2011年度の雇用動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2011年2月特別企画 -

 

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2011年3月3日
株式会社帝国データバンク産業調査部

正社員採用、2年連続で増加を見込む企業が拡大するも、
4割超が予定なし

〜 業容拡大や団塊退職などを背景に、正社員比率の「上昇」が「低下」を上回る 〜


 海外需要が好調を維持するかたわら、国内需要の回復は遅れ、厳しい雇用・所得環境となっている。2011年1月の有効求人倍率は0.61倍と39カ月連続で1倍を下回り、また、新規学卒者の就職内定率が12月時点で68.8%(大卒)と過去最低に落ち込むなど、厳しい雇用環境が続いている。一方で、地域間や業界間、正社員・非正社員間などの雇用動向には格差がみられる。
 そこで帝国データバンクでは、2011年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2011年2月16日〜28日。調査対象は全国2万3,263社で、有効回答企業数は1万990社(回答率47.2%)。なお、雇用動向に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し今回で7回目。

調査結果のポイント


2011年度の正社員「採用増加」は19.5%、2年連続増加も「予定なし」4割超

 2011年度(2011年4月〜2012年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万990社中2,142社、構成比19.5%で全体の約2割となった。2010年度見込み(2010年2月調査)の14.3%と比べると5.2ポイント増加し、2年連続で改善した。

 業界別では、『農・林・水産』(同26.8%、11社)や『サービス』(同21.6%、335社)などの内需関連業界とともに、外需を中心に景況感が復調している『製造』(同21.3%、661社)が全体を上回り正社員の採用意欲が高い(参考表1参照)。

 また、地域別では『北陸』(同22.5%、120社)や『東北』(同20.8%、137社)、『近畿』(同20.8%、377社)、『東海』(同20.2%、237社)、『北関東』(同20.0%、137社)で採用増の割合が2割以上となった。ただ、10地域中で最も低い『北海道』は同16.4%(97社)で最高の『北陸』との地域間格差が6.1ポイントとなり、前年度調査の3.0ポイントから拡大した(前年度の最高『北陸』(15.9%)、最低『北海道』(12.9%))。

 一方、「採用予定なし」は同40.8%(4,483社)と4割を超え、企業の採用意欲の厳しさは続いている。過去5回の調査を通してみると、雇用環境の改善が続いていた2006年度が25.5%、2007年度が25.2%であった。サブプライム問題が拡大していた2008年度は30.4%に上昇した。世界同時不況の影響を受けた2009年度は45.9%、さらに2010年度は47.5%と悪化傾向が深刻化した。しかし、2011年度は採用予定のない企業が前年度から6.7ポイント減少する結果となった。
 また、業界別では、『不動産』(同54.2%、154社)が5年連続で10業界中最も高く(『その他』を除く)、3年連続で5割を超えるなど、正社員採用の厳しさが際立っている(参考表2参照)。

 正社員雇用は悪いながらも増加傾向を示しており、特に、長期的な観点からの採用や中小企業にとって優秀な人材確保のチャンスと捉えている企業は多い。一方で、厳しい業績が続くなかで新たな採用を躊躇する企業も依然として多く、両者のトレードオフ関係に悩む企業の姿が現れた。


注1:有効回答社数は、2006年2月調査が9,762社、2007年2月調査が9,849社、2008年3月調査が1万189社、2009年2月調査が
   1万658社、2010年2月調査が1万624社、2011年2月調査が1万990社
注2:※1は同861社(8.8%)、※2は同732社(7.4%)、※3は同753社(7.4%)、※4は同906社(8.5%)、※5は同962社(9.1%)、
   ※6は同1,075社(9.8%)


企業の意見
  • 技術の継承と長期的視野に立った人員構成の構築(ソフト受託開発、東京都)
  • 規模の拡大にともない、2010年度より若干多い採用を計画している(各種物品賃貸、千葉県)
  • 工場稼働率がアップしているため正社員採用を増やす(医薬品製剤製造、富山県)
  • 今こそ基盤を固め、受注に対して体制をつくる時期であると考えている(金物卸売、東京都)
  • 人材育成が今後の業績を左右すると考える(ガソリンスタンド、新潟県)
  • 2010年度の採用が少なかった反動で、2011年度の採用が増加する見込み(試薬製造、大阪府)
  • 大企業が採用を控えた今は良い人材採用のチャンス(鉄鋼・非鉄・鉱業、山口県)
  • 団塊世代の退職にともなう補充策のため(建設、宮城県)
  • 今後、大手企業が採用時期を全体的に遅らせると、中小企業にとって採用が難しくなるため(建設、神奈 川県)
  • ハローワークの既卒3年以内のトライアル雇用で採用しており、トライアル期間終了後は順次正社員となっている。その分、非正社員の採用は控えている(国内電気通信、東京都)
  • 価格競争でなかなか利益が上がらず、固定費の引き上げには踏み切れない(鉄鋼切断・溶断、愛知県)
  • 仕事量が減少傾向にあり、先が見えてこない状況では積極的な採用は考えにくい(建設、新潟県)
  • 中小企業の立場では「期待できる新卒社員採用の絶好のチャンス」「不透明な時代背景から社員数を絞りたい」という二律背反を背景に状況をみているのが実態(配線器具等製造、東京都)

非正社員採用、「採用予定なし」が3年連続で5割を超える

 2011年度の非正社員(派遣社員、パート・アルバイトなど)の採用状況について尋ねたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万990社中962社、構成比8.8%となった。一方、「採用予定はない」は同50.8%(5,579社)と3年連続で5 割を超えており、非正社員の採用状況は依然として厳しい。
 非正社員から正社員への切り替えをする企業が増えているなかで、半数以上の企業が非正社員の採用を見送るという状況が続いている。




注:有効回答社数は、2006年2月調査が9,762社、2007年2月調査が9,849社、2008年3月調査が1万189社、
  2009年2月調査が1万658社、2010年2月調査が1万624社、2011年2月調査が1万990社


企業の意見
  • ピーク時の業務に対応するため非正社員で調整する(医薬品卸売、高知県)
  • 継続的な生産増は考えにくく、リスクを考えると非正社員の採用になる(精密機械器具製造、福島県)
  • 嘱託として再雇用せざるを得ない定年退職者が大量に出始める(放送、福島県)
  • 正社員雇用では顧客からの仕事が切れた場合、自社の体力では雇い続ける自信がない(ソフト受託開発、東京都)
  • 外注してきた仕事を内製化する計画に沿って増員をはかる(化学製品卸売、大阪府)
  • 機械化で作業効率が上がり、非正社員を減らしている(飲食料品卸売、北海道)
  • 毎年の最低賃金の見直しに耐えられなくなってきている(スーパー、北海道)

正社員比率、「上昇する」企業は13.7%

 2011年度の正社員比率について尋ねたところ、2010年度と比べて「上昇する(見込み含む)」と回答した企業は1万990社中1,504社、構成比13.7%で、「低下する(見込み含む)」(同10.8%、1,182社)を上回った。
 「上昇する(見込み含む)」と回答した割合を規模別にみると、『大企業』(同14.3%、373社)が『中小企業』(同13.5%、1,131社)よりも高く、業界別では『サービス』(同17.5%、271社)や『農・林・水産』(同17.1%、7社)が高かった(参考表3参照)。「低下する(見込み含む)」では『農・林・水産』(同19.5%、8社)や『小売』(同15.8%、75社)が高かったものの、10業界中6業界で「上昇」が「低下」を上回った。



注1:※は「分からない」(10.1%、1,114社)
注2:母数は有効回答企業1万990社

正社員比率の上昇要因、「業容拡大への対応」が53.6%で最多、
「業績低迷による非正社員の削減」は8.0%へ13.5ポイント減

 2011年度の正社員比率が「上昇する(見込み含む)」と回答した企業に対してその大きな要因を尋ねたところ、「業容拡大への対応」が1,504中806社、構成比53.6%(複数回答、以下同)で最多となり、2010年度見込み(42.0%)から11.6ポイントの大幅増加となった。また、「団塊世代の大量退職による補充、技術継承などを目的とした正社員雇用の増加」(同24.8%、373社)が続き、前年度見込み(18.4%)から6.4ポイント増加した。一方で、前年度の見込みで2位(21.5%)に挙げられていた「業績低迷による非正社員の削減」は同8.0%(120社)と 13.5ポイントの大幅減少となった。

 雇用環境が依然として厳しい状況にあるなかでも、業容拡大や団塊世代の退職への対応のほか、業績低迷による“非正社員の削減”が一応の落ち着きを取り戻したことを背景として、正社員比率は上昇へと転じたことがうかがえる。



注1:2010年度見込みは2010年2月調査、2011年度見込みは2011年2月調査
注2:母数は正社員比率が「上昇する(見込み含む)」と回答した企業。2010年度見込みは1,244社、2011年度見込みは1,504社


企業の意見
  • 業務対象を限定して契約社員を採用していたが、その仕事が恒常的に発生し、契約社員のままでおく合理的な理由がないため、非正社員の正社員化を進めている(ソフト受託開発、東京都)
  • 業務内容の高度化に対して新卒者のノウハウ(柔らかい頭脳)を活用したい(樹脂成形材料製造、東京都)
  • 業容拡大への対応等により非正社員からの登用を考えている(ごみ収集運搬、北海道)
  • 次世代の社員が不足しており、10年後を見越して対応(運動用具製造、山口県)
  • 助成金があるため(経営コンサルタント、東京都)
  • 団塊世代の退職による技術の継承は重要な問題であり、そのための正社員増加で正社員比率が高まるのは正当な方法(建設、栃木県)
  • 優秀な学生採用のチャンスが中小企業に出てきたこともあり、中長期的な視点で採用を増やしている(プリント回路製造、静岡県)
  • アルバイト・パートタイムを削減したので比率が上がった(書籍・雑誌小売、大阪府)

既卒者の新卒扱い採用、企業の8.6%がすでに決定または検討中

 既卒者の就職が非常に困難となっているなか、学校を卒業後3年間は既卒者を新卒者扱いで採用する予定があるか尋ねたところ、「卒業後3年以内の既卒者を新卒扱いで採用することを決定した」と回答した企業は1 万990社中263社、構成比2.4%となった。また、「卒業後3年以内の既卒者を新卒扱いで採用することを検討している」は同6.3%(687社)となり、合わせて1割弱の企業が少なくとも既卒者を新卒扱いで採用することを決定または検討していることが明らかとなった。さらに、「新卒と既卒で区別しない(必要に応じて採用する)」とする企業は28.5%(3,133社)となっており、約3割の企業はそもそも採用時に新卒と既卒とで区別していない。一方、「検討していない」は同43.8%(4,818社)となった。

 規模別にみると、現在「検討している」企業は『大企業』(同7.7%、202社)が『中小企業』(同5.8%、485社)を上回っている(参考表4参照)。一方で、新卒と既卒とを「区別しない」では、『中小企業』(同29.9%、2,505社)が『大企業』(同24.1%、628社)を5.8ポイント上回った。また、「検討していない」は規模が小さい企業ほど割合が高まっており、企業規模によって既卒者を新卒扱いで採用することへの対応の違いが顕著に現れる結果となった。

 政府は「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」や「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」など、企業に対して既卒者採用の誘因を与える支援策を実施している。学校の卒業時における採用環境によってその後の人生が左右される状態が日本の社会・経済発展にとって大きな妨げとなりつつあるなか、政策的に緩和する仕組みが望まれる。



注:母数は有効回答企業1万990社

雇用環境の改善時期、「長期的に改善する見込みはない」が31.1%で最多、
2012年度以降を見込む企業は35.5%

 企業の採用活動が積極化するためには、企業をとりまく雇用環境が改善している必要がある。そこで、自社の属する地域・業界の雇用環境が改善する時期はいつ頃になるか尋ねたところ、「長期的に改善する見込みはない」と回答した企業が1 万990社中3,417社、構成比31.1%で最多となった。次いで、「2012年度」(同16.1%、1,773社)、「2013年度」(同12.3%、1,351社)、「2014年度以降」(同7.1%、782社)が続いた。雇用環境の改善が見込める時期は2012年度以降になるとしている企業は合わせて同35.5%(3,906社)で3社に1社となり、長期的な改善を見込まない企業とともに7割近くが雇用環境の改善について悲観的に捉えている様子がうかがえる。

 他方、2012年度より前の「2010年度内」や「2011年度」は、それぞれ同0.4%(48社)、同3.1%(342社)にとどまっており、2011年度までに雇用環境の改善が訪れることは困難と考えている企業が多い。
 規模別にみると、「長期的に改善する見込みはない」が『大企業』(同26.9%、702社)、『中小企業』(同32.4%、2,715社)ともに最多となっており、特に『小規模企業』は同37.2%(893社)と4割近くに達している。また、業界別では、改善時期が2012年度以降になるという見方は『不動産』(同43.0%、122社)が4割超と高い。『建設』は同42.8%(649社)が「長期的に改善する見込みはない」とみており、今後の雇用環境について最も悲観的に捉えていた。
 雇用環境は依然として厳しい状況が続いているものの、地方圏や中小企業などでは優秀な人材を確保するチャンスと捉えている様子もうかがえる。同時に、業容拡大などにともなう正社員採用の増加を考えている企業も徐々に増えてきており、リーマン・ショック後の最悪期は脱しつつある。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万990社

【参考1】 正社員の採用(2011年度) 〜規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万990社

【参考2】 正社員の「採用予定はない」企業の各年度の構成比 〜 規模・業界・地域別 〜


注:網掛けは、全体平均以上を表す

【参考3】 正社員比率(2011年度) 〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万990社

【参考4】 既卒者の新卒扱い採用予定 〜 規模・業界・地域別 〜


注:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万990社



【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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