アベノミクスに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2013年5月特別企画 -

 

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2013年6月13日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の42.3%がアベノミクスで国内景気を押し上げと実感

〜 一方、自社業績にプラス影響は21.3%。
政府には「財政の健全化」を求める 〜


はじめに

 2012年12月に発足した安倍政権は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」による経済政策を三本の矢として掲げ、金融緩和や緊急経済対策などを実施している。同時に、日本経済再生本部の産業競争力会議において成長戦略も議論され、また7月の参議院選挙を控え、各党においてもさまざまな政策の議論が行われている。
 このような背景を踏まえ、帝国データバンクは、安倍政権の経済政策(アベノミクス)に対する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2013年5月調査とともに行った。

調査期間:2013年5月21日〜5月31日。
調査対象は全国2万2,910社で、有効回答企業数は1万145社(回答率44.3%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. アベノミクスにより国内景気が押し上げられていると「感じている」企業は42.3%。一方、「感じていない」企業は34.3%あり、規模の小さい企業ほど景気浮揚効果を感じていない。
  2. 現時点で、アベノミクスから自社業績に「プラスの影響」を受けている企業は21.3%あるが、「マイナスの影響」も14.2%ある。中小企業や生活必需品の売り上げ拡大には至っていない。
  3. 期待する政策、約5割の企業が「財政の健全化」を期待、中長期的な財政再建の工程を明示する必要がある。また、デフレ・円高対策、雇用、エネルギーなど幅広い政策課題が挙がった。
  4. 成長戦略では、半数以上の企業が「環境・エネルギー」分野に期待。「介護・医療・健康」「農林水産業」「雇用関連」分野も3割前後が注目している。
  5. 現在、消費増税前の駆け込み需要が生じているのは全体の4.1%で、「建設」「不動産」が中心。

1.  アベノミクスの景気押し上げ、「感じている」企業は42.3%だが、「感じていない」も3割超

 現状の国内景気が安倍政権の経済政策(アベノミクス)により押し上げられていると感じるか尋ねたところ、「感じている」と回答した企業(「大いに感じている」「やや感じている」の合計)は1 万145 社中4,295 社、構成比42.3%となった。とりわけ、『不動産』(53.7%)と『サービス』(50.0%)は半数以上が感じていた。また、『農・林・水産』(28.6%)が2 割台にとどまっており、アベノミクスによる景気浮揚効果に対する認識は業界間で大きく異なる。
 他方、「感じていない」企業(「あまり感じていない」「まったく感じていない」の合計)は34.3%となり、3 社に1 社はアベノミクスにより景気が押し上げられているとは考えていない。特に、規模別では、「大企業」が25.5%だったのに対して、「中小企業」は36.9%となった。とりわけ、「小規模企業」は39.2%となり、「大企業」より13.7 ポイント高く、規模の小さい企業になるほど、アベノミクスによる景気浮揚効果を感じていない。
 国内景気の押し上げを「感じている」企業からは、「円安で海外観光客が増加している」(旅館・ホテル、北海道)や「円安により海外投資家の意欲が活発になっている」(不動産、東京都)、「日銀の大胆な金融緩和に端を発した円安・株高で世間の空気は変わってきた」(ソフト受託開発、東京都)といった、金融緩和政策で生じた円安・株高による実需やマインドの改善を指摘する企業は多い。
 他方、「感じていない」企業からは、「現時点においては金融大改革による円安・株高は大企業・高所得者にプラス効果があり、特に零細企業・低所得者にマイナス効果が出ている。日本の産業構造のうち、零細企業の状態が良くならないと全体の景気上昇には繋がらないし雇用増にも繋がらない」(繊維製品製造、大阪府)や「世の中がアベノミクスで景気が良いといわれるほど地方に恩恵は来ていない」(飲食料品卸売、福島県)など、大企業や都市部、富裕層への恩恵が大きく、中小・零細企業や地方にアベノミクスの効果は浸透していないとする声が多かった。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万145社。


2. アベノミクスの業績への影響、「プラス影響」が21.3%、「マイナス影響」も14.2%に

 現時点において、アベノミクスが自社の業績にどのような影響を及ぼしているか尋ねたところ、「プラスの影響がある」と回答した企業は21.3%となった。他方、「マイナスの影響がある」は14.2%で、プラスの影響がある企業より少なかった。また、「これまでと変わらない」は51.4%となり、半数超の企業は、5月時点でアベノミクスによる自社業績への影響を受けていない。
 業界別にみると、「プラスの影響がある」では、『不動産』が32.8%で最も高かったほか、『建設』(28.3%)、『金融』(28.0%)、『サービス』(24.0%)などが2割を上回った。逆に、「マイナスの影響がある」では、『農・林・水産』(23.8%)と『運輸・倉庫』(22.3%)が2割超となった。
 企業からは、「土木建設業界に限っては、仕事量が大変増加している」(建設、新潟県)や「お客様の購入マインドが上昇してきている」(不動産、東京都)、「見積依頼が増え、顧客側の投資意欲が高まっていることを感じる」(ソフト受託開発、静岡県)といった声が挙がった。しかし、「大企業や輸出企業には良いが、国内のみの市場である中小企業には今のところ良い影響はない」(貨物運送、大阪府)や「消費者の食料品、身の回り品まで影響を及ぼしているとは考えにくい」(スーパー、福岡県)など、中小企業や生活必需品関連企業の業績が改善するまでには至っていない。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万145社。

3. 期待する政策、「財政の健全化」が約5割で最多、「デフレ・円高」「雇用」対策も3割超

 政府に期待する政策を尋ねたところ、「財政の健全化」が47.4%(複数回答、以下同)と半数近くに達し、最多となった。次いで、「デフレ・円高対策」(32.8%)、「雇用政策」(31.0%)が3割を超えたほか、「環境・エネルギー政策」(29.1%)、「規制緩和」(27.4%)などが続いた。
 回答企業からは、「最重要課題は財政の健全化の道筋を明確に設けること」(繊維製品製造、大阪府)や「産業復興・経済優先。企業が元気になれば勤め人の所得が増え、国は法人税や所得税の税収が増え、財政の立て直しが図れる」(産業用電気機器卸売、東京都)など、アベノミクスに財政再建に向けた第四の矢を求める声が挙がった。また、「少子高齢化社会での雇用対策は急務であり、低所得者問題、年金問題など財政再建、デフレ克服のためにも、若年層、高齢者の雇用を促進することが重要」(不動産代理、宮城県)や「円安による輸入原材料高・エネルギー単価の上昇が今期の業績を左右する」(化学品製造、奈良県)といった、デフレ、雇用、エネルギーなど山積する幅広い問題を政策課題として政府に期待する意見も多かった。


注1:以下、「事業承継支援」(11.1%、1,122社)、「地方分権の推進」(10.6%、
1,072社)、「販路開拓支援」(9.7%、983社)、「海外展開支援」(7.7%、782社)、
「創業・ベンチャー支援」(7.3%、741社)、「その他」(4.3%、432社)、
「特にない」(3.3%、332社)
注2:母数は有効回答企業1万145社


4. 成長戦略、「環境・エネルギー」分野が最多、「介護・医療・健康」「農林水産業」に注目

 現在、日本経済再生本部の産業競争力会議で新たな成長戦略が議論されているが、政府が取り組む成長戦略においてどのような分野に期待するか尋ねたところ、「環境・エネルギー」分野が55.3%(複数回答、以下同)で最多となった。東日本大震災後の原発事故などの影響もあり、環境・エネルギー分野を半数以上の企業が成長戦略として期待していた。次いで、「介護・医療・健康」(35.9%)、「農林水産業」(28.5%)、「雇用関連(高齢者や女性、若者の活用等)」(28.3%)、「規制改革」(26.6%)が上位に挙がった。
 企業からは、「原油以外の代替エネルギー開発に集中投資すべき」(和洋紙卸売、東京都)や「農業関連の規制緩和を望む」(飲食料品卸売、石川県)、「女性が働きやすくするため託児所を民間の個人、会社が参入し易く条件を緩和する」(一般貨物自動車運送、山口県)、「若者をドンドン国外と交流させられるような支援など、次世代を担う者たちに、今までの世代とは違う教育環境が必要」(ソフト受託開発、大阪府)、「従来からの観光地や日本の四季、文化遺産等の観光資源だけでなく、アニメ等のコンテンツは外交戦略的にも日本ファンの外国人を増やすためにもとても意味がある」(ソフト受託開発、大阪府)といった声が挙がった。


注1:1:以下、「イノベーション関連政策」(13.2%、1,335社)、「IT関連政策」(12.2%、
1,240社)、「地球温暖化対策」(11.9%、1,210社)、「インフラ輸出戦略の推進」(10.7%、
1,081社)、「クールジャパンの推進」(6.8%、692社)、「その他」(3.0%、 305社)
注2:母数は有効回答企業1万145社


5. 駆け込み需要、「すでにある」企業は4.1%だが、「今後出てくる」と考える企業は38.1%

 2014年4月に消費税率が現行の5%から8%に、2015年10月に10%へと引き上げられることが予定されているが、自社の事業において、現在、駆け込み需要と思われる需要の変化がみられるか尋ねたところ、「すでに駆け込み需要がある」と回答した企業は4.1%となった。業界別にみると、『建設』と『不動産』がともに12.7%で最も高く、『農・林・水産』(7.1%)が全体を上回った。
 企業からは、「消費税の駆け込み受注は必ずあるが、1年から2年先まで受注する事になるので、落ち込みもその分大きくなることが予想される」(建設、栃木県)や「住宅業界においては、消費増税の駆け込み需要後の対処が重要」(建設、香川県)、「不動産や耐久消費財などの駆け込み需要は大きく見込まれるが、その他の一般消費の駆け込み需要はたいして大きくはない」(婦人・子供服卸売、愛知県)とあるように、駆け込み需要は建設や不動産、農林水産など特定の業界で現れているものの、多くの業界では顕在化していない。一方で、すでに現れている業界であっても、駆け込み後の需要の反動減を懸念している企業は多い。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万145社。


まとめ

 政府と日銀は“異次元”金融緩和や緊急経済対策など、拡張的な財政金融政策を矢継ぎ早に実施している。それにより、株価や為替レートなど金融市場が大きく変動したものの、5月中は円安・株高が続き、企業の景況感や消費マインドも改善してきた。さらに、民間投資を喚起する成長戦略の素案が公表され、7月の参議院選挙を前に経済政策論議が活発である。
 しかし、現状では、アベノミクスによる国内景気の押し上げ効果を実感しているのは、大企業や恩恵を受けやすい業界が中心となっている。さらに、自社業績への影響となると、プラスの影響を受けている企業は全体の21%、マイナスの影響は14%で、半数以上の企業はこれまでと変わりない。特に、円安による輸入品や燃料の価格高騰が収益を圧迫する要因となっている企業も多い。また、消費税率の引き上げを前に、建設や不動産など駆け込み需要がすでに発生している業界もあるが、現状では一部にとどまっている。
 他方、企業は第四の矢として政府に財政の健全化を求めていることも明らかとなった。6月6日に公表された経済財政諮問会議の「骨太方針(仮称)」(素案)では2020年度までにプライマリーバランスを黒字化することを掲げているが、その実現に向けたプロセスが企業マインドを持続的に改善させる一因となる。
 アベノミクスの第一の矢(大胆な金融政策)と第二の矢(機動的な財政政策)はすでに放たれたが、第三の矢(民間投資を喚起する成長戦略)はこれからが本番である。デフレ脱却と景気回復をもたらし、企業業績を回復させる好循環を促すために、中小企業や地方経済にも配慮したきめ細かい政策の実施が望まれる


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万2,910社、有効回答企業1万145社、回答率44.3%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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