復興増税に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2011年10月特別企画 -

 

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2011年11月4日
株式会社帝国データバンク産業調査部

復興増税の開始時期、企業の約4割が「2012年度内」

〜 復興に重要な政策、「原発事故対策」が約7割で最多 〜


 東日本大震災により甚大な被害を受けた地域の復興を目的とした復興債の償還財源として、歳出の削減や国有資産の売却を行い、不足部分を増税で充てる案が国会で議論されている。これは増税により安定した財源を復興財源に充てることで将来世代への負担が減ることや復興計画に弾みがつくといった意見がある一方、増税により企業活動や消費の減退が生じ税収全体の低下を懸念する意見もある。
 そこで帝国データバンクでは、震災復興の財源としての増税について調査を実施した。調査期間は2011年10月19日〜31日。調査対象は全国2万2,924社で、有 効回答企業数は1万746社(回答率46. 9%)。

調査結果のポイント


復興増税の開始時期、企業の38.8%が「2012年度内に開始すべき」

 復興財源として法人税や所得税などの増税が実施された場合、その開始時期についてどのように考えているか尋ねたところ、「2012年度内に開始すべき」と回答した 企業は1万746社中4,172社、構成比38.8%で約4割となった。一方、「2013年度以降に開始すべき」は同33.1%(3,556社)であった。2012年度内が2013年度以降を5.7ポイント上回り、できるだけ早く復興増税を開始すべきと考える企業が多いものの、2013年度以降に先送りすべきと考える企業も3社に1社あり、企業の見解は分かれている。企業からは「避けられないのであれば、早く実施すべき」(飲食料品・飼料製造、三重県)や「早期に臨時増税を終わらせるため」(ガソリンスタンド、山形県)など早期に増税を行うべきといった声がある一方、「景気が低迷している今、増税するべきではない 」(出版・印刷、京都府)といった声もあった。
 規模別にみると、「2012年度内に開始すべき」は『大企業』(同41.5%、1,045社)が4割を超えた一方、『小規模企業』は同33.6%(781社)だった(参考表1参照)。ただ、『小規模企業』では2012年度内と2013年度以降の割合が拮抗しているのに対して、『大企業』では前者が後者を10.7ポイント上回っている。規模の大きい企業の方が、できるだけ早く増税すべきと考える割合が多い結果となった。


注1:※は「分からない」(28.1%、3,018社)
注2:母数は有効回答企業1万746社


2012年度内での開始理由、「復興のスピードに弾みをつけるため」が80.7%、
2013年度以降では「景気の低迷が懸念されるため」が91.2%

 復興増税の開始時期として「2012年度内に開始すべき」と回答した企業4,172社に対してその理由を尋ねたところ、「復興のスピードに弾みをつけるため」(同80.7%、3,367社。複数回答、以下同)が8割を超え最多となった。また、「将来世代に負担を残さないため」(同45.1%、1,882社)と「復興予算の安定的財源を明確にするため」(同44.4%、1,852社)もともに4割を超えた。企業からは「被災者が一日も早く普通の生活を取り戻せるよう、国家を挙げて取り組むべき」(飲食料品小売、広島県)といった声が多かった。また、「復興を進めるためにも、財源を明確化し、予算の使われ方を国民全体で共有する必要がある」(燃料小売、岩手県)や「次の震災がいつ発生しても不思議でない状況であり、早急な対策が必要」(木材卸売、静岡県)や「時間をおけば、増税のコンセンサスが得難くなる」(化学品卸売、香川県)といった声も挙がった。



注1:「その他」は2.2%、91社
注2:母数は復興増税を「2012年度内に開始すべき」と回答した企業4,172社


 一方、「2013年度以降に開始すべき」と回答した企業3,556社に対してその理由を尋ねたところ、「景気の低迷が懸念されるため」(同91.2%、3,242社。複数回答、以下同)が9割を超え最多となった。また、「税収の悪化が懸念されるため」(同25.1%、892社)は4社に1社となり、「増税に対する準備を行うため(給与支払いや経理システムなど)」は同17.7%(631社)となった。企業からは「財源の確保のための議論を十分に行い、国民の同意を得てから増税すべき」(飲食料品卸売、北海道)や「増税に対する国民の理解を得る必要がある。規模、目的と必要原資、スケジュールを明確にする必要がある」(医療・福祉・保健衛生、千葉県)など増税に対する議論が不十分であるといった声や、「増税に耐えられる経済状況ではない」(建設、兵庫県)や「増税はデフレと収益悪化をもたらす」(靴卸売、群馬県)など景気が低迷する状況下で増税を行うことに対して懸念する意見も多かった。



注1:「その他」は5.1%、180社
注2:母数は復興増税を「2013年度以降に開始すべき」と回答した企業3,556社


復興増税の期間、約6割の企業が「10年程度以内」

 政府は復興増税を10年間の時限的な増税にとどめるとしている。一方、1年あたりの負担額低減やインフラなどが利用できる将来世代の負担など長期間の増税にするべきといった議論もある。そこで増税はどの程度の期間で実施することが適当だと思うか尋ねたところ、「10年程度」が1万746社中3,565社、構成比33.2%で最多となった。次いで、「5年程度」が同24.3%(2,616 社)となり「5年程度」と「10年程度」を合わせた「10年程度以内」(同57.5%、6,181社)が半数を超えた。一方、「15年程度」(同7.7%、831社)、「20年程度」(同7.6%、822社)、「25年以上」(同5.9%、635社)を合わせた「15年程度以上」(同21.3%、2,288社)は2割にとどまっており、企業は復興増税の期間として10年程度までが適当であると考えている。
 地域別でみると、「10年程度以内」では『南関東』(同60.3%、2,129社)が6割を超え最多となった。一方、最も少なかったのは『東北』(同53.1%、313社)で全体を4.4ポイント下回った。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万746社


復興増税の業績への影響、「悪影響」が6割を超える

 復興財源として所得税、法人税の増税が実施された場合、自社の業績にどのような影響を与えるか尋ねたところ、「悪い影響がある」と回答した企業は1万746社中 5,621社、構成比52.3%で最多となった。また、「かなり悪い影響がある」(同11.6%、1,250社)も1割を超えており、「悪い影響がある」と合わせた「悪影響」(同63.9%、6,871社)は6割を超えた。一方、「良い影響がある」(同0.4%、46社)と「かなり良い影響がある」(同0.1%、11社)を合わせた「好影響」(同0.5%、57社)は1%未満にとどまっており、多くの企業で復興増税が自社の業績に悪影響を与えることを懸念している。
 業界別では「悪影響」と回答した企業が『小売』(同69.9%、332社)と『運輸・倉庫』(同68.3%、278社)で約7 割となった(参考表2参照)。業種別にみると、「教育サービス」(同83.3%、20社)と「医薬品・日用雑貨品小売」(同81.0%、17社)が8割超となり、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同76.9%、30社)や「娯楽サービス」(同72.9%、43社)なども全体を大きく上回った。とりわけ、個人消費に関連する業種で業績への悪影響を懸念している。
 地域別では、『北海道』(同69.2%、395社)と『四国』(同69.2%、247社)が約7割となった。最も低かった『南関東』でも同61.5%(2,168社)となり10地域すべてで6割を超えた(参考表3参照)。企業からは「増税すれば、企業業績が悪化し、消費者も支出を減らす」(建設、東京都)、「被災地の復興に悪影響を及ぼす可能性がある」(飲食料品卸売、秋田県)といった声もあり、復興増税は地域経済や被災地の復興へ悪影響を与えることも懸念されている。



注1:※は「分からない」(8.0%、864社)
注2:母数は有効回答企業1万746社


復興において重要な政策、「原発事故対策」が最多

 東日本大震災は直接被害、間接被害ともに広範囲にわたっており、震災からの復興に対する政策は数多く議論されている。そこで、復興に対して重要と思われる政策について尋ねたところ、「原発事故対策(放射性汚染物質を含む廃棄物処理や除染費用、個人補償など)」(同68.6%、7,374社。複数回答、以下同)が約7割で最多となった。次いで「被災地域の経済復興政策(復興特区や農林水産、観光など)」が同67.3%、(7,236社)となり、企業の3社に2社に達した。「被災者に対する雇用・失業対策」(同57.3%、6,154社)も半数を超えており、被災地域の経済や雇用に対する施策を重要と考える企業が多い。また、「災害廃棄物の処理(放射性汚染物質を除く)」(同44.1%、4,739社)、「風評被害対策の強化(食品や製品に関する線量検査など)」(同43.7%、4,699社)も4割を超えた。
 地域別にみると「原発事故対策(放射性汚染物質を含む廃棄物処理や除染費用、個人補償など)」は『北海道』(同72.2%、412社)や『北関東』(同70.4%、482社)、『東北』(同70.2%、414社)で7割を超え、『南関東』(同69.6%、2,457社)と『北陸』(同69.4%、376社)も全体を上回った(参考表5参照)。都道府県別では原発事故が発生した「福島」(同82.9%、121社)が突出して高く、次いで「石川」(同74.5%、73社)、「奈良」(同72.9%、43社)、「栃木」(同72.5%、79社)、「新潟」(同72.4%、184社)と続いた。原発を抱える地域や農畜産業が盛んな地域などで7割を上回っており、原発事故への対策が多くの地域で重要視されていることがうかがえる。また「風評被害対策の強化」でも『東北』(同59.0 %、348社)が特に高く、『北海道』(同48.7%、278社)や『北関東』(同47.0%、322社)、『南関東』(同44.5%、1,569社)も全体を上回った。
 企業からは「生活基盤を早く整備しないと人々は戻って来なくなる。放射性汚染物質除去、雇用対策を早急に打ち出すべき」(機械・器具卸売、福島県)など、喫緊の課題として被災地で日常生活が再開できる環境を整えることが重要であるといった声が多かった。

 東日本大震災からの復興のためには、巨額の財源が必要なことは言うまでもない。そのための増税はやむなしといった声も多いが、 企業からは「復興そのものは、増税ではなく超長期の建設国債で賄うべき」(鉄鋼・非鉄・鉱業、三重県)や「増税には反対、経済の衰退を招き、結果として税収の減少を招くだけ」(建設、北海道)など増税そのものに反対する意見も根強い。復興政策の具体的な計画やビジョンが国民に浸透していないなか、費用負担のみがクローズアップされている面もあろう。「徹底的な行財政改革を実施した後に増税政策を図るべき」(電子部品検査、岩手県)といった声のように、政府は行政の無駄削減や効率化による歳費の徹底的なカット、国有資産の売却などを行い増税による企業と生活者の負担軽減を最大限行うとともに、復興増税の国民的合意を得るためにも計画の具体案や増税に対する丁寧な説明が肝要である。



注1:「持続可能な新しい地域づくり(高齢化や人口減少などへの対応)」(22.2%、2,390社)、「被災地域の医療、教育、福祉の復興」(22.1%、2,370社)、「被災者への金銭的補償(弔慰金、医療費など)」(20.5%、2,199社)、「ソフト面での災害に強い社会システム構築(減災・防災教育など)」(18.7%、2,010社)、「復興を支える人材の育成」(12.2%、1,313社)、「震災に関する学術調査、災害の記録と伝承」(9.8%、1,051社)、「その他」(2.1%、230社)
注2:母数は有効回答企業1万746社


【参考1】 復興増税の開始時期 〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万746社


【参考2】 復興増税による業績への影響 〜 業界・業種別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万746社


【参考3】 復興増税による業績への影響 〜 地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万1,028社


【参考4】 復興政策において重要な施策 (複数回答) 〜 規模・業界別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万746社


【参考5】 復興政策において重要な施策 (複数回答) 〜 地域・都道府県別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万746社



【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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