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今どきの「日本買い」と不正競争防止法

2012年4月4日

 かつて新興国企業による「日本買い」が話題となった時期があった。その時の主な“買い物”は日本の企業であった。弊社でもそうした動きを自社の企業情報を使って分析したことがある(2010年7月8日 中国企業による日本企業への出資実態調査)。今回伝えようとしている“買い物”はそれほど大げさなものではない。しかし、だからこそ目立ちにくく、気づいた時には手遅れとなるリスクを秘めている。昨今増えているその“買い物”とは日本の人材である。

 新興国企業から熱望されている人材」といっても特殊な技術を持った人ではない。むしろ、すでにローテクに属する知識を持っている人が新興国企業にとってはありがたく、そうした人材を確保するために日本詣でが行われている。先日、霞が関で行われた勉強会で話題となったのは醸造食品業界の人材に関する“日本買い”であった。日本の醸造技術は日本独自の食文化を支える礎となってきた。しかし、海外にまで販路を広げることができる企業は、グローバルな人材を育成することができるごく一部の企業に限られている。
 ほとんどの企業で働いている人は、定年とともに退社せざるを得ないが、そうした人の中には製造工程全般にわたる知識を持っている人がいる。昨今の“日本買い”でターゲットとなっているのはそうした人材である。
 業界では“古びた”技術や知識であっても、海外の企業が容易に習得できないノウハウは数多く存在する。それらを比較的短い期間で、安価に身につける手段として日本人技術者の獲得に動きはじめているというのが事の真相のようだ。

 新興国の消費者にとって、日本の加工食品は「安全・安心」な食品として人気が高い。日本人技術者を獲得したい企業の狙いはまさにそこにある。当該国の安価な労働力と日本人技術者が持っているノウハウを組み合わせて日本“的”な加工食品を大量に生産し、一気に国の隅々にまで流通させることを計画しているという。当該業界ではそうした動きに歯止めをかけるべく定年退職した技術者の再雇用に動き出したようだが、新興国企業から提示される「実弾」の誘惑にどこまで耐えられるのかは疑問だ。

 公正な競争と国際約束の的確な実施を確保するため「不正競争防止法」が設けられたのが1993年。その後、改正に改正を重ね、営業秘密の刑事的保護強化や、模倣品・海賊版商品に対する罰則強化が盛り込まれてきた。しかし、退職者を通じた営業秘密の漏洩は後を絶たない。これまでの営業秘密漏洩に関するニュースはハイテク産業において多かった。しかし、華やかさはないが今回のような業界においても「守り」を固める必要があるといえよう。できることなら「守り」を固めるだけでなく、新興国を開拓するための「攻め」の人材育成にも力を注いでもらいたい。

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