法人課税の実効税率等に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2010年7月特別企画 -

 

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2010年8月4日
株式会社帝国データバンク産業調査部

法人実効税率、企業の7割超が「引き下げるべき」

〜 実効税率引き下げ分、4割超の企業が人的投資などの「積極投資」に充当 〜


 現在、世界各国において法人税率の引き下げ競争が行われているなか、政府は新成長戦略で法人実効税率(約40%)を主要国並に引き下げていくことを掲げており、 日本の企業の競争力強化や雇用の確保などにおいて議論が活発化している。また、社会保険料の事業主負担も企業の競争力の阻害要因になっているという議論もある。
 そこで帝国データバンクでは、法人課税や実効税率等に対する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2010年7月20日〜31日。調査対象は全国2万2,557社で、有効回答企業数は1万1,446社(回答率50.7%)。

法人実効税率、企業の7割超が「引き下げるべき」

 法人課税の実効税率について引き下げの是非を尋ねたところ、「引き下げるべき」と回答した企業が1万1,446社中8,171社、構成比71.4%となり、7割以上の企業 が実効税率の引き下げを求めていた。他方、「引き下げるべきではない」は同10.4%(1,190社)で約1割となった。

 「引き下げるべき」を規模別にみると、『大企業』が同67.1%(1,828社)だったのに対し、『中小企業』は同72.7%(6,343社)と『大企業』を5.6ポイント上回り、中小企業で実効税率引き下げを求める割合が高い(4ページ参考表@参照)。業界別では、『不動産』(同74.9%、203社)が最も高く、『運輸・倉庫』(同74.1%、317社)、『卸売』(同72.5%、2,599社)、『サービス』(同72.5%、1,155社)と内需型産業が続いた。


注1:※は「分からない」企業42.7%(4,808社)
注2:母数は有効回答企業1万1,257社

実効税率の引き下げにより、64.6%の企業が「企業利益の押し上げ」に期待

 法人課税の実効税率が引き下げられた場合、どのようなことに期待するか尋ねたところ、「企業利益の押し上げ」と回答した企業が1万1,446社中7,394社、構成比 64.6%(複数回答、以下同)で最多となった。次いで、「企業の国際競争力の向上」(同43.9%、5,021社)、「国内景気の上昇」(同41.9%、4,801社)が4割超、「内 雇用の確保」(同37.2%、4,256社)、「企業の海外移転の抑制」(同31.3%、3,578社)が3割超で続いた。

 企業からは、「労働者に支払われる原資が増えることで、結果的に消費増加、景気浮揚につながる可能性がある」(建設、東京都)や「対日投資による景気刺激に意味がある」(建設、大阪府)といった声のほか、「国際競争力を高めるため、アジア諸国並に引き下げるべき」(建設、東京都)などを指摘する意見もあった。一方で、「代替財源が不明確なままでの法人課税引き下げは避けるべき」(食料品製造、神奈川県)や「もっと景気対策を実行し、利益を上げてからの引き下げが望ましい」(出版、東京都)という声も挙がった。


注1:母数は有効回答企業1万1,446社

実効税率引き下げ分の使い道、4割超が積極的な投資に充当

 法人課税の実効税率が引き下げられたとき、引き下げ分をどのようなことに充当するか、現段階で最も可能性が高い項目を尋ねたところ、1万1,446社中2,925社、 構成比25.6%が「内部留保」と回答した。4 社に1 社は実効税率の引き下げ分を社内にとどめておくという結果となった。次いで、「借入金の返済」(同16.8%、1,921 社)が2番目に多かった。さらに、人的な投資に対しては、「社員に還元(給与や賞与の増額など)」(同15.5%、1,774社)や「人員の増強」(同8.4%、959社)とな り、合わせて23.9%(2,733社)と2割超になった。一方、「設備投資の増強」(同12.7%、1,458社)と「研究開発投資の拡大」(同5.5%、630社)を合わせると18.2%(2,088社)が資本投資に充当するとした。人的投資と資本投資を合計すると42.1%(4,821社)が積極的な投資に充当すると考えている。

 企業からは、「財務体質の改善を優先する」(石油卸売、京都府)や「いまはキャッシュフローを増やしておきたい」(建設、福岡県)、「固定費と有利子負債を減らさないことには、今後の内需での競争力が弱くなる」(看板製造、岐阜県)など、生き残りのためにも財務内容を改善し、企業体力の強化に充当するという声が多い。また、「社員に還元して社内のモチベーションを上げることが、長い目でみて企業の成長、収益確保につながる」(建設、東京都)といった、これまでの厳しい経済環境下での賃金抑制に報いたいという意見もあった。さらに、「法人税が下がれば余裕を持って投資に資金をまわせる」(冷凍水産食品製造、神奈川県)や「技術の進歩は想定以上に早く、研究開発費を増やして企業の存続を図らなければならない」(化学品製造卸売、神奈川県)といった声も挙がった。

 総じて、実効税率の引き下げ分は傷んだバランスシートの改善に向けることを最も優先する企業が多く、さらに社員への還元や設備投資などに充当するという傾向があった。



注1:母数は有効回答企業1万1,446社

6割近くの企業が「法人税」の優先的な見直しを求める

 法人課税のうち最も優先的に見直して欲しい税項目を尋ねたところ、「法人税」が1万1,446社中6,726社、構成比58.8%となり、6割近くの企業が法人税の見直しを 求めていた。また、「法人住民税」(同2.1%、237社)と「法人事業税」(同9.7%、1,108社)を含めて、実効税率に該当する法人3 税が同70.5%(8,071社)となり、 7割超の企業が法人課税のなかでも法人実効税率の税項目を見直して欲しいと考えている様子が明らかとなった。

 企業からは、約6割を占めた法人税について「税体系の根幹にかかわる税であり、その引き下げが強いメッセージ性を持つ」(家庭用電気機器卸売、東京都)や「法人 税を見直すことで、法人住民税や法人事業税にも影響がおよぶ」(植物油脂製造、東京都)といった声のほか、「社会全体の景気浮揚に直接効果がある」(建設、神奈川県)や「決算書上の利益を上げても法人税のために銀行借り入れが必要となってしまうことがある」(水産食料品製造、岐阜県)などを指摘する意見も挙がった。

 また、「法人住民税の均等割が高い」(集積回路製造、神奈川県)や「法人事業税の外形標準課税は非常に負担が大きい」(かばん・袋物小売、東京都)、「固定資産税は経営状態の善し悪しにかかわらず徴収されるため、資金繰りがひっ迫しているときは特にダメージが大きい」(水産練製品製造、鹿児島県)など、利益の有無にかかわらず課税される税に対して特に強い痛税感を抱いている企業は多い。

 企業はさまざまな税項目を見直して欲しいと考えているなかで、「法人課税の種類が多く、事業計画などを複雑にしている」(家具・建具卸売、千葉県)という声も多くあり、企業が納得して納税するためにも、事業に関わる税体系をシンプルな形に再構築することが必要である。



注1:「その他」の内訳は、事業所税(3.5%、401社)、固定資産税(8.6%、982社)、都市計画税(0.5%、61社)、その他(0.9%、99社)
注2:※は「分からない」企業16.0%(1,832社)
注3:母数は有効回答企業1万1,446社

法人課税の高負担や社会保険料負担の増大、4社に3社が「競争力に影響」

 「法人課税」の高負担が継続する場合、企業の競争力に与える影響について尋ねたところ、1万1,446社中2,989社、構成比26.1%の企業が「競争力に深刻な影響を与える」と回答した。「競争力にある程度はマイナスの影響を与える」(同46.3%、5,296社)と合わせると、72.4%(8,285社)の企業で高い法人課税が企業の競争力に影響を与えることを懸念している。とりわけ、「競争力に深刻な影響を与える」では『小規模企業』が同28.8%(699社)と3割近くに達しており、『大企業』(同21.3%、580社)を7.5 ポイント上回った(4ページ参考表A参照)。

 一方、「社会保険料」負担が増大する場合では、「競争力に深刻な影響を与える」は同28.6%(3,277社)となり、「競争力にある程度はマイナスの影響を与える」(同44.7%、5,113社)と合わせると、73.3%(8,390社)が社会保険料負担の増大が企業の競争力に影響を与えると考えている。

 総じて、企業の競争力に与える影響として、法人課税と社会保険料とで大きな違いを見出すことはできない。したがって、企業は競争力への影響について、高い法人課税の継続と社会保険料負担の増大とを区別しないで捉えている様子がうかがえる。



注1:母数は有効回答企業1万1,446社


法人課税の高負担、「賃金・雇用調整」や「設備投資の抑制」で対応、社会保険料負担の増大では「賃金・雇用調整」で対応する企業が半数超

 企業の公的負担に対して中長期的にもっとも考えられる対応策を尋ねたところ、「賃金・雇用調整で対応」すると回答した企業は、「法人課税」の高負担が継続する場合で1万1,446社中3,032社、構成比26.5%、「社会保険料」負担が増大する場合で同52.1%(5,968社)となり、いずれの場合においても賃金や雇用調整で対応するという企業が最多となった。特に、「社会保険料」負担の増大の場合には半数超の企業が挙げており、今後も続く社会保険料負担の増大は賃金や雇用の抑制要因となる懸が示唆される。また、「設備投資抑制で対応」(「法人課税」の高負担継続と「社会保険料」負担の増大でそれぞれ、同17.0%(1,947社)、同4.8%(544社))、「海外 移転・部門の拡大で対応」(同6.4%(729社)、同2.4%(276社))、「価格引き上げで対応」(同5.2%(599社)、同3.3%(381社))となっており、いずれも社会保険料負担の増大よりも法人課税の高負担の継続への対応策とする割合が高かった。法人課税の高負担は社会保険料負担より広い分野に影響を与える可能性がある。

 厚生年金の保険料は2017年まで引き上げられていき、企業の社会保険料負担も増大していくことになっている。このような社会保険料負担の増大に対して、中長期的 に賃金や雇用調整で対応する企業が5割を超えていることからも、所得・雇用環境の改善にとって抑制要因として働く可能性が高い。また、法人課税の高負担の継続は、 賃金・雇用調整だけでなく設備投資の抑制で乗り切ろうとする誘因になっている。実効税率が現行の40%から7.5%分引き下げられたときに民間企業設備投資の伸び率が0.4〜0.7%pt引き上げられるとの試算もあるなかで(TDB マクロ経済見通しより)、法人実効税率の引き下げは税体系全体と合わせて今後の成長戦略として早急に検討されなければならない。

注1:母数は有効回答企業1万1,446社


【参考1】 法人実効税率の引き下げの是非 〜 規模・業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,446社

【参考2】 企業の公的負担が競争力に与える影響 〜 規模・業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,446社


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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