円高に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2010年8月特別企画 -

 

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2010年9月3日
株式会社帝国データバンク産業調査部

円高、企業の36.7%が売り上げに「悪影響」

〜 65.5%の企業が、円高は日本にとって「好ましくない」 〜


 サブプライム・ローンが問題となった2007年から現在まで、おおむね円高基調となっているなか、ここにきて米欧経済の不安再燃から8月24日には一時1 ドル=83円台をつけるなど、15年1カ月ぶりの円高水準となっている。また、内需が低迷し、外需頼みが続く日本経済では、現状の円高が定着すると景気悪化の懸念もでてくる。
 そこで帝国データバンクでは、円高に対する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2010年8月19日〜31日。調査対象は全国2万2,732社で、有効回企 業数は1万1,578社(回答率50.9%)

円高、企業の36.7%が売り上げに「悪影響」を与えると回答

 円高が自社の売り上げにどのような影響を与えるか尋ねたところ、「悪影響」とした企業は1万1,578社中4,246社、構成比36.7%と、3社に1社が売り上げに悪影響が及ぶと回答した。他方、「好影響」は同6.9%(803社)で1割未満となった。
 「悪影響」を業界別にみると、『製造』(同47.4%、1,558社)が最も高く、なかでも「機械製造」や「輸送用機械・器具製造」、「精密機械、医療器械・器具製造」、「電気機械製造」など機械産業では6割を超えた(参考表1参照)。さらに、『運輸・倉庫』(同42.0%、177社)、『卸売』(同37.2%、1,361社)が高く、特に「再生資源卸売」は同73.1%(19社)と51業種中で最も高かった。

 企業からは、「輸出に依存する割合が高い」(自動車部品製造、愛知県)や「顧客に輸出企業があり、顧客が不景気になると設備投資が減少する」(試験機製造、東京都)、「取引先の収益に影響するとコストダウン要請に繋がってくる」(機械同部品製造修理、京都府)など、自社だけでなく、取引先の輸出減少などを通じて直接・間接に悪影響が及ぶことを懸念している企業は非常に多い。また、「中長期的に取引先の海外シフトが懸念される」(輸送用機械・器具製造、東京都)や「顧客の競争力が弱まり、海外企業に価格優位性が出ている」(機械同部品製造修理、兵庫県)、「外国人観光客が減少する」(旅館・ホテル、長野県)といった意見もあった。
 一方、「海外からの仕入れが多い」(化学品卸売、兵庫県)や「小麦や油脂、砂糖など、原材料価格の低下要因になる」(飲食料品小売、大阪府)など、輸入を通じて好影響を受けるといった声のほか、「世界的に原料高のなか、この円高がなければ本当に“買い負け”して輸入できなくなる」(飲食料品卸売、神奈川県)など、円高によって商談の競争力が向上すると指摘する意見もあった。
 総じて、円高により企業の3社に1社は売り上げに悪影響を受ける一方、好影響を受ける企業は1割に満たない。また、輸出と輸入をともに扱い影響が相殺される、為替リスクの回避策を実施している、あるいはそもそも海外取引がないなどを理由として特に影響を受けない企業も34.9%と、悪影響を受ける割合とほぼ同程度であった。しかし、機械産業や再生資源卸売で悪影響を受ける企業の割合が特に高く、円高による売り上げへの悪影響は特定業種に集中する傾向にある。


注1:※は「分からない」企業21.5%(2,486社)
注2:母数は有効回答企業1万1,578社

海外と取引を行っている企業は30.4%、うち、「輸出」は57.3%、「輸入」78.5%、「海外生産」38.5%

 海外企業との輸出入や海外生産など、海外との取引の有無を尋ねたところ、1万1,578社中3,524社、構成比30.4%が「ある」と回答した。業界別にみると、『製造』(同44.0%、1,446社)や『卸売』(同40.6%、1,484社)では4割以上の企業が海外と取引を行っている(参考表2参照)。特に、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(同77.1%、185社)や「精密機械、医療機械・器具製造」(同68.6%、59社)、「電気機械製造」(同61.2%、232社)といった業種で、海外との取引を行っている企業が多い。
 海外との取引がある企業3,524社に対して、その事業内容を尋ねたところ、「輸出」をしていた企業は同57.3%(2,018社。複数回答、以下同)、「輸入」をしていた企業は同78.5%(2,766社)、「海外生産」をしていた企業は同38.5%(1,356社)であった。規模別にみると、「輸出」、「輸入」、「海外生産」のいずれも、『大企業』が『中小企業』を上回っている(参考表3参照)。また、業界別では、「輸出」は『製造』が同72.0%(1,041社)で最も多く、次いで 『運輸・倉庫』(同58.3%、35社)となっている。「輸入」は、『小売』が同86.7%(78社)で最も多く、『卸売』が同85.5%(1,269社)と続き、いずれも8割超となった。「海外生産」は、『製造』が同47.0%(680社)で最も多く、『小売』(同40.0%、36社)と『農・林・水産』(同40.0%、4社)が4 割を超えた。
 海外事業の内訳をみていくと、「輸出」では、「製品や商品・サービスを輸出している」が同46.5%(1,640社)、「部品を輸出している」が同18.2%(642社)であった(複数回答、以下同)。また、「輸入」では、「製品や商品・サービスを輸入している」が同55.4%(1,954社)、「部品・半製品を輸入している」が同34.1%(1,203社)、「OEM製品を輸入している」が同8.8%(309社)、「逆輸入している」が同0.9%(31社)となった。「海外生産」では、「独自の海外生産拠点を持っている」企業は同18.4%(648社)、「生産委託をしている」企業は同24.0%(845社)である。
 海外との取引がある企業は全体の約3割であったが、そのうち、「輸出」を事業としている企業は約6割、「輸入」は約8割、「海外生産」を行っている企業は約4割である。


注1:※は「分からない」企業4.3%(493社)
注2:母数は有効回答企業1万1,578社

円高対策、「海外調達を増やす」が19.2%で最多、輸出企業の約1割が海外生産を拡充

 海外との取引がある企業3,52社に対して、今回の円高局面で実施した対策や、実施を検討する対策について尋ねたところ、「海外調達を増やす」が同19.2%(675社。複数回答、以下同)で最多となった。次いで、「円価格を維持する(外貨建て価格の引き上げ)」(同18.9%、665社)や「輸入を拡大する」(同17.2%、606社)、「為替変動のリスク回避行動を行う(先物や先渡しなどのデリバティブ取引やオプション取引など)」(同16.5%、583社)、「円価格を引き下げる(外貨建て価格の維持)」(同14.1%、497社)が続いた。
 また、海外事業として「輸出」を行っている企業2,018社についてみると、「円価格を維持する(外貨建て価格の引き上げ)」が同25.6%(517社)となった。「海外生産比率を上げる」(同10.1%、203社)や「海外生産拠点の拡充・新設」(同9.2%、185社)など、1割前後の輸出企業が海外での生産を広げていくと考えていることが明らかとなった。

 企業からは、「為替変動を気にせずに商品の円価格を維持する」(家庭用電気機器卸売、東京都)といった声が挙がった一方で、「競合他社との価格競争があるため、円価格を維持するために外貨建て価格を引き上げることはできない」(海外旅行関連業、東京都)など、価格戦略の違いが表れている。また、「為替リスクを負わないように、売り買いともに同じ通貨で行っている」(和洋紙卸売、大阪府)や「輸出入とも円建てで取引しており、今のところ為替リスクはない」(鉄鋼・同加工品卸売、東京都)など、決済通貨を通じて為替変動の対策を実施している企業もあった。
 企業は、円高に対応して価格戦略や決済通貨、海外調達の拡大など、さまざまな対策を講じているが、「輸入主体の会社としても、為替の安定が望ましい」(特殊産業用機器卸売、東京都)とあるように、適切な水準で為替を安定させることが事業リスクの軽減にとって、より重要であると考えている。

 総じて、実効税率の引き下げ分は傷んだバランスシートの改善に向けることを最も優先する企業が多く、さらに社員への還元や設備投資などに充当するという傾向があった。



注1:以下、「輸出比率を下げる」(4.2%、147社)、「国内生産を縮小する」(3.3%、118社)、「国内調達を増やす」(3.0%、104社)、「その他」(13.3%、467社)
注2:母数は、海外との取引が「ある」と回答した企業3,524社

注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、海外との取引が「ある」と回答した企業3,524社

自国通貨価値の上昇、日本にとって「好ましくない」が65.5%

 一般的に、円高は輸出にとって悪材料になる一方、輸入にとっては好材料となる。また、海外出張や海外旅行にとっては好材料となるが、海外からの観光集客にとっては悪材料となる。他方で、自国通貨の価値が上昇すること自体が良いことだという議論もあり、立場により円高に対する捉え方はさまざまある。そこで、日本全体にとって、自国通貨価値の上昇(円高)は好ましいことなのかどうか尋ねたところ、1万1,578社中7,587社、構成比65.5%の企業が「好ましくない」と回答した。他方、「好ましい」と回答した企業は同9.9%(1,145社)と1割程度となった。

 自国通貨価値の上昇が「好ましくない」とした企業を業種別にみると、「輸送用機械・器具製造」(同80.0%、84社)など、51業種中14業種で7割超となった(参考表4参照)。また、海外取引の有無別にみると、「ある」企業が同69.1%(2,434社)、「ない」企業が同65.9%(4,981社)となり、海外取引の有無にかかわらず、3社に2社が自国通貨価値の上昇を好ましくないものと捉えている(参考表5参照)。さらに、海外取引がある企業で「輸出」を行っている企業2,018社では、同73.8%(1,489社)が「好ましくない」と考えている。

 他方、「好ましい」とした企業を業種別にみると、「人材派遣・紹介」(同17.6%、12社)や「メンテナンス・警備・検査」(同17.1%、26社)、「飲食店」(同16.2%、6社)などが高い。また、海外取引がある企業で「輸入」を行っている企業では同11.2%(309社)となり、「輸出」を行っている企業(同9.1%、184社)を2.1ポイント上回った。規模別にみると、『大企業』の同8.0%(219社)に対し、『中小企業』は同10.5%(926社)となっており、『中小企業』が『大企業』を2.5ポイント上回ってい る。

 「好ましくない」という企業からは、「いま以上にデフレを加速させる」(家具類小売、秋田県)や「エネルギー資源や原材料の海外調達ではプラスに作用する面もあるが、輸出面での悪影響をカバーしきれない」(輸送用機械・器具製造、東京都)といった声が多く挙がった。また、「成長をリードする輸出企業が停滞すれば、国の経済が停滞する」(一般機械器具卸売、兵庫県)や「本来、円高になることは国力があることを示しており喜ぶべきことなはずであるが、国民も行政も企業も準備がまったく出来ていない」(メンテナンス・警備・検査、東京都)など、日本の経済構造が輸出主導型であることや、円高に対応する準備が国内で整うまでは、円高は日本経済にとって好ましくないと指摘する意見も多くみられた。

 他方、「好ましい」という企業からは、「長期的に自国通貨が強くなることは、輸入物価の安定、海外投資の可能性の拡大などを考慮すれば良いこと」(自動車部品製造、東京都)や「部分的には弊害があるが、全体として日本の富が増える」(荷役運搬設備製造、長野県)、「強い通貨をもつ国は国際社会での発言力が増す」(電気音響機器製造、東京都)など、自国通貨価値の上昇は自国にとってメリットが大きいという指摘が多かった。また、「高度の技術を必要とする産業を育成すれば好材料となる」(紙類・文具・書籍卸売、東京都)など、経済の高度化を促すという意見も挙がった。

 総じて、自国の通貨価値が上昇することに関して、否定的な見解を有している企業が多いが、一方で、長期的視点でみると好ましいと考える企業もある。円高によるデメリットを強く受ける業種が中心となり経済成長をけん引しているという経済構造のなかでは、国力を反映していない過度な為替変動は企業業績だけでなく、日本経済全体のリスク要因となる。



注1:※は「分からない」企業24.6%(2,846社)
注2:母数は有効回答企業1万1,578社

【参考1】 円高が自社の売り上げに与える影響 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,578社

【参考2】 海外企業との取引の有無 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,578社


【参考3】 海外事業の内容(複数回答) 〜 規模・業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、海外との取引が「ある」と回答した企業3,524社


【参考4】 日本全体にとって、自国通貨価値の上昇は好ましいか 〜 業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,578社


【参考5】 日本全体にとって、自国通貨価値の上昇は好ましいか 〜 規模・海外取引有無・取引内容別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,578社


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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