事業承継に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2013年6月特別企画 -

 

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2013年7月11日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の8割超が事業承継を経営問題と認識

〜 一方で、6割超の企業が事業承継への取り組みなし 〜


はじめに

 中小企業は、企業数で全体の9割以上に達し、また雇用では7割を占めているなか、永続的に企業を存続・発展させ、技術・暖簾(のれん)を後の世代に伝えていくことは中小企業の厚みを増し、日本経済が継続的に発展を続けていくためにも必要不可欠である。一方で、経営者の高齢化や後継者難となる場合も多く、事業承継は重要な問題と認識され、政府の日本再興戦略(成長戦略)や骨太方針においても、円滑な事業承継について取り組む方針が打ち出されている。
 このような背景を踏まえ、帝国データバンクは、事業承継に関する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2013年6月調査とともに行った。

調査期間:2013年6月18日〜6月30日
調査対象は全国2万2,750社で、有効回答企業数は1万157社(回答率44.6%)
分析対象は回答者の役職として代表権を持つ企業4,196社とした。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 事業承継を「最優先の経営問題」と捉えている企業は23.3%。「経営問題のひとつ」(63.0%)と合わせると、企業の86.3%が事業承継を経営問題として捉えている。
  2. しかし、事業承継を進めるための計画については、「計画はない」が30.0%、「計画はあるが、まだ進めていない」が32.4%となり、6割超の企業が事業承継への取り組みを行っていない。「計画があり、進めている」は27.6%にとどまる。
  3. 「事業承継計画を進めていない/計画がない」理由として、「まだ事業を譲る予定がない」が半数近くに達する。事業の将来性への不安や借入に際しての個人保証も上位に挙がった。
  4. 事業承継で苦労することは「後継者育成」が約6割で最多。「従業員の理解」が約3割で第2位。
  5. すでに事業承継を終えた企業で、良かった点として、「従業員の経営参加や権限委譲」「仕事の効率アップ」「従業員の士気向上」「業績の改善」が上位に。

1. 事業承継、企業の8割超が経営問題として認識

 経営を行うなかで事業承継をどのように考えているか尋ねたところ、「経営問題のひとつと認識している」と回答した企業は4,196社中2,643社、構成比63.0%で最多となった。さらに、「最優先の経営問題と認識している」企業は23.3%となり、両者を合計すると86.3%が事業承継を経営問題として捉えていることが明らかとなった。
 事業承継に対する考え方を規模別にみると、「最優先の経営問題と認識している」は「大企業」が26.9%、「中小企業」が23.0%、「小規模企業」が18.9%となっており、規模の大きい企業ほど事業承継を経営問題として認識している。
 他方、「経営問題として認識していない」企業は9.1%にとどまった。しかし、規模別では、「大企業」が5.6%だったのに対して、「中小企業」は9.4%となった。とりわけ、「小規模企業」は12.2%となり、「大企業」より6.6ポイント高く、小規模企業ほど事業承継を経営問題として認識していない様子がうかがえる。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業4,196社。


2. 企業の3割が事業承継の計画を持たず

 自社に事業承継を進めるための計画があるかどうか尋ねたところ、「計画があり、進めている」と回答した企業は27.6%となり、4社に1社が事業承継の計画を進めていた。他方、「計画はあるが、まだ進めていない」は32.4%で最多となった。また、「計画はない」と回答した企業も30.0%となり、3割の企業が事業承継計画を持っていなかった。
 特に、企業規模による事業承継計画の遂行状況の差は大きい。事業承継の「計画があり、進め ている」とする企業は、「大企業」が35.4%となっているのに対して、「中小企業」は27.0%だった。さらに「小規模企業」では20.7%にとどまり、「大企業」と比較して14.7ポイント低い。また、「大企業」で「計画はない」と回答したのは22.6%にとどまる一方、「小規模企業」では37.0%と「大企業」を14.4ポイント上回った。規模の小さい企業ほど事業承継のための計画を整備していない。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業4,196社。

3. 事業承継を進めていない理由、「まだ事業を譲る予定がない」が最多

 事業承継の「計画はあるが、まだ進めていない」または「計画はない」と回答した企業2,619社に対して、その理由を尋ねたところ、「まだ事業を譲る予定がない」が46.8%(複数回答、以下同)と半数近くに達し、最多となった。次いで、「事業の将来性に不安がある」(28.6%)、「任せられる人がいない」(25.3%)、「借入に際しての個人保証がある」(24.2%)が2割を超えたほか、「自社株など個人資産の取扱い」(17.0%)、「何から手をつけていいか分からない」(10.0%)、「相続税・贈与税などの税金対策」(10.0%)などが続いた。
 企業からは、「タイミングをはかっており、いちばん良い時期を模索している」(ソフト受託開発、東京都)や「経営状況が厳しい状況にあり、まず会社を再生し盤石の基礎を造ることが最優先」(工業用樹脂製品製造、長野県)、「後継者としたい人物はいるが適任か否か判断がつかない。教育をしながら適否を判断するつもり」(飲食料品卸売、栃木県)、「事業継承でなく、同業他社との事業の統合などを模索中」(飲食料品卸売、長野県)といった声が挙がった。


注:母数は、事業承継の「計画はあるが、進めていない」または「計画はない」企業2,619社


4. 企業の6割超が「後継者育成」で苦労

 事業承継の「計画があり、進めている」または「すでに事業承継を終えている」と回答した企業1,432社に対して、事業承継を進めるうえで苦労した(している)ことを尋ねたところ、「後継者育成」が61.9%(複数回答、以下同)と6割超に達し、突出して高かった。次いで、「従業員の理解」(33.3%)、「事業の将来性・魅力」(30.7%)、「自社株など個人資産の取扱い」(30.0%)が3割台となった。さらに、「相続税・贈与税などの税金対策」(27.8%)、「後継者への権限の移譲」(25.7%)、「事業承継に必要な知識の収集・習得」(23.7%)、「承継前の経営者の個人保証や担保」(20.6%)などが続いた。
 実際に事業承継に取り組んだ企業からは、「今までの事業の見直しと新規事業への取り組み手段を明確にし、時間軸の中で到達目標をはっきりさせることが重要」(家具・建具卸売、岡山県)や「多額の借入があり、後継者に引き継ぐ前に、経営の改善を図り、有利子負債を減らす努力をしている」(寝具類卸売、兵庫県)、「利益を出せば出すほど事業継承が難しくなる」(人材派遣、栃木県)など、経営改善を図りつつ、後継者を育成するといった声が挙がった。


注1:以下、「取引先の理解」(15.7%、225社)、「経営陣の理解」(15.0%、215社)
「承継に必要な資金の確保」(14.1%、202社)、「親族・株主の理解」(12.2%、174社)
「先代経営者の影響力」(9.0%、129社)、「事業承継の相談相手」(8.4%、120社)
「グループ企業との関係」(7.1%、101社)、「後継者の配偶者の理解」(6.2%、89社)
「事前の情報漏洩」(1.6%、23社)、「その他」(3.1%、45社)
注2:母数は、事業承継の「計画があり、進めている」または「すでに事業承継を終えている」企業1,432社


5. 事業承継を実施して良かった点、「従業員の経営参加や権限委譲」「効率アップ」「従業員の士気向上」「業績改善」が上位を占める

 「すでに事業承継を終えている」と回答した企業274社に対して、事業承継を実施したことで良かった点について尋ねたところ、「従業員の経営参加や権限委譲を進めることができた」が30.3%(複数回答、以下同)で最多となった。次いで、「仕事の効率が上がった」(29.9%)、「従業員の士気が上がった」(28.5%)、「業績が良くなった」(28.5%)、「新たな顧客層を開拓できた」(26.3%)、「新たな経営理念を確立できた」(26.3%)などが続いた。
 企業からは、「新体制に協力しようと全社員の士気が向上した」(配管冷暖房装置等卸売、東京都)や「風通しが良くなった」(金物類製造、新潟県)、「未来に目を向けることができる」(ソフト受託開発、群馬県)、「金融機関の信用が増した」(機械同部品製造修理、愛媛県)とあるように、業績や組織へのプラス効果を挙げる企業が多かった。また、「承継はできたが、全従業員の理解を得るために少し時間が必要」(電気計測器製造、埼玉県)といった、プラス効果を生み出すためには従業員の理解を深めることの重要さを指摘する声もあった。


注1:以下、「不採算部門などを整理できた」(12.4%、34社)、「商品・サービスの生産方法や
販売方法を新たに開発できた」(11.3%、31社)、「新部門や子会社等を立ち上げることができた」
(7.7%、21社)、「個人資産と事業資産を分けることができた」(6.9%、19社)、「その他」(5.5%、15社)
注2:母数は、「すでに事業承継を終えている」企業274社


6. 円滑な事業承継、企業の65.4%が「経営状況・課題を正しく認識」することが必要と認識

 後継者が事業承継を円滑に行うためにどのようなことが必要と思うか尋ねたところ、「経営状況・課題を正しく認識」が4,196社中2,744社、構成比65.4%(複数回答、以下同)で3社に2社が挙げ最多となった。次いで、「事業の将来性、魅力の維持」(46.1%)、「今後の経営ビジョンを持つこと」(45.5%)、「社内での業務経験」(42.1%)、「事業承継の目的の明確化」(40.0%)が4割台で続いた。
 企業からは、「企業理念、社是の理解とその具現化へのアプローチ手法の整合性の確認」(ビルメンテナンス、広島県)や「事業内容は、時代環境に合わせて変わり得るため、経営理念、企業文化の継承こそ重要」(家具・建具卸売、京都府)など、経営状況や経営理念を継承することの重要性を指摘する声が多く挙がった。また、「これからは経営と資本を別に考えることが必要」(一般貨物自動車運送、三重県)や「未上場株式の評価額算出をゼロまたは低評価で良いようにルールを代えてほしい」(内航船舶貸渡、大分県)といった、事業承継を行いやすくなるような税制の見直しを求める声もあった。


注1:以下、「先代と密接なコミュニケーションを図る」(18.3%、769社)、「法務面や税務面など
信頼できる専門家を見つけて相談」(12.0%、505社)、「教育機関などでの勉強」(11.8%、497社)
「外部機関のサポート」(6.0%、252社)、「その他」(2.3%、98社)、「特にない」(1.6%、66社)
注2:母数は有効回答企業4,196社


まとめ

 社長の高齢化や後継者難を背景に問題となっている事業承継は、8割を超える企業が経営問題として認識している一方で、6割超の企業が準備に取り組んでいない。このうち、事業承継のための計画を持たない企業も3割に達する。その理由としては、「まだ事業を譲る予定がない」、「事業の将来性に不安がある」、「任せられる人がいない」などが挙げられた。
 実際に事業承継の準備に取り組むなかでは、「後継者育成」、「従業員の理解」、「事業の将来性・魅力」、「自社株など個人資産の取扱い」などが乗り越えるべき主な課題である。
 しかし、事業承継を行うと、3割の企業が「従業員の経営参加や権限委譲を進めることができた」、「仕事の効率が上がった」、「従業員の士気が上がった」、「業績が良くなった」などの業績・組織へのプラス効果があったと回答した。
 事業承継は、中小企業の厚みを増し、日本経済が持続的に発展するために重要である。また、 事業承継は喫緊の課題であると同時に、準備から承継まで5〜10 年程度かかるため事業への影響は大きく、取り組めばプラス効果も多い。そのため、事業承継は重要な経営問題であるとの認識のもと、早期かつ計画的な準備を行い、社長と後継者が二人三脚となって取り組むとともに、従業員の理解を得て進めることが肝要である。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万2,750社、有効回答企業1万157社、回答率44.6%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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