2011年度の賃金動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2011年1月特別企画 -

 

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2011年2月3日
株式会社帝国データバンク産業調査部

2年連続で賃金改善の見込み

〜 しかし個人消費回復への見通し厳しく、内需回復に不透明感漂う 〜


 政府による家計支援策が相次いで縮小・終了予定となっているなか、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引き上げなど賃金改善の動向が注目されてい る。また、今後の景気動向にとって個人消費の行方が注視されており、その点からも2011年度の賃金動向に関心が集まっている。
 そこで帝国データバンクでは、2011年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2011年1月19日〜31日。調査対象は全国2万3,356社で、有効回答企業数は1万1,017社(回答率47.2%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し今回で6回目。

調査結果のポイント


2011年度の賃金改善、「ある」と見込む企業は37.5%で2年連続増加

 2011年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある(見込み)」と回答した企業は1万1,017社中4,131社、構成比37.5%となり、前回調査(2010年1月度)の2010年度見込み(同31.8%)を5.7ポイント上回った。一方、「ない(見込み)」と回答した企業は同35.8%(3,942社)となり、賃金動向は厳しいながらも2年連続で改善すると見込まれている。

 「ある(見込み)」を地域別にみると、『南関東』(同39.1%、1,429社)や『北関東』(同39.0%、269社)、『近畿』(同38.9%、710社)、『北陸』(同37.5%、196社)など全10 地域で3割を上回った。また、2010年度見込みと比べるとすべての地域で前回を上回っている(参考表1参照)。
 業界別では、『農・林・水産』(同46.3%、19社)や『製造』(同42.5%、1,315社)、『卸売』(同41.0%、1,417社)が4割を超え、とりわけ『製造』は前回を8.7ポイント上回った。一方、『金融』(同15.0%、20社)は唯一、前回を下回った。企業からは、「2年にわたり緊縮体制をとってきているため、モチベーションアップのための改善が必要」(土木建築サービス、東京都)や「デフレ状況であり、賃金の大幅な上昇は見込めない」(燃料小売、岩手県)といった声のほか、「リスケをしており、賃金は体質改善後となる」(自動車・同部品小売、愛知県)などの意見もみられた。
 2010 年度実績では、賃金改善が「あった」企業は同47.2%(5,204 社)と2009 年度実績(同39.5%)から7.7 ポイント上昇し、2009 年度より賃金環境が改善した ことを示している。2007 年度実績と比較すると依然として低いものの、リーマン・ ショック後の急激な低下からは緩やかに改善している様子がうかがえる。


注:母数は有効回答企業数。2007年度見込みは9,529社、2007年度実績、2008年度見込みは1万49社、
   2008年度実績、2009年度見込みは1万822社、2009年度実績、2010年度見込みは1万651社、
   2010年度実績、2011年度見込みは1万1,017社


具体的内容、ベア31.2%、賞与(一時金)21.0%がともに2年連続で上昇

 2011年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が1万1,017社中3,437社、構成比31.2%となり、「賞与(一時金)」は同21.0%(2,316社)となった。また、前回調査(2010年度見込み)と比べると、それぞれ、4.0ポイント、4.4ポイント上昇した。
 リーマン・ショック後の世界同時不況による景気後退のなかで、2009年度見込みはベア、賞与(一時金)ともに大幅な下落を示した。2011年度はベア、賞与(一時金)とも2年連続で前年度見込みより増加する見込みであるが、2008年度見込みと比較すると、ベアが依然として大きく下回っている。成果主義の導入などにより賃金は賞与(一時金)が先行して改善する状況にあることがうかがえる。




注:母数は有効回答企業数
   2008年度は1万49社、2009年度は1万822社、2010年度は1万651社、2011年度は1万1,017社


賃金改善をする理由、「労働力の定着・確保」が最多、「業績拡大」も5割超に、
改善しない理由では、「自社の業績低迷」が7割超

 賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「労働力の定着・確保」で4,131社中2,320社、構成比56.2%(複数回答、以下同)となり、前回調査(同52.7%)から3.5ポイント上昇した。次いで、「自社の業績拡大」(同50.5%、2,086社)が多く、前回調査(同40.9%)から9.6ポイント上昇した。当該設問を開始した2007年度以来はじめて、半数を超える企業が業績拡大を挙げた。また、「同業他社の賃金動向」(同14.3%、589社)、「物価動向」(同7.0%、289社)、「最低賃金の改定」(同6.0%、247社)が続いている。
 一方、賃金改善が「ない」理由では、「自社の業績低迷」が3,942社中2,908社、構成比73.8%(複数回答、以下同)と7 割を超えたものの、前回調査(同78.1%)から4.3ポイント減少した。次いで、「同業他社の賃金動向」が同19.6%(774社)となり、約2割の企業が様子見の状況にある。さらに、「物価動向」(同15.7%、619社)が続いた。また、「内部留保の増強」(同15.6%、613社)や「人的投資の増強」(同9.7%、383社)など賃金水準を抑制して他の目的に振り分ける傾向が増した。
 具体的には、「今の利益幅が続くかぎり、ベースアップ・社員の新規採用は考えられない」(飲食料品卸売、神奈川県)と指摘する意見がみられた一方で、賃金を改善するとした企業からは「社員のスキルアップにより、さらなる質的向上を図っていくため」(建設、岡山県)、「人材確保のためには正社員、非正社員問わず賃金改善が必要」(不動産、福岡県)といった声も挙がっている。
 前回調査(2010年度見込み)と比較して、2011年度見込みの賃金改善は「自社の業績拡大」で実施する企業が増加し5割を超える一方で、「自社の業績低迷」で実施しない企業は7割を超えている。企業業績を背景として賃金改善の有無が分かれる結果となった。



注1:以下、「団塊世代の退職による人件費・労務費の減少」(5.7%、237社)、「非正社員の賃金改善に伴い、正社員の賃金も改善」(1.3%、54社)、「非正社員の賃金抑制に伴い、正社員の賃金を改善」
(0.5%、21社)、「その他」(5.1%、209社)、「分からない」(1.2%、49社)
注2:2009年度見込み2009年1月調査。2010年度見込み2010年1月調査。2011年度見込み2011年1月調査
注3:母数は、賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業。2009年度3,018社、2010年度3,388社、2011年度4,131社



注1:以下、「設備投資の増強」(4.5%、178社)、「団塊世代の再雇用による人件費・労務費の増加」(3.2%、127社)、「ワークシェアリングの導入を検討」(3.0%、117社)、「非正社員の賃金抑制に伴い、正社員の賃金も抑制」(1.8%、70社)「非正社員の賃金改善に伴い、正社員の賃金を抑制」(1.2%、49社)、「その他」(3.7%、144社)、「分からない」(2.1%、81社)
注2:2009年度見込み2009年1月調査。2010年度見込み2010年1月調査。2011年度見込み2011年1月調査
注3:母数は、賃金改善が「ない(見込み)」と回答した企業。2009年度4,542社、2010年度4,315社、2011年度3,942社


非正社員の賃金改善、徐々に進むも遅れ気味、正社員との格差拡大懸念

 非正社員の2011年度の賃金動向については、賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業は非正社員を雇用している企業8,763社中1,404社、構成比16.0%となった。一方、「ない(見込み)」と回答した企業は同51.5%(4,515社)と3年連続で5割超を占めた。徐々に上向きつつあるものの、正社員以上に非正社員の雇用調整が進むなかで、前年と同様に厳しい賃金状況が続いている様子が浮き彫りとなった。

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 企業からは、正社員と非正社員との賃金格差について、「ある程度の格差はやむを得ず、それが雇用確保につながっている」(専門サービス、東京都)や「社会保険料の企業負担が一番の問題。これが消費税になれば相応額の賃金アップができ、非正社員から正社員への移行も行いやすくなる」(警備、東京都)など、雇用確保や企業の公的負担の高さでやむを得ないとする意見のほか、「現行法のもとでは正社員を雇うこと自体がリスク」(精密機械器具卸売、神奈川県)や「時間単価がそれほど変わらなければ問題にならない」(民営職業紹介、東京都)といった声が挙がった。
 総じて賃金動向が低水準ながらも徐々に好転するなかで、非正社員の改善が遅れており、正社員との格差拡大が一段と進むことが懸念される。



注:母数は有効回答企業数のうち、「非正社員はいない」 との回答を除いた企業数。
   2008年度は8,284社、2009年度は8,363社、2010年度は8,332社、2011年度は8,763社


労働条件に関する方針決定、賃金への割合高まり、雇用との両面で決定

 2011年度の労働条件に関する方針決定における最大の焦点を尋ねたところ、1万1,017社中3,702社、構成比33.6%の企業で「賃金および雇用」が最も焦点になると回答し、賃金と雇用の両方を考慮した方針になるとする企業が最多となった。また、「賃金」と回答した企業は同24.1%(2,651社)となり、前回(2010年度)より12.3ポイント増加した。一方、2010年度に最も多かった「雇用」は同21.4%(2,358社)となり、前回より16.0ポイント低下しており、雇用維持が最大の課題となっていた1年前と比べて、賃金も含めて方針決定を行う企業が拡大している。

 地域別にみると、「雇用」は『四国』(同27.5%、96社)、「賃金」は『北陸』(同26.6%、139社)が高かった(参考表2参照)。「賃金および雇用」の両方が焦点になるとした企業は『北海道』(同37.1%、216社)など全10 地域で3割を超えていた。また、業界別では、「雇用」は『運輸・倉庫』(同24.5%、101社)、「賃金」は『不動産』(同29.0%、84社)が高く、「賃金および雇用」は『製造』(同35.6%、1,102社)などが高かった。

 リーマン・ショック後に雇用環境が急激に悪化したことにより雇用維持を第一としていた状況から、賃金と雇用の両者を考慮に入れた労働条件の方針決定へと企業の意識が移行している様子がうかがえる。



注:母数は、 2010年度1万651社、2011年度は1万1,017社


2011年度の個人消費、半数近くが「横ばい」を見込む、縮小懸念は大幅減

 賃金動向によっても左右される個人消費について尋ねたところ、2011年度は「拡大が期待される」と回答した企業は1万1,017社中583社、構成比5.3%であった。「横ばい」との回答は同46.4%(5,107社)となり、前回調査(同29.6%)から16.8ポイント、前々回調査(同6.5%)からは39.9ポイントの増加となった。一方、「縮小が懸念される」は同39.9%(4,395社)と約4割となり、前回調査(同61.5%)から21.6ポイント、前々回調査(同88.5%)からは48.6ポイント減少しており、個人消費の見通しは悪化傾向が急速に緩和している。2011年度の個人消費は、拡大を期待する企業が5%に過ぎず依然として厳しい見方は続いているものの、下振れ懸念をもつ企業が4割を下回るまで減少しており、6割超が縮小を懸念していた状況と比較すると、個人消費の見通しは厳しいながらもやや改善した。

 具体的には、「節約も我慢の限界で、少しずつ個人消費が増してくる」(くぎ製造、大阪府)や「付加価値追求型の消費拡大が望ましく、安値での競争は消費者から飽きられる。いまが転換期ではないか」(事務用機械器具卸売、東京都)と上向きを期待する声がある一方、「16歳以下の扶養控除の廃止など、給料の手取りの減少により子育て世代の支出が減少する」(家庭用電気機器卸売、京都府)との声も聞かれた。また、「エコカー減税・補助金、家電や住宅などへのエコポイントなどで一時的に消費が拡大したが、その反動がこれから出てくる」(鉄鋼・同加工品卸売、栃木県)など、政策の縮小・廃止などによる消費低迷を懸念する意見も多い。
 個人消費の見通しは2008年度以降で最も好転している。しかし、2011年度政府予算案において相続税の増税、成年扶養控除・年少扶養控除・特定扶養控除の縮小など個人の負担増要因が多く挙げられる一方で、「日本経済の先行きの閉塞感が解消されるまでは個人消費の減少傾向は続く」(工業用樹脂製品製造、三重県)といった意見も挙がるなか、賃金・雇用の改善が持続的な消費拡大へと結びつくためには将来不安を解消することが重要である。



注1:「分からない」は、2008年度見通し6.1%(614社)、2009年度見通し4.7%(506社)、2010年度見通し7.1%(755社)、2011年度見通し8.5%(932社)
注2:母数は有効回答企業数。2008年度見通しは1万49社、2009年度見通しは1万822社、2010年度見通しは1万651社、2011年度見通しは1万1,017社


【参考1】 賃金改善(2011年度) 〜規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,017社

【参考2】 TPPに参加しなかった場合の景気に与える影響 〜 規模・業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,017社



【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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