもたらすもの 】

2011年7月5日

 震災から来週で4カ月となるが、関連倒産のペースが上がるだけで、復興への道筋は未だに不透明なままだ。賠償支援機構法案や、漁業権の問題に加えて、復興の足かせとなりそうなのが過剰債務問題で、新たな課題として議論が始まっている。マスメディアでは単純に「二重ローン問題」と置き換えられているが、「被災(事業)者」が全て二重(過剰)債務によって追い詰められている訳ではない。そもそも「二重ローン」とは事業者の場合、社屋、設備等の固定資産が地震、津波などで消失し、それを再建のため再度投資する場合、旧債務部分を「二重部分」と認識する。これは個人の場合、倒壊、消失した住宅に対する債務が該当する。またその債務に対して返済原資があるのか、あるいは全く返済能力が無いのかなど、個別事情も千差万別のはずだ。

 こういった状況下で言われている「震災だから金融機関は借金を棒引きすべき」との主張は、次の2点で違和感があると指摘されている。1つには、ほかの債務者、特に阪神・淡路大震災や中越地震など最近の大災害の被災者との平等性だ。阪神・淡路大震災では倒壊家屋数約64万棟(兵庫県HPより)の被害があったが債務免除は大きな議論もなく、果たされなかった。さらに地場産業を支えたケミカルシューズ業者などの零細業者も、同じ境遇であった。2点目は同じ被災地区でも弁済を続けている債務者と、どのように整合性を保つのか。さらに住宅を再建する、しない、事業を再建する、廃業するなど、債務者側の立場もさまざまだ。以上の考え方から、貸し手である金融機関側は「粛々と対応したい」との考えも多い。

 日弁連が主張する「破産者の急増」に関して言えば、阪神・淡路大震災のケースでは翌年に1万3,000人ほど増加したが、消費者金融問題での破産者は震災当時の5倍以上にあたる24万人を超えている。また事業者、法人の破産も被災地区では高水準で推移したものの、債権放棄に拠らない、中小企業金融安定化特別保証制度の施行により急減した経緯もある。東日本大震災の場合、いったいどの程度の債務者がこのままだと破産を免れないのかが具体的に示されないと、少なくとも国民の理解は得られないのではないか。

 当然、債権放棄には原資が必要だ。貸手である金融機関が損失を被るのか。また一旦、国の機関が債権を買い取り、そこで損失を確定させるのか。いずれにせよ財源は国民負担である可能性が高い。このたびの震災で、東電問題でも「債権放棄」に関する発言が物議を醸したが、損失額の大小のみならず、誰が責任を取るのかといった本質的な問題の議論がないまま話が一人歩きした。確かに債権放棄は再建に有効な手立てである。しかし債権放棄がこの国のモラルハザードを助長することはあってはならないのである。

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