業界再編に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2010年4月 特別企画 -

 

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2010年5月10日
株式会社帝国データバンク 産業調査部

新興国による日本企業買収、78.1%の企業が「脅威」と認識

〜 今後の業界再編理由、「市場の縮小」を挙げた企業が約5割で最多 〜


 企業の収益環境の厳しさや個人消費の伸び悩みが続くなか、自動車業界の業務提携や飲食料品業界の経営統合の動向が話題となるなど、多くの業界で再編が活発化している。
 そこで帝国データバンクでは、業界再編に対する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2010年4月20日〜30日。調査対象は全国2万1,431社で、有効回答企業数は1万772社(回答率50.3%)。なお、業界再編に関する調査は2008年4月、2009年4月に続き3回目。

新興国企業による日本企業買収、日本経済にとって「脅威になる」が78.1%

 中国やインド、ブラジルなど新興国の成長が著しいなかで、近年はこれら新興国企業による日本企業の買収がみられるようになっている。そこで、新興国主導による日本企業の買収の動き(事業買収や業務提携など含む)が、技術流出やモノづくりにおける日本の競争力低下など日本経済にとって今後の脅威になるか尋ねたところ、1万772社中4,185社、構成比38.9%の企業が「大きな脅威になる」と回答した。また、「やや脅威になる」(同39.2%、4,223社)と合わせ「脅威になる」と認識している企業は同78.1%(8,408社)で、全体の8割近くに達した。

 業界別にみると、『製造』は「大きな脅威になる」が同41.8%(1,280社)となり、4割以上の企業で技術流出やモノづくりにおける競争力低下などについて強い脅威を感じている(【参考1】参照)。

 他方、「脅威にはならない」と回答した企業は同9.9%(1,069社)(「まったく脅威にはならない」(同1.3%、136社)と「あまり脅威にはならない」(同8.7%、933社)の合計)となり、全体の約1割にとどまった。

 企業からは、「日本の生産の空洞化、雇用不安、家計の悪化、全体経済の悪化が懸念される」(産業用機械機器卸売、埼玉県)など、日本企業買収が日本経済に与える影響に対して強い懸念を抱いている企業は多い。


 対応策として、「多種少量生産など仕組み面での強さで優位に立つ」(輸送用機械器具製造、東京都)や「技術革新のための税制上の優遇措置を打ち出すべき」(機械工具卸売、神奈川県)、「ハード技術力からソフト技術力への切り替え」(経営コンサルタント、東京都)などの声が挙がった。また、「技術開発やモノづくりにおいて失敗した人間が再スタートできる体制づくりが必要」(運輸・倉庫、静岡県)といった、優れた人材が失敗を繰り返すなかで掴んだものを埋もれさせない仕組みの構築を指摘する意見もあった。


 一方で、「新興国の資本が入ってこないことのほうが、今後の日本にとって脅威になる」(運輸・倉庫、東京都)や「むしろ日本国内の後継者問題や技術力の伝承問題のほうが脅威」(建設、東京都)などの意見もあった。

 総じて、新興国による日本企業の買収に対して脅威を感じている企業は非常に多い。しかし、「海外に活路を求めれば必然的に技術流出は起こる」(産業用電気機器卸売、神奈川県)ため、このような新興国の動きが続くことは避けられないなかでは、社会全体として対応可能な経済構造を再構築する必要がある。


注1:※は「分からない」(12.0%、1,295社)
注2:母数は有効回答企業1万772社

業界再編、「進展している」と認識している企業は20.8%、
6割超の企業で「進展していない」と認識

 2009年度(2009年4月〜2010年3月)の業界再編(合併や事業譲渡、業務提携など)について、これまでの進展度合いを尋ねたところ、「進んだと思う」と回答した企業は1万772社中355社、構成比3.3%となった。また、「やや進んだと思う」(同17.5%、1,889社)と合わせ「進展している」と認識している企業は同20.8%(2,244社)で、全体の5社に1社となった。

 一方、業界再編が「まったく進まなかったと思う」と回答した企業は同21.3%(2,298社)で、「あまり進まなかったと思う」(同39.0%、4,205社)と合わせ「進展していない」と認識している企業は同60.4%(6,503社)となり、6割超の企業が業界再編に進展がみられていないと回答した。

 「進展している」とした企業を業界別にみると、『小売』(同37.8%、171社)が最も高く4割近くに達し、次いで『金融』(同35.8%、44社)が3割超となった(【参考2】参照)。逆に、「進展していない」は『建設』(同73.2%、1,110社)と『農・林・水産』(同71.1%、27社)が7割を超えていたほか、『運輸・倉庫』(同63.6%、248社)、『製造』(同61.5%、1,882社)が多かった。



注1:母数は2008年4月調査1万165社、2009年4月調査1万945社、2010年4月調査1万772社
注2:2008年4月調査は、2003年4月から2008年3月までの5年間の業界再編の進展度合い。
   2009年4月調査は、2008年4月以降の1年間の業界再編の進展度合い
   2010年4月調査は、2009年4月以降の1年間の業界再編の進展度合い

業界再編、5割近くの企業で防衛的な側面があると認識

 業界再編が事業拡大や多角化など積極的な再編か、あるいは生き残るうえでやむを得ない統合など防衛的性格の強い再編と思うかを尋ねたところ、「積極的な再編と思う」と回答した企業は1万772社中392社、構成比3.6%で全体の1割を大きく下回る結果となった。

 逆に、「防衛的な再編と思う」は同26.6%(2,866社)となり、4社に1社がやむを得ない再編と捉えている。「両方」という回答も同21.0%(2,257社)あり、何らかの形で「防衛的側面あり」と認識している企業は同47.6%(5,123社)と5割近くに達している。

 「防衛的側面あり」とする企業を業界別でみると、『小売』(同57.5%、260社)や『金融』(同55.3%、68社)、『卸売』(同51.6%、1,759社)、『サービス』(同50.2%、746社)で5割超の企業が、防衛的性格が強い再編であると認識している様子がうかがえる。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

今後、業界再編が「進展する」と考える企業は45.0%

 自社が属する業界の今後の再編について尋ねたところ、「急速に進むと思う」と回答した企業は1万772社中588社、構成比5.5%、「緩やかに進むと思う」は同39.5%(4,258社)となり、両者を合わせると同45.0%(4,846社)と4割超の企業が「進展する」と回答した。

 これを業界別でみると、『金融』(同64.2%、79社)と『小売』(同61.1%、276社)が6割を超えているほか、『サービス』(同52.3%、777社)も半数を超えた。

 一方、「まったく進まないと思う」(同8.2%、879社)と「ほとんど進まないと思う」(同26.8%、2,882社)を合計すると、同34.9%(3,761社)の企業が、今後業界再編は「進展しない」と回答した。特に、業界別では『建設』が同50.8%(770社)で最も高くなっている。

 また、これまでの業界再編の進展度別にみると、業界再編が「進展している」と回答した企業2,244社中2,032社、構成比90.6%が今後も「進展する」と回答している。さらに、これまでは「進展していない」と回答した企業6,503社でも、同39.0%(2,536社)と4割近くの企業が今後は業界再編が「進展する」と回答しており、今後はさらに再編が進むと考えている様子がうかがえる。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

業界再編の背景、「価格競争の激化」と「市場の縮小」が二大理由

 自社が属する業界の再編が主にどのような理由を背景としているのか尋ねたところ、「価格競争の激化」が1万772社中5,560社、構成比51.6%(複数回答、以下同)で最も多く、次いで、「市場の縮小」が同49.8%(5,363社)となった。業界再編の背景として、これらが3位以下を引き離して二大理由となっている。特に、「価格競争の激化」は前回調査(2009年4月)から8.8ポイント増加し、前回2位から1位へと上昇した。とりわけ、『小売』は「価格競争の激化」が同59.3%(268社)と6割近くに達し、雇用・所得環境の厳しさが続くなかで、消費者の生活防衛意識の高まりによる低価格戦略が広がり、規模の経済性や収益力の強化を求める企業が業界再編を促している様子がうかがえる(【参考3】参照)。また、『建設』は「市場の縮小」が同57.5%(873社)となり、政府による公共事業費の削減など、厳しい市場環境を反映した結果となった。

 また、今後、どのような理由で再編が増えると思うか尋ねたところ、「市場の縮小」(同49.3%、5,311社)、「価格競争の激化」(同47.1%、5,072社)、「収益性強化」(同26.4%、2,849社)が前回調査と同様に3位までを占めた。しかし、「グローバル化への対応」(同21.5%、2,320社)が前回調査の10位から5位に上昇しており、今後は世界を視野に入れた業界再編がこれまで以上に重要性を増すとみられる。

 企業からは、「市場が縮小しており生き残りをかけて再編が行われる」(建設機械製造、山口県)や「品質・技術の優位性を保ちながら価格競争力をつける」(金型・同部品等製造、大阪府)、「過当競争が強まり一定の規模が必要になってきた」(化学製品卸売、北海道)という意見のほか、「グローバルな戦略を選択すると再編は急務」(産業用電気機器卸売、大阪府)といった競争の激化やグローバル化の進展など、スケールメリットや企業の生き残りをかけた業界再編が加速するという意見が多くみられた。他方、「オーナー経営や中小企業が圧倒的に多いため再編という雰囲気にならない」(化学品製造、東京都)や「業界の特性上、合併のメリットがあまりない」(不動産、千葉県)といった経営形態や業界の特殊性によって業界再編が進まないとの意見も挙がった。



注:母数は、2009年4月調査1万945社、2010年4月調査1万772社

3割の企業が、業界再編の進展は日本経済活性化に寄与すると認識

 自社が属する業界か否かにかかわらず、業界再編の進展は日本経済の活性化に寄与するかどうか尋ねたところ、寄与すると「思う」と回答した企業は1万772社中3,377社、構成比31.3%となり、全体の3割を超える企業が業界再編は日本経済の活性化に役立つと考えている。逆に「思わない」は同25.0%(2,688社)となり、「思う」と回答した企業より少なかった。

 「思う」とした企業を業界別にみると、『金融』(同37.4%、46社)や『不動産』(同36.7%、98社)、『サービス』(同34.8%、518社)などが高く、10業界すべてで「思う」が「思わない」を上回った。

 業界再編が日本経済の活性化につながると考える企業が3割を超えているなか、新興国による日本企業買収には8割近くが脅威を感じている。しかし、かつて日本が新興国だった頃と同様に、このような経済の発展段階の違いによる動きは必然ともいえよう。そのため、現在のグローバルな経済環境を所与とした新たな日本型経済システムを、日本が自ら築き上げていくことが肝要である。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

【参考1】 新興国による日本企業買収の脅威について 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

【参考2】 業界再編の進展度合いについて 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

【参考3】 業界再編の背景(上位5項目、複数回答) 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万772社

【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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