環境問題に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2010年6月特別企画 -

 

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2010年7月5日
株式会社帝国データバンク産業調査部

グリーン・イノベーション、企業の2割が業績に「好影響」

〜 「再生可能エネルギー」に期待する企業が64.3%で最多 〜


 2005年に始まった「クールビズ」は6年目を迎え、政府、官公庁ではクールビズを積極的に推進しており、企業でも浸透がみられる。地球温暖化問題への対応ととも に産業政策として環境問題を捉える動きが広がっている。
 そこで帝国データバンクでは、環境問題に対する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2010年6月21日〜30日。調査対象は全国2万1,924社で、有効回答企業数は1万1,257社(回答率51.3%)。なお、同調査は2005年6月に開始し、以降毎年6月に実施、今回で6回目。

グリーン・イノベーション、「再生可能エネルギー」に64.3%が成長を期待、自社業績には20.0%が「好影響」を与えると認識

 2010年6月18日に完全施行される貸金業法の改正について、そのメリットを尋ねたところ、「過剰貸し付けの抑制」が1万806社中5,885社、構成比54.5%(複数回答、以下同)と半数を超えて最も多く、次いで、「多重債務者の減少」(同49.0%、5,297社)、「上限金利の引き下げ(グレーゾーン金利の撤廃)」(同46.2%、4,987社)が4割を超えた。特に、「過剰貸し付けの抑制」は、10業界中『その他』(同48.1%、13社)を除く9業界で5割以上となっており、幅広い業界で貸金業法改正のメリットとして認識されている様子がうかがえる(参考表@参照)。

 政府は新成長戦略のなかで、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略を基本方針の1つの柱としている。そこで、今後の日本の経済成長に対して期 待することを尋ねたところ、「再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱等)の普及拡大」が1万1,257社中7,236社、構成比64.3%(複数回答、以下同)で最も多く、次いで「LED や有機EL などの次世代照明の普及促進」(同44.9%、5,051社)が4割超となり、多くの企業が今後の成長期待分野として挙げている。
 また、グリーン・イノベーションが進むことで、自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、1万1,257社中2,247社、構成比20.0%の企業が「好影響」と回答しており、5社に1社はグリーン・イノベーションの進展が業績に良い効果をもたらすと認識している。逆に「悪影響」は同3.6%(409 社)にとどまった。
 「好影響」と回答した企業を業界別にみると、『建設』が同27.7%(435社)と最も高く、次いで『卸売』(同21.0%、745社)が2割を超えた(5ページ参考表A参照)。特に、『建設』は成長期待分野として「住宅・オフィス等のゼロエミッション化」や「オフィスビル等の再開発・建替えや改修の促進」が全体より10ポイント以上高い。公共事業費の大幅削減などもあり『建設』の景況感は10業界中最下位(6月24.6、TDB景気動向調査より)と厳しい市場環境が続くなかで、グリーン・イノベーションの進展による業績への好影響を期待している様子がうかがえる(5ページ参考表@参照)。

 企業からは、「グリーン・イノベーションにつながる技術を積極的に支援して、今後の日本産業の成長戦略の中心に据えた政策を推進すべき」(ソフト受託開発、東京都)といったグリーン・イノベーションに対して期待感を示す一方で、「環境問題はビジネスチャンスになる可能性もあるが、企業負担になるところも多い」(化学機械装置製造、大阪府)や「グリーン・イノベーションに関わらず日本の製造業の拠点をどこに置くか、内需の拡大状況から判断する必要がある」(機械部品製造、岡山県)など、グリーン・イノベーションだけでなく環境問題をトータルとして捉えて経営しなければならないと指摘する意見もあった。
 業績回復にグリーン・イノベーションの進展を期待する企業は多いが、自社への影響をはかりかねている企業も4割以上ある。政府は新成長戦略の柱の1つとなるグリーン・イノベーションの全体像を示し、幅広く周知させていく必要があるだろう。


注1:※は「分からない」企業42.7%(4,808社)
注2:母数は有効回答企業1万1,257社

環境問題へは77.7%の企業が「取り組みを実施」と回答、内容は「省エネ」が9 割近くに達し、「リデュース」、「リサイクル」も半数以上

 環境問題に対する自社での取り組み状況について尋ねたところ、「積極的に取り組んでいる」と回答した企業が1万1,257社中2,454社、構成比21.8%、「積極的ではないが取り組んでいる」とした企業は同55.9%(6,296社)で、環境問題への取り組みを実施している企業は計77.7%(8,750社)であった。

 2005年同時期の調査では計59.5%、2006年は計75.6%、2007年は計78.8%と上昇していたが、2008年は計77.9%とやや低下、2009年は計80.1%と景気が急減速したなかでも上昇していた。しかし、2010年は前年度に大幅な業績悪化に見舞われたこともあり、再び低下した。

 「積極的に取り組んでいる」と「積極的ではないが取り組んでいる」と回答した企業に具体的な取り組み内容を尋ねたところ、「省エネ(節電や節水など自社のコスト低減)」が8,750社中7,646社、構成比87.4%(複数回答、以下同)で最も多く、次いで「廃棄物の発生を抑制(リデュース)」(同52.2%、4,564社)、「リサイクル(再資源化)の実施」(同50.6%、4,428社)が5割超の企業で実施されている。「不要になったモノのリユース(再使用)の実施」は同34.2%(2,994社)となり、3Rへの取り組みのうちリユースの実施企業は3社に1社にとどまった。また、「ハイブリッド車、電気自動車の導入」は同20.9%(1,827社)と前年同月(17.0%)から3.9ポイント増加し、省エネ、3Rに次いで多くの企業が取り組んでいた。

企業からは、「環境を考えるのは今の人のあるべき姿」(ネジ類製造、広島県)や「これからの企業は環境問題に取り組めないところは成長しない」(一般貨物自動車運送、福島県)などの意見がみられた。また、「ISO14001による取り組みと環境良化製品の開発販売が商売に直結している」(化学品製造、大阪府)や「グリーン経営という運送業の環境認証を取得して、エコ運転や教育に取り組むことで燃費の向上に注力している」(一般貨物自動車運送、奈良県)、「環境商品を今後の販売商品の柱にすべきと思っている」(塗料卸売、東京都)など、環境への対応を直接ビジネスに結びつけ、コスト削減にもつながるという声も多く挙がった。しかし一方で、「経営に必死でそこまで余裕がない」(飲食料品卸売、福岡県)や「環境問題に取り組む前に自社の足元を固める方が先決」(建設、静岡県)といった、中小企業を中心に環境問題に取り組むだけの余裕がないということを指摘する意見も多い。

 8割近くは環境問題に何らかの取り組みを行っているものの、企業はリーマン・ショック後の景気後退による業績悪化で、負担に見合う効果をよりシビアに求めている。


注1:以下、「環境CSR報告書の作成」(4.8%、417社)、「カーボンオフセットの実施」(2.7%、233社)、「その他」(1.1%、92社)、「分からない」(2.4%、213社)
注2:母数は、環境問題に「積極的に取り組んでいる」「積極的ではないが取り組んでいる」と回答した企業8,750社

日銀の新貸出制度、4 割の企業が「経済成長につながる」

 日本銀行は、2010年6月15日に、金融機関による環境・エネルギー事業や資源確保・開発事業など18分野の成長産業向け融資を支援する新しい貸出制度を決定した。そこで、この新貸出制度が日本経済の成長にどの程度つながると思うか尋ねたところ、1万1,257社中4,131社、構成比36.7%が「成長にややつながる」と回答した。「成長に大きくつながる」(同3.3%、374社)と合わせて「成長につながる」と考えている企業は同40.0%(4,505社)となり、4割の企業が新貸出制度を肯定的に捉えていた。

 一方で、「成長にはつながらない」(「成長にはあまりつながらない」(同29.7%、3,342社)と「成長にはまったくつながらない」(同4.1%、461社)の合計)は同 33.8%(3,803社)となり、3社に1社は否定的に捉えている実態も明らかとなった。日銀の新貸出制度は政府の成長戦略と歩調を合わせたものであり、対象分野を絞って資金を供給する政策金融の側面が強い制度だが、新制度が経済成長につながるか否かについての企業の見方は二分される結果となった。



注1:※は「分からない」(26.2%、2,949社)
注2:母数は有効回答企業1万1,257社

環境コストの増大、企業の27.7%が日本産業の海外移転を懸念

政府が掲げている温室効果ガスの「2020年までに1990年比25%減」という削減目標について、今後、企業活動を行ううえで炭素税を含めた企業の環境コストが増大していくことが見込まれる。そこで、環境コストの増大にかかわる制度が施行された場合、日本の産業の海外移転につながると思うか尋ねたところ、大手製造業のほか取引先企業の動向なども含めて「海外移転の恐れは大きい」と回答した企業は、1万1,257社中3,114社、構成比27.7%となり、3割弱の企業が環境コストの増大により日本の産業が海外に移転することを懸念していた。

業界別にみると、『農・林・水産』が同38.1%(16社)で最も多く、さらに『運輸・倉庫』(同31.5%、129社)、『製造』(同29.8%、955社)といった業界で高かった(6ページ参考表B参照)。一方、「海外移転の恐れは小さい」は同29.6%(3,335社)と約3割となり、「海外移転の恐れは大きい」と同程度だった。また、「海外移転の恐れはない」は同9.2%(1,034社)と1割弱となった。

また、環境コストが増大するときに、自社が海外に移転する可能性について尋ねたところ、「海外移転の可能性はない」と回答した企業は同74.2%(8,348社)となり、4社に3社は環境コスト増大によって自社が海外に移転する可能性に否定的であった。逆に、「海外移転の可能性がある」とした企業は同2.9%(329社)だった。特に、『製造』は同6.2%(197社)となり、海外企業との競争が激しい「輸送用機械・器具製造」(同15.8%、16社)や「電気機械製造」(10.4%、39社)などを中心として、環境コストが増大したときには海外に移転することを視野に入れる企業も多いことが明らかとなった(6ページ参考表C参照)。

企業からは、内需型産業や企業規模の関係から移転は難しいという声が多い一方で、「グローバルな社会のなかで、より有利な選択をするのは自由経済では当然」(化学品製造、神奈川県)や「競合相手は日本国内だけではない」(金属工作機械製造、静岡県)など、グローバル化が進む経済において、環境コストが海外投資を加速させる要因になることを指摘する企業は多い。また、「税制や雇用規制が厳しくなればなるほど、コスト軽減を求める民間企業が海外に拠点を移すのは自然なこと」(医薬品・日用雑貨品小売、東京都)や「デフレ市場のなかでコスト増では競争力低下が否めない」(機械製造、石川県)といった、国内市場の縮小や規制強化が海外移転を促すという声も挙がった。

企業は温室効果ガスの削減など環境問題の重要性を認識しつつも、炭素税など環境コストの増大が「必然的に空洞化を加速させる」(鉄鋼・非鉄・鉱業、東京都)とあるように企業の海外移転をもたらすことに危機感を持っている。特に、すそ野の広い自動車関連や電気機械など、海外企業との競争が激しく、生産性の高い産業が日本から海外に移っていく一因となり産業の空洞化を促すことが懸念される。



注1:※は「分からない」企業33.5%(3,774社)
注2:母数は有効回答企業1万1,257社


注1:※は「分からない」企業22.9%(2,580社)
注2:母数は有効回答企業1万1,257社

クールビズ、「開始している」は59.1%、前年同時期より3.4ポイント増加2010年夏、最終的には7割の企業が実施の見込み

クールビズの取り組み状況を尋ねたところ、すでに「開始している」と回答した企業は1万1,257社中6,651社、構成比59.1%と6割近くに達した。
 これは、前年の同時期(2009年6月調査、55.7%)より3.4ポイント増加しており、6年目を迎えたクールビズが一段と浸透していることがうかがえる。
 クールビズの実施について、現在「検討中」と回答した企業は同10.9%(1,231社)で、これをすでに「開始している」と回答した企業と合わせると計70.0%(7,882社)となった。

 2005年6月調査時には「開始している」企業(同20.7%)と「検討中」企業(同19.6%)を合わせた構成比は同40.3%だったが、最終的には同37.1%が実施した。2006年は最終的に同48.6%、2007年は同56.9%、2008年は同66.7%、2009年は同66.5%となるなど、クールビズを実施する企業の割合は概ね上昇してきた。これまでの実績に加えて、環境意識の高まりやクールビズの認識の広がりを背景に初動段階でクールビズが前年以上に浸透していることから、2010年は最終的に全体の7割の企業がクールビズを実施すると見込まれる。

規模別での取り組み状況をみると、すでに「開始している」企業の割合は大企業が同74.6%(1,996社)、中小企業が同54.2%(4,655社)で、両者の差は20.4ポイントとなった。2009年6月時点での差が18.7ポイント(大企業:同69.8%、中小企業:同51.1%)であったことと比較すると、大企業、中小企業ともにクールビズは浸透しているものの、中小企業ではやや慎重に進めている様子がうかがえる。
 企業からは、「クールビズはすでに定着している」(経営コンサルタント、広島県)といった声のほか、「環境を成長戦略の柱とするならクールビズは当然で、政府はもっとPRすべき」(ゴム製品卸売、東京都)や「エネルギーを考えるならサマータイムを導入すべき」(労働者派遣、東京都)など、新成長戦略としてクールビズに加えてサマータイムにも取り組むべきという意見がみられた。



注1:2010年最終実施状況は、2005〜2009年の開始時点と最終実施状況の実績に基づく見込み


【参考1】 グリーン・イノベーションによる成長期待分野 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万806社

【参考2】 グリーン・イノベーションの進展が自社業績に与える影響 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,257社


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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