TDB景気動向調査(全国)
- 2011年1月調査 -
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2011年2月3日
株式会社帝国データバンク 産業調査部
景気DIは33.7、前月比0.8ポイント増と3カ月連続で改善
〜国内景気は外需主導による底上げもみられるが、踊り場脱却には至らず〜
(調査対象2万3,356社、有効回答1万1,017社、回答率47.2%、調査開始2002年5月)
2011年1月の動向:踊り場局面
2011年1月の景気動向指数(景気DI:0〜100、50が判断の分かれ目)は前月比0.8ポイント増の33.7となった。3カ月連続で改善し、今回の景気回復局面における最高(33.5:2010年7月)をわずかだが6カ月ぶりに更新した。
外需は中国やインドなどの新興国を中心に好調で、内需も初売りセールや気温低下による需要増、家電や住宅に対する政策支援の効果などで復調し、生産や販売など企業活動の改善基調が続いた。
しかし、家計の生活防衛意識が緩和される状況にはなく、内需の回復は遅れており、政策支援の縮小や終了による反動減もみられる。デフレが長期化するなか、原材料価格の上昇によって企業の収益性は厳しさを増しており、政策見通しの不透明感も雇用や設備など投資活動の重しとなっている。国内景気は外需主導による底上げもみられるが、踊り場脱却には至っていない。
1) 好調な外需や内需の下支えで、生産や販売など企業活動の改善基調が持続
- 企業の生産活動は化学や鉄鋼、機械、電機、自動車関連などを中心に改善基調を持続した。また、衣料品や家電・自動車販売、外食、メンテナンスや教育サービスなどでも 企業活動の改善が続いた。
2) 企業の収益性は厳しさを増し、雇用や設備投資の回復も進展せず
- 需要に力強さがないことから、原材料価格は上昇傾向にあるものの販売価格への転嫁は困難な状況が続いた。企業の売上高は回復が進んでおらず、収益性は厳しさを増している。
このため、化学メーカーや医薬品小売、電気通信サービスなど一部の業種を除いて、雇用(正社員・非正社員)を引き締める傾向に変わりはなく、設備投資も本格回復への兆しはみられない。
今後の見通し:踊り場局面
外需は好調で、次世代自動車やスマートフォン市場の成長・拡大など明るい材料もある。大手を中心とした企業業績の回復は今後も見込まれ、法人課税の引き下げや環境関連投資促進税制など新年度の税制改正と合わせて設備投資への波及も期待される。
しかし、長期化する日米欧の金融緩和政策によって新興国ではインフレリスクが増大しており、原材料価格の上振れリスクも高まっている。年明けに菅第2 次改造内閣が発足したが、新年度予算案や財政再建の動向、貿易交渉の進展など課題は多く、春の統一地方選を控えて、一層の政局混乱も企業マインドを下押しする懸念がある。
景気予測DIは「1カ月後」(35.3、当月比1.6ポイント増)、「3カ月後」(37.6、同3.9ポイント増)、「6カ月後」(39.6、同5.9ポイント増)となった。国内景気は脆弱な内需が重しとなって、緩やかな回復にとどまるものとみられる。
※1:網掛けなしは改善、黄色の網掛けは横ばい、青色の網掛けは悪化を示す
※2:景気予測DIは、ARIMAモデルに経済統計を加えたstructural ARIMAモデルで分析
業界別:全10業界がそろってリーマン・ショック前の水準を回復
- 悪化した『農・林・水産』『金融』『運輸・倉庫』を除く7業界が改善した。
- 『不動産』(34.7)… 前月比1.4ポイント増。3カ月連続で改善し、リーマン・ショック前の水準(25.2:2008年8月)に比べて改善幅は9.5ポイントと大きい。都市部における戸建てやマンション需要の復調に加え、先進各国での金融緩和政策の影響もあり、他の9業界(改善幅の平均3.7ポイント)よりも改善は顕著となっている。
- 『製造』(35.9)… 同1.0ポイント増。3カ月連続で改善して、全10業界中のトップとなり、全体の底上げをけん引役している。
業種別では化学や鉄鋼、機械、電機などが改善基調を維持したほか、エコカー補助金終了の影響が残る「輸送用機械・器具製造」も新興国などの好調な外需によって6カ月ぶりに改善した。
- 『小売』(32.0)… 同1.3ポイント増。2カ月ぶりに改善したが、5カ月連続で全体(33.7)を下回る水準が続いており、内需の回復遅れが目立っている。
業種別では繊維や家具などが改善したほか、政策効果が持続している「家電・情報機器小売」も同0.8ポイント増と3カ月連続で改善し、今回の景気回復局面での最高を更新した。また、「自動車・同部品小売」も2カ月連続で改善したが、エコカー補助金終了の影響は大きく、全51業種中で下から2番目と低水準が続いている。
- 『サービス』(35.0)… 同1.5ポイント増。3カ月連続で改善し、2年5カ月ぶりにリーマン・ショック前の水準(34.2:2008年8月)を回復。これにより、全10業界がそろ
ってリーマン・ショック前の水準を回復した。
→ 最高の『製造』と最低の『建設』の格差(8.6ポイント)は、同1.2ポイント減と2カ月ぶりに縮小した。
※網掛けなしは前月比改善または増加、黄色の網掛けは前月比横ばい、青色の網掛けは前月比悪化または減少を示す
規模別:「大企業」「中小企業」「小規模企業」いずれも3カ月連続で改善
- 「大企業」(35.1、前月比0.5ポイント増)、「中小企業」(33.3、同0.9ポイント増)、「小規模企業」(30.4、同0.9ポイント増)のすべてが3カ月連続で改善した。
→ 「大企業」と「中小企業」の規模間格差(1.8ポイント)は、前月比0.4ポイント減と2カ月連続で縮小した。
※網掛けなしは前月比改善または増加、黄色の網掛けは前月比横ばい、青色の網掛けは前月比悪化または減少を示す
地域別:『九州』は3カ月ぶりに悪化し、「宮崎」は全国最下位に落ち込む
- 悪化した『北海道』、『四国』『九州』を除く7地域が改善した。
- 『北海道』(25.8)… 前月比0.8ポイント減。農産物の不作や価格低迷、公共工事の低迷などで域内の『農・林・水産』(26.7)や『建設』(19.8)、『製造』(25.2)など7業界が悪化した。いずれも他地域と比べて低水準であり、『北海道』は11カ月連続で全国10地域中最低となった。
- 『南関東』(35.9)… 同1.5ポイント増。内外需の下支えによって『建設』(29.5)や『不動産』(37.9)、『製造』(37.1)、『サービス』(36.6)など8業界が改善し、『南関東』は全国10地域中で12カ月連続の首位となった。
- 『東海』(33.1)… 同0.3ポイント増。鉄鋼や自動車関連業種が改善した『製造』(35.3)は改善したが、内需の低迷が『不動産』(31.0)や『サービス』(32.6)など4業界の悪化につながっており、『東海』は5カ月連続で全国水準(33.7)を下回った。他の都市圏に比べて回復の遅れが目立っている。
- 『九州』(33.0)33.2)… 同0.2ポイント減。『製造』(35.8)など5 業界が悪化し、3カ月ぶりに悪化した。特に「宮崎」(25.7)は、鳥インフルエンザの発生や新燃岳噴火の影響を受けて4カ月ぶりに悪化し、47都道府県別で再び全国最下位に落ち込んだ。
→ 最高の『南関東』と最低の『北海道』との格差(10.1ポイント)は、同2.3ポイント増と5カ月連続で拡大した。
※1:網掛けなしは前月比改善または増加、黄色の網掛けは前月比横ばい、青色の網掛けは前月比悪化または減少を示す
業界別の景況感「現在」(2011年1月調査分)
業界別の景況感「先行き」(2011年1月調査分)
調査先企業の属性
1) 調査対象(2万3,356社、有効回答企業1万1,017社、回答率47.2%)
2) 調査事項
- 景況感(現在)および先行きに対する見通し
- 経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足感、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
- 2011 年度の賃金動向に関する企業の意識調査
3) 調査時期・方法
2011年1月19日〜31日(インターネット調査)
景気DIについて
■TDB景気動向調査の目的および調査項目
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を主目的として、2002年5月から調査を行っており、景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など、企業活動全般に関する項目について、全国2 万社以上を対象に実施している月次の統計調査(ビジネス・サーベイ)である。
■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。
■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ下表カッコ内の点数を与え、これらを各回答区分の構成比(%)に乗じて算出している。
50を境にそれより上であれば「良い」超過、下であれば「悪い」超過を意味し、50が判断の分かれ目となる。なお、小数点第2位を四捨五入している。また、DIの算出においては、企業規模の大小に 基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」の単純平均の形をとっている。
■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に、中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分している。
注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング
■景気予測DI
景気DIの先行きを予測する指標。ARIMAモデルに、経済統計やTDB景気動向調査の「売り上げDI」、「設備投資意欲DI」、「先行き見通しDI」などを加えたstructural ARIMAモデルで分析し、景気予測DIを算出している。

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