産業空洞化に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2011年7月特別企画 -

 

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2011年8月3日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の76.5%が産業の空洞化を懸念

〜 企業の海外流出要因、円高が約5割で最多。流出先は中国が56.9% 〜


 国内景気はリーマン・ショックや東日本大震災などに見舞われ、自律的な回復に至らず低迷が続いている。一方、海外との関係においても急速な円高やTPP、環境問題、税制など課題が山積するなか、電力不足という新たな懸念材料も増え、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。国内企業の海外進出や移転などによる産業の空洞化により国内経済活動の低下が懸念されている。
 そこで帝国データバンクでは、国内産業の空洞化に対する意識について調査を実施した。調査期間は2011年7月19日〜31日。調査対象は全国2万3,065社で、有 効回答企業数は1万1,006社(回答率47. 7%)。

調査結果のポイント


企業の76.5%が産業の空洞化を懸念

 今後の日本の産業空洞化に対する懸念の有無を尋ねたところ、「ある」と回答した企業は1万1,006社中8,421社、構成比76.5%となった。4社に3社以上の企業が国内産業の空洞化に懸念を持っている。一方、「ない」は同3.6%(398社)となり、1割にも満たなかった。
 国内産業の空洞化の懸念が「ある」と回答した企業を業界別にみると、『製造』(同80.8%、2,510社)が最も多く、8割を超える企業が懸念を持っている(参考表1参照)。とりわけ、精密機械や電気機械、自動車関連の業種で高かった。また、最も少ない『農・林・水産』(同61.7%、29社)でも6割を超えた。
 地域別では『東海』が同81.7%(988社)で最高となり、次いで『北関東』(同80.3%、572社)も8割を超えた。さらに、『近畿』(同79.4%、1,430社)、『北陸』(同78.4、410社)、『中国』(同77.7%、536社)、『四国』(同77.6%、281社)と続いた。自動車関連や機械などの輸出産業が集中している『東海』『北関東』でとりわけ高い懸念を持っていることがうかがえる。一方、「ない」はすべての業界、地域で1 割未満となった。企業からは「国内雇用にも影響しかねない。国内産業空洞化を避ける為に、行政を交え施策を講じる必要がある」(輸送用機械・器具製造、静岡県)といった声も挙がっており、多くの企業が業界、地域を問わず、国内産業の空洞化に懸念をもっていることが明らかになった。


注1:1:※は「分からない」(19.9%、2,187社)
注2:母数は有効回答企業1万1,006社


今後の企業流出の動き、東海の約3割の企業が「流出が加速する」

 国内産業の空洞化が懸念されるなか、自社の属する地域における企業の事業所(事務所、工場、店舗、物流拠点など)の他国・地域への流出状況についてリーマン・ショック前との変化について尋ねたところ、「変わらない」が同48.2%(5,303社)で最多となった。ただ、「多い」と「やや多い」を合わせた「流出が多い(計)」が同11.9%(1,309社)となり、「少ない」と「やや少ない」を合わせた「流出が少ない(計)」(同5.7%、626社)を上回った(参考表2参照)。さらに、流入では、「流入が少ない(計)」(同10.3%、1,139社)が「流入が多い(計)」(同3.5%、384社)より高く、リーマン・ショック以降、地域から企業流出が進んでいることがうかがえた。
 また、今後の自地域からの流出状況については、「流出の動きは加速する」が同18.4%(2,025社)となり、「流出の動きは減速する」の同2.0%(216社)を16.4ポイント上回った。一方、「あまり変わらない」は同42.8%(4,708社)となった。
 業界別では、『製造』が同25.2%(784社)となり4社に1社が「加速する」と考えていることが明らかになった。また、業種別にみても、「輸送用機械・器具製造」(同42.6%、43社)が全51業種で最高となったほか「機械製造」(同38.5%、178社)、「精密機械、医療機械・器具製造」(同30.7%、23社)、「化学品製造」(同30.1%、129社)なども3割を超えて高かった。
 地域別では、自動車製造業などの多い『東海』が同28.1%(340社)と最も高く、企業流出による地域経済の停滞が懸念されている。『東海』のうち「静岡」(同32.7%、91社)は都道府県別で第1位となり、「愛知」(同29.3%、187社)も第3位と高い。第2位の「群馬」(同30.1%、44社)を含む『北関東』(同23.5%、167社)や『近畿』(同20.2%、363社)が2割を超えたほか、『南関東』(同18.4%、677社)も全体を上回った。
 これまでも地域からの企業の流出傾向が続いていたなかで、今後さらに加速すると考える企業は約2割となった。とりわけ、地域内での主力産業の流出が加速するとみている企業も多く、生産や雇用、所得など地域経済の活力低下が懸念される。



注1:※は「分からない」(36.9%、4,057社)   注:母数は有効回答企業数
注2:母数は有効回答企業1万1,006社


自地域からの海外流出先、アジアが8割を超える

 自地域からの流出先の事例として目立つ国・地域について尋ねたところ、海外と回答した企業は1万1,006社中3,878社、構成比35.2%となり、3社に1社が海外 流出を挙げた。一方、国内への流出事例は同35.1%(3,860社)となった。海外事例 は国内とほぼ同水準となった。
 流出先として海外を挙げた企業3,878社について国別にみると、「中国」が同56.9%(2,205社)で最多となった。さらに、「インド」(同10.9%、421社)、「韓国」(同8.3%、322社)、「台湾」(同5.8%、226社)が続き上位国はアジア各国で占められた。海外地域別でみても「アジア」が同80.4%(3,119社)となり海外流出先のうち8割を越えた。一方、アメリカやヨーロッパなどの「欧米」への流出は 同1.6%(61社)にとどまった。
 国内地域別では、流出先として国内を挙げた企業3,860社のうち『近畿』が同12.6%(485社)で最多となった。次いで、『九州』(同11.7%、451社)、『東北』(同10.0%、387社)、『南関東』(同9.7%、376社) と続いた。一方、最も少なかったのは『四国』(同1.4%、53社)であった。




海外流出が加速する要因、「円高」が約5割で最多

 国内企業の海外流出が加速する懸念要因を尋ねたところ、「円高」が同49.2%(5,414社、複数回答、以下同)と約5割で最多となった。次いで、「人件費が高いため」(同39.5%、4,351社)、「電力などエネルギーの供給問題」(同37.9%、4,174社)が4割近くとなった。以下、「税制(法人税や優遇税制など)」(同28.3%、3,111社)、「取引先企業の海外移転」(同26.5%、2,913社)が続いた。
 業界別にみると、『製造』は「円高」(同55.0%、1,709社)が5 割を超えたほか、「電力などエネルギーの供給問題」(同34.2%、1,064社)も全体を大きく上回った(参考表4参照)。『小売』は「人口の減少」(同32.2%、160社)が全体を大きく上回り業界別で最多となった。
 また、「円高」を地域別でみると、『東海』が同55.0%(666社)で最高となったほか、『北陸』(同53.9%、282社)、『中国』(同53.0%、366社)、『北関東』(同52.2%、372社)でも5割を超えた。企業からは「輸出産業主体の日本の産業構造からみて、国益維持や企業発展をさせるには円高解消以外に道はない」(工作機械製造、愛知県)や「円高傾向が落ち着かないことには、どうしても海外流出による国内の空洞化は避けられない。政府の介入が最も求められている時ではないだろうか」(石油化学品製造、山口県)といった声もあるなど、特に輸出産業の多い地域では企業の流出が加速する最大要因として「円高」が強く懸念されていることが浮き彫りになった。



注1:以下、「取引企業の減少」(11.8%、1300社)、「社会保障費が高いため」(8.7%、953社)、「規制 や法制度(工場立地法や薬事法、年間最低製造量、参入・退出規制など)」(8.2%、906社)、 「貿易問題(環太平洋パートナーシップ協定(TPP)など)」(7.1%、782社)、「国内用地が高い ため」(6.8%、745社)、「雇用の硬直性(解雇規制など)」(6.5%、715社)、「海外との技術水準 の格差が縮小したため」(5.2%、570社)、「環境問題(ポスト京都議定書、環境アセスメントな ど)」(3.4%、370社)、「優秀な人材が少ないため」(2.7%、293社)、「融資等が充実していない ため」(1.1%、123社)、「その他」(2.2%、237社)
注2:母数は有効回答企業1万1,006社


日本または地域の発展に重要な施策、3社に2社が「早期の震災復興」

 国内産業の空洞化を避けるためには、国内産業発展への施策が欠かせない。そこで、日本または地域の発展につながる重要な施策について尋ねたところ、「早期の震災復興」が同67.7%(7,450社、複数回答、以下同)と最多となった。企業の3社に2社が日本の発展において震災復興を重要視している。「早期の震災復興」はすべての地域で6割を超えており、被害が甚大だった地域が多い『東北』は同80.3%(465社)と全体を12.6ポイント上回った(参考表5参照)。なかでも「岩手」は同91.7%(55社)と都道府県別で最高となった。また、『南関東』(同70.7%、2,607社)などでも7割を超えており、東日本は西日本に比べ震災復興を挙げる企業は多い。
 次いで、「法人向け税制(法人税減税など)」が同49.5%(5,449社)で約半数の企業が重要施策と考えているほか、「デフレ対策」(同36.8%、4,046社)、「安定供給を実現するエネルギー政策」(同30.5、3,352社)と続いた。「デフレ対策」は消費停滞で低迷が続く『小売』(同40.4%、201社)が高かった。「安定供給を実現するエネルギー政策」は『農・林・水産』(同34.0%、16社)や『運輸・倉庫』(同33.9%、142社)、『製造』(同33.1%、1,029社)といったエネルギーを多く必要とする業界での割合が高かった。また、「少子化対策」(同27.8%、3,064社)、「貿易振興策(環太平洋パートナーシップ協定(TPP)など)」(同22.6%、2,489社)、「手続きの簡略化(行政や契約における規制緩和)」(同22.0%、2,423社)はいずれも2割を超えた。
 総じて、企業は今後の日本の発展において、震災復興を最重要課題として捉えている。しかし、諸外国に比べ高いとされる法人課税の減税などが業界・地域を問わず重要課題として挙げられているように、企業は震災前から指摘されているデフレ対策や貿易振興策などさまざまな課題に対しても重要であると考えている。

 自地域の企業流出が今後「加速する」と考える企業は約2割となり、4社に3社の企業が国内産業の空洞化に対して懸念を持っている。さらに、国内需要の低迷や急速な円高など企業を取り巻く環境は依然として厳しい。「幾つもの小さな要因が積み重なった結果による日本の閉塞感の解消に決定打はなく、きめ細やかな政策の積み重ねが必要」(人材派遣、神奈川県)という声にもあるように、単一の政策で劇的な日本の発展を促すことは困難であり、震災復興はもとより、震災前から抱えている国内産業における課題を丁寧に拾い上げ、利害関係を調整しつつスピーディーな政策を行うことが産業空洞化に歯止めをかけ、日本の発展を促すことにつながる。



注1:以下、「社会保険費の減免」(16.1%、1770社)、「開発・研究などに対する助成制度」(16.0%、1758社)、 「事業継承支援などに対する政策」(15.2%、1672社)、「日米、日中など外交力の強化」(13.2%、1452 社)、「大学などの研究機関と連携を促す政策」(8.6%、943社)、「環境コストの負荷軽減」(8.2%、906社)、 「海外企業の誘致」(7.5%、830社)、「外国人研究者、労働者の増加を促す政策」(6.9%、763社)、「産業 集積基地の強化」(6%、660社)、「企業のICT利用の促進」(2.7%、292社)、「その他」(2.3%、256社)
注2:母数は有効回答企業1万1,006社


【参考1】 産業空洞化への懸念 〜規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,006社


【参考2】 自地域からの企業の流出・流入状況 〜 業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,006社

【参考3】 今後の企業流出の動き 〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,006社

【参考4】 海外流出が加速する要因 上位10項目(複数回答)
〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,006社

【参考5】 】日本または地域の発展に重要な施策 上位10項目(複数回答)
〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,006社



【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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