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高年齢者の活用義務化での懸念

2012年9月5日

 2013年4月から厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられる。これによる年金給付開始までの無収入期間をつなぐための措置として、60歳の定年後も希望者全員を65歳まで雇用することを企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が8月29日に成立した。いわば政策の失敗を企業に押し付けるという論理である。
 改正高年齢者雇用安定法が成立した1カ月前の7月末に閣議決定された日本再生戦略も同様である。人材活用の多様性(ダイバーシティ)によるイノベーションの創造を促すことを重要な政策の一つとして据えることを掲げているが、この政策も、うがった見方をすれば、社会保障制度の崩壊を高齢者の雇用促進という、聞こえのよい言葉にすり替え、企業に代替させるという側面もあるのではないだろうか。

 特定求職者雇用開発助成金(厚生労働省)も同様だ。同助成金のうち60歳以上65歳未満は「特定就職困難者雇用開発助成金」により、雇い入れ日の満年齢65歳以上の場合は高年齢者雇用開発特別奨励金が原資となり、現在、新たにハローワーク等の紹介により高年齢者を1 年以上継続して雇い入れた事業主は、一部の助成金が受け取れる。助成金額は、「短時間労働者(週20時間以上30時間未満)」の場合、大企業30万円、中小企業60万円、週20時間以上の「短時間労働者以外(週30時間以上)」は大企業50万円、中小企業90万円となる。ただし、いずれも助成対象期間は1年間に限られ、1年を超える雇用の判断は企業に委ねられる。

 国内企業を取り巻く経営環境は景気低迷や円高による海外移転の進行による国内空洞化、消費低迷による内需不振は続き、依然厳しく、出口がみえない状況が続いている。企業は、売り上げが伸びないなかで、いかにコスト削減を持続的に取り組むかも命題となっている。

 今回の「人材の多様化に関する企業の意識調査」では、人材の活用における重要度という点で、「若年者(新卒、第2新卒)の活用」(23.1%)、「女性社員の活用」(22.2%)、「高齢者社員の活用」(15.8%)、「外国人社員の活用」(4.6%)の順となったが、改正高年齢者雇用安定法が成立した今後、「高齢者社員の活用」が高まるだろう。

 文部科学省の学校基本調査(速報)によると、2012年春の大卒者のうち就職した人の割合は、前年比2.3ポイント増の63.9%と改善傾向となったが、こうした政策の方向性を考えれば、大卒、企業に就職、安定した人生設計という考えは、もはや昔のこと。
 企業は高年齢者の雇用義務化により、人件費の見直しを迫られることになる。今後、既存社員は、粗めの編み目のふるいにかけられ、改善傾向となった大卒者の採用も間口が狭まることが懸念される。

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