2012 年度の賃金動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2012年1月特別企画 -

 

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2012年2月3日
株式会社帝国データバンク産業調査部

震災の影響があるなか、企業の37.5%が賃金改善を見込む

〜 賃金改善の理由「労働力の定着・確保」が最多、「業績拡大」も約5割。
一方で個人消費の縮小懸念高まる 〜


 厳しい雇用・所得環境が続くなか、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引き上げなど賃金改善の動向が注目されている。また、今後の景気動向にとって個人消費の行方が注視されており、その点からも2012年度の賃金動向に関心が集まっている。
 そこで帝国データバンクでは、2012年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。調査期間は2012年1月19日〜31日。調査対象は全国2万3,472社で、有効回答企業数は1万665社(回答率45.4%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し今回で7回目。

調査結果のポイント


2012年度の賃金改善、「ある」と見込む企業は37.5%で「ない」を上回る

 2012年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある(見込み含む)」と回答した企業は1万665社中4,002社、構成比37.5%となり、前回調査(2011年1月度)の2011年度見込み(同37.5%)と同水準となった。一方、「ない(見込み含む)」と回答した企業は同35.1%(3,741社)となり、賃金動向は厳しいながらも改善する企業が改善しない企業を2年連続で上回ると見込まれている。
 「ある(見込み含む)」を地域別にみると、『東北』(同42.4%、249社)と『近畿』(同40.4%、716社)が4 割を超えた。また、2011年度見込みと比べると『東北』が10.3ポイント増と大幅に上昇している(参考表参照)。
 業界別では、『農・林・水産』(同48.8%、20社)や『卸売』(同41.4%、1,359社)が4割を超えた。一方、『金融』(同19.7%、27社)は前回を4.7ポイント上回ったものの、最高の『農・林・水産』と比較すると29.1ポイント下回っている。
 企業からは、「ユーロ問題、円高などで企業業績は厳しく、賃金改善は全般に厳しい」(電気機械器具修理、香川県)といった声のほか、「減給になるとモチベーションの低下が心配」(樹脂板製品等加工、東京都)や「業績悪化時にカットした部分の回復」(内装工事、京都府)などの意見もみられた。
 2011年度実績では、賃金改善が「あった」企業は同50.5%(5,389社)と2010年度実績(同47.2%)から3.3ポイント上昇し、2008年度実績(同55.1%)以来3年ぶりに過半数に達した。東日本大震災など日本経済に未曾有の事態が生じたなかで、2011年度の賃金動向は改善傾向を示しており、2012年度についても大きく崩れる様子はみられない。


注:母数は有効回答企業数。2008年度見込みは1万49社、2008年度実績、2009年度見込みは1万822社、
2009年度実績、2010年度見込みは1万651社、2010年度実績、2011年度見込みは1万1,017社、
2011年度実績、2012年度見込みは1万665社


具体的内容、ベアを実施する企業が30.8%、賞与(一時金)は20.5%

 2012年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が1万665社中3,286社、構成比30.8%となり、「賞与(一時金)」は同20.5%(2,182社)となった。また、前回調査(2011年度見込み)と比べると、それぞれ、0.4ポイント、0.5ポイント低下した。
 リーマン・ショック後の世界同時不況による景気後退のなかで、2009年度見込みはベア、賞与(一時金)ともに大幅な下落を示した。2012年度はベア、賞与(一時金)とも前年度見込みをやや下回る見通しである。


注:母数は有効回答企業数
   2009年度は1万822社、2010年度は1万651社、2011年度は1万1,017社、2012年度は1万665社


賃金改善のない企業の約4割に東日本大震災が影響

 2012年度の賃金改善見込みの有無について、東日本大震災や原発事故、復興需要がどの程度の影響を与えているか尋ねたところ、賃金改善が「ある(見込み含む)」と回答した企業では4,002社中1,196社、構成比29.9%で東日本大震災が影響していた。また、原発事故は同22.1%(886社)、復興需要は同25.2%(1,007社)が「影響している」と認識している。
 一方、賃金改善が「ない(見込み含む)」企業3,741社では、東日本大震災は同39.4%(1,475社)、原発事故は同31.7%(1,187社)、復興需要は同15.4%(575 社)が「影響している」と回答している。とりわけ、東日本大震災については、約3割の企業が賃金改善に影響を与えていた一方、賃金改善を行わない企業でも4割近くが影響を受けている。東日本大震災は賃金改善への影響が企業間で分かれる結果となった。
 要因別にみると、「東日本大震災」では、『東北』で賃金改善が「ある」企業が同55.4%(138社)、「ない」企業が同59.6%(118社)と全体を大幅に上回った。『東北』においては、賃金改善の有無にかかわらず東日本大震災が賃金動向に大きな影響を与えていることが顕著に現れた。
 「原発事故」を賃金改善が「ない」企業についてみると、『東北』が同43.4%(86社)で最多となったほか、『北関東』(同42.7%、105社)も4割を超えた。「福島」に加えて「茨城」「栃木」「群馬」など放射性物質が多く検出された地域を中心に原発事故が賃金改善を行わない大きな要因となっていた。
 「復興需要」を賃金改善が「ある」企業についてみると、地域別では『東北』が同54.2%(135社)と半数を超えたほか、業界別では『建設』が同32.7%(143社)と3社に1社で復興需要が賃金改善の実施に影響を与えていた。
 総じて、東日本大震災や原発事故、復興需要は主に東日本において賃金改善の有無に対して大きな影響を与えている。



注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:表中の割合は賃金改善見込みへの要因として「大きく影響している」と「やや影響している」割合の合計
注3:母数は2012年度の賃金改善が「ある(見込み含む)」と回答した企業4,002社、「ない(見込み含む)」と回答した企業3,741社


賃金改善をする理由、「労働力の定着・確保」が最多、「業績拡大」も約5割に、
改善しない理由では「自社の業績低迷」が7割超

 賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「労働力の定着・確保」で4,002 社中2,332社、構成比58.3%(複数回答、以下同)となり、前回調査(同56.2%)から2.1ポイント上昇した。次いで、「自社の業績拡大」(同49.9%、1,996社)が多く約5割が業績拡大を挙げた。また、「同業他社の賃金動向」(同13.6%、543 社)、「物価動向」(同7.3%、292社)、最低賃金の改定」(同6.2%、247社)が続いている。
 一方、賃金改善が「ない」理由では、「自社の業績低迷」が3,741社中2,626社、構成比70.2%(複数回答、以下同)と4年連続で7割を超えたものの、前回調査(同73.8%)から3.6ポイント低下した。次いで、「同業他社の賃金動向」が同21.3%(798社)となり、約2割の企業が様子見の状況にある。さらに、「物価動向」は同17.6%(660社)となり前回調査(同15.7%)から1.9ポイント上昇した。また、「人的投資の増強」(同12.6%、470社)と「設備投資の増強」(同5.9%、221社)が4年ぶり(それぞれ2008年1月調査13.5%、5.6%)の水準に高まるなど、賃金水準を抑制して他の目的に振り分ける傾向が増した。
 具体的には、「定期昇給は実施するが、ベースアップについては厳しい」(男子服卸売、東京都)と指摘する意見がみられた一方で、賃金を改善するとした企業からは「終身雇用を旨とし、社員の安定した生活基盤を確保するためにベアおよび一時金の改善は必要不可欠」(産業用電気機器卸売、福岡県)、「各社員の生産性と付加価値の向上による評価」(パッケージソフト、新潟県)といった声も挙がった。
 前回調査(2011年度見込み)と比較して、2012年度見込みの賃金改善は「労働力の定着・確保」で実施する企業が6 割近くに達したほか「自社の業績拡大」も約5割となる一方で、減少傾向にあるものの「自社の業績低迷」を理由として実施しない企業が7割を超えている。厳しい経済環境のなかで企業業績を背景とした賃金改善の有無が依然として続いている様子がうかがえる。



注1:以下、「団塊世代の退職による人件費・労務費の減少」(5.8%、234社)、「非正社員の賃金改善に伴い、正社員の賃金も改善」(2.0%、82社)、「非正社員の賃金抑制に伴い、正社員の賃金を改善」(0.6%、25社)、「その他」(4.8%、192社)、「分からない」(1.0%、42社)
注2:2010年度見込み2010年1月調査。2011年度見込み2011年1月調査。2012年度見込み2012年1月調査
注3:母数は、賃金改善が「ある(見込み含む)」と回答した企業。2010年度3,388社、2011年度4,131社、2012年度4,002社



注1:以下、「設備投資の増強」(5.9%、221社)、「団塊世代の再雇用による人件費・労務費の増加」(4.3%、160社)、「ワークシェアリングの導入を検討」(2.1%、79社)、「非正社員の賃金抑制に伴い、正社員の賃金も抑制」(1.4%、52社)「非正社員の賃金改善に伴い、正社員の賃金を抑制」(0.8%、30社)、「その他」(3.4%、129社)、「分からない」(2.8%、103社)
注2:2010年度見込み2010年1月調査。2011年度見込み2011年1月調査。2012年度見込み2012年1月調査
注3:母数は、賃金改善が「ない(見込み含む)」と回答した企業。2010年度4,315社、2011年度3,942社、2012年度3,741社


非正社員の賃金改善、徐々に進むも厳しい賃金状況が続く

 非正社員の2012年度の賃金動向については、賃金改善が「ある(見込み含む)」と回答した企業は非正社員を雇用している企業8,483社中1,383社、構成比16.3%となった。一方、「ない(見込み含む)」と回答した企業は同50.1%(4,248社)と4年連続で5割を上回った。非正社員の賃金改善を実施する企業は徐々に増加しているが、前年と同様に厳しい賃金状況が続いている様子が浮き彫りとなった。
 企業からは、正社員と非正社員との賃金格差について、「労働関連制度を根底から見直さないかぎり、格差問題は解決しない」(専門サービス、東京都)など、労働慣行や法制度を変えないと格差是正は難しいとする意見のほか、「安定受注を見込めない以上、非正社員にて調整せざるを得ない」(印刷、鹿児島県)や「気持ちとしては格差を小さくしたいと思うが、現実的には資金が不足している」(専門サービス、東京都)、「基本的にすべての社員の正社員化を図っている」(一般管工事、埼玉県)といった声が挙がった。
 非正社員の賃金改善は非常にゆっくりと改善しつつあるものの厳しい状況が続いており、正社員との格差拡大が一段と進むことが懸念される。



注:母数は有効回答企業数のうち、「非正社員はいない」 との回答を除いた企業数。
2009年度は8,363社、2010年度は8,332社、2011年度は8,763社、2012年度は8,483社


労働条件に関する方針決定、再び雇用維持を重視する傾向

 2012年度の労働条件に関する方針決定における最大の焦点を尋ねたところ、1万665社中3,884社、構成比36.4%の企業で「賃金および雇用」が最も焦点になると回答し、賃金と雇用の両方を方針として考慮する企業が最多となった。また、「賃金」と回答した企業は同20.6%(2,200社)となり、前回(2011 年度)より3.5ポイント減少した。一方、「雇用」は同23.3%(2,486社)と前回より1.9ポイント増加しており、雇用維持が最大の課題となっていた2 年前ほどでないが、再び雇用を重視する傾向が現れている。
 リーマン・ショック後の雇用維持を第一とする状況から、賃金と雇用の両者を考慮に入れた労働条件の方針決定へと移行してきた企業の意識が201 年度も継続する可能性の高いことがうか がえる。



注:母数は、 2010年度1万651社、2011年度は1万1,017社、2012年度は1万665社


2012年度の個人消費、縮小懸念が3年ぶりに拡大

 東日本大震災や原発事故などは賃金動向に影響を及ぼしているものの、被害の少なかった企業では新たな取引先の拡大や復興需要の取り込みなどもあり、全体としてみると2012年度の賃金改善見込みは前年とほぼ同水準となった。
 賃金動向によっても左右される個人消費について尋ねたところ、2012年度は「拡大が期待される」と回答した企業は1万665社中626社、構成比5.9%であった。「横ばい」との回答は同39.2%(4,185社)となり、前回調査(同46.4%)から7.2ポイントの減少となった。一方、2年連続で減少していた「縮小が懸念される」は同46.0%(4,902社)と一転して増加に転じており、個人消費は縮小するという懸念が再び強まっている。2012年度の個人消費は、縮小を懸念する企業が再び増大する一方で、拡大を期待する企業は5.9%に過ぎず依然として厳しい見方が続いている。
 具体的には、「2012年度は個人消費が前年の節約疲れで少し上向く」(包装用品卸売、愛知県)と上向きを期待する声がある一方、「20代、30代の消費世代の賃金が良くないため、全体の個人消費が上昇しない」(農・林・水産、岐阜県)や「エコ関連の消費拡大は見込まれるが、低価格化や団塊世代の引退などによって総額として消費は縮小する」(内装工事、京都府)との声も聞かれた。また、「景気が好転していないなかで、消費税増税もしくは増税の方向性が明確になるだけで、個人消費は抑制される」(ソフト受託開発、石川県)など、経済状況と政策論議の不均衡が消費低迷をもたらすと懸念する意見も多い。
 個人消費の拡大期待は2008年度以降で最も多い。しかし、2011年12月2日に公布された東日本大震災に対する復興財源確保法で所得税や住民税が増税されるほか、社会保障と税の一体改革で消費税や相続税などの増税が盛り込まれるなど、個人の負担増要因が多く挙げられている。また、企業が震災などもありながら賃金改善への取り組み姿勢を大きく崩していないなかで、「無駄を省いてその原資を労働者の賃金や雇用に回している企業に対して、国は税務や財政、助成金等にて支援する必要がある」(宝石・貴金属製品卸売、東京都)や「企業の業績が上向くような景気対策をすれば、必然的に雇用、賃金改善、消費増、税収増につながるはず」(印刷、東京都)といった意見も挙がっており、賃金や雇用の改善に向けて取り組む誘因をもたらす環境を整えることが重要である。



注1:「分からない」は、2009年度見通し4.7%(506社)、2010年度見通し7.1%(755社)、2011年度見通し8.5%(932社)、2012年度見通し8.9%(952社)
注2:母数は有効回答企業数。2009年度見通しは1万822社、2010年度見通しは1万651社、2011年度見通しは1万1,017社、2012年度見通しは1万665社


【参考】 賃金改善(2012年度) 〜 規模・業界・地域別 〜


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万665社


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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