法人課税の実効税率に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2013年9月特別企画 -

 

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2013年10月15日
株式会社帝国データバンク産業調査部

法人実効税率、企業の3社に2社が「引き下げるべき」

〜 引き下げ分は5割の企業が人員増強や設備投資など積極的な使い道を想定 〜


はじめに

 東日本大震災以降、復興増税など増税が相次ぐなか、法人税減税は安倍政権が国会提出を予定している成長戦略第二弾の目玉政策となっている。現在、主要国の法人所得課税の実効税率が20%台となっているなか、日本の法人実効税率は世界的にも高く、国内投資が少ない要因になっていると同時に、企業の海外移転の理由の1つともいわれる。また、法人実効税率の見直しは、日本の企業の競争力強化や雇用の確保などにおいて議論が行われている。
 このような背景を踏まえ、帝国データバンクは、法人課税の実効税率等に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2013年9月調査とともに行った。なお、法人課税の実効税率に関する調査は2010年7月に続き2回目。

調査期間:2013年9月17日〜30日
調査対象は全国2万2,733社で、有効回答企業数は1万826社(回答率47.6%)
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 法人課税の実効税率、企業の66.6%が「引き下げるべき」と回答。特に、大企業よりも中小企業で引き下げを求める企業が多い。
  2. 実効税率の引き下げ分の使い道として、雇用や給与など「人的投資」が28.5%、設備投資や研究開発など「資本投資」が21.0%となり、合わせて半数の企業が積極的な投資に使うことを想定している。一方、5社に1社が「内部留保」として自社内にとどめると回答。
  3. 優先的に見直して欲しいと考える税項目は、法人税が55.9%で最多。他方、中小企業では「固定資産税」など利益の有無にかかわらず徴収される税項目を挙げる企業も多い。
  4. 現在の実効税率が続いた場合、企業の競争力に「悪影響がある」と考える企業は50.5%。とりわけ、『不動産』(54.2%)と『製造』(56.8%)で高い。
    さらに、企業の3社に1社が雇用に、4割以上が設備投資に「マイナスの影響」を与えると考
    えている。

1. 法人実効税率、企業の3社に2社が「引き下げるべき」

 法人課税の実効税率について引き下げの是非を尋ねたところ、「引き下げるべき」と回答した企業が1万826社中7,205社、構成比66.6%となり、3社に2社が実効税率の引き下げを求めていた。他方、「引き下げるべきではない」は12.0%で1割程度となった。
 「引き下げるべき」を規模別にみると、「大企業」が64.9%だったのに対し、「中小企業」は67.0%と「大企業」を2.1ポイント上回り、わずかであるが中小企業で実効税率引き下げを求める割合が高い。業界別では、『不動産』が73.6%で最も高く、次いで『運輸・倉庫』(70.2%)、『製造』(68.6%)、『卸売』(66.7%)の順となった。
 前回調査(2010年7月調査)と比較すると、「(法人課税の税率は)引き下げるべき」は4.8ポイント減少した(前回71.4%)。特に、規模が小さくなるほどその傾向は強く、「小規模企業」が7.7ポイント減(前回72.4%)、「中小企業」が5.7ポイント減(前回72.7%)、「大企業」が2.2ポイント減(同67.1%)となった。
 企業からは、「実効税率を引き下げないと外資系の撤退に歯止めがかからず、一層の税収の落ち込みが懸念される」(配管冷暖房装置等卸売、東京都)や「あまりにも法人の負担が大きすぎる。健全な経済成長のために、法人税率の引き下げは早急に行われるべき」(圧縮・液体ガス卸売、香川県)など、早急な引き下げを求める意見は多い。一方、「減税に伴う財政収支のアンバランス(子孫に負債を残す)を熟慮すべき」(めん類製造、宮城県)や「法人税引下げよりも低所得者の税負担を軽減する方が景気対策には良いのではないか」(印刷、山形県)といった、財政状況や効果を踏まえると引き下げるべきではないという声も挙がった。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万826社


2. 実効税率引き下げ分の使い道、約5割の企業が人的・資本投資などを想定

 法人課税の実効税率が引き下げられた場合、引き下げ分の使い道について、現段階で最も可能性が高い項目を尋ねたところ、「内部留保」が22.8%で最も高かった。5社に1社は実効税率の引き下げ分を自社内にとどめておくという結果となった。人的投資に対しては、「社員に還元(給与や賞与の増額など)」(16.1%)や「人員の増強」(12.4%)となり、合わせて28.5%と3割近くにのぼった。また、「設備投資の増強」(16.2%)と「研究開発投資の拡大」(4.8%)を合わせると21.0%が資本投資に使用すると回答した。「人的投資」と「資本投資」を合計すると49.5%となり、約半数の企業が積極的な投資に充てると考えている。
 規模別にみると、「人的投資」は、「大企業」(26.8%)より「中小企業」(29.0%)が2.2ポイント高く、「中小企業」ほど社員への還元や人員拡大など人的投資に振り向ける傾向があった。しかし、「借入金の返済」では、「中小企業」(15.3%)の方が「大企業」(11.9%)を3.4ポイント上回っており、実効税率引き下げ分の使い道として債務の削減をはかる傾向が強い。
 業界別にみると、「人的投資」は『建設』(38.7%)や『サービス』(34.8%)、『卸売』(32.3%)が高く、「資本投資」は『製造』(34.1%)が高い。「人的投資」と「資本投資」を合計した「積極投資」では、『製造』(53.3%)、『サービス』(52.1%)、『建設』(52.0%)の3業界が5割を上回った。
 前回調査(2010年7月調査)と比較すると、積極投資を行う企業は7.4ポイント増加しており (前回42.1%)、とりわけ「人員の増強」(前回8.4%、4.0ポイント増)と「設備投資の増強」(同12.7%、3.5ポイント増)に充てると考える企業が増加している。
 企業からは、「減税分は雇用や従業員へ回すことを優先する。内部保留は考えない方が長期的に良い」(宝石・貴金属製品小売、東京都)や「より競争力を向上させるために、新製品の研究開発を推進」(電気機械製造、長野県)、「2020年の東京五輪も決まり、アベノミクス効果とともに内需拡大が期待できる今が設備投資のチャンスと考える」(半導体製造装置製造、福岡県)など、減税分を社員や設備投資など攻めの姿勢で使うという声が挙がった。しかし、「企業が適正な内部留保を行っていないと、突発的な景気変動に対応できない」(精密機械製造、茨城県)や「リーマン・ショックや東日本大震災で失った財務体力を少しでも取り戻す」(一般貨物自動車運送、滋賀県)といった内部留保に回さざるを得ない状況にあることを指摘する意見もあった。


注:母数は有効回答企業業1万826社

注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:「その他」は1.3%、「分からない」は10.3%
注3:母数は有効回答企業1万826社


3. 優先的に見直して欲しい税項目、「法人税」が最多、中小企業では「固定資産税」も高い

 法人課税のうち最も優先的に見直して欲しい税項目を尋ねたところ、「法人税」が55.9%で最多となり、半数超の企業が法人税の見直しを求めていた。また、「法人住民税」(2.4%)と「法人事業税」(9.1%)を含めて、実効税率に該当する法人3税が67.4%となり、3社に2社が法人課税のなかでも法人実効税率の税項目を見直して欲しいと考えている実態が明らかとなった。
 半数超を占めた法人税について、企業からは「どの企業にとっても法人税負担を頭に入れて動いており、軽くなれば企業の投資活動が活発になるのではないか」(各種商品卸売、岩手県)や「国内消費は頭打ちになっているなか、技術力で世界の強豪と鎬を削っているがどの国よりも高い法人税が足かせとなり戦えなくなってくる」(配管冷暖房装置等卸売、福島県)など、高い法人税が投資活動や海外企業との競争で不利になることを指摘する企業は多い。しかし、「法人税を支払っている企業が3割しかない現状で、どこまで影響があるのかわからないが、弊社としてはぜひ下げてほしい」(通信付帯サービス、東京都)や「そもそも法人税をまともに払っている企業は少なく、法人税減税の恩恵をこうむるのは一部の大企業にすぎない」(飲食料品・飼料製造、石川県)といった、法人税を納めている企業の少なさにより、法人税減税の効果を疑問視する意見もあった。
 また、他の税項目として「固定資産税も、企業設備投資の足かせ。実質的には、設備投資に加算される設備費用の一部となっている」(動力伝導装置製造、東京都)や「税金の中で中小企業にとって最も負担となっているのは固定資産税。モノづくり企業や旅館・ホテルなどは、高額な固定資産税のために黒字化できず、新たな設備投資もできず、融資も受けられず、雇用も拡大できず、技術ノウハウは海外に流出し、ますます日本は競争力を失っていく」(経営コンサルタント、大阪府)など、利益の有無にかかわらずかかる固定資産税などの負担を訴える企業も多く、特に中小企業は優先的に見直しを求めている。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:「その他の税」の内訳は、「事業所税」(4.1%)、「固定資産税」(10.5%)、「都市計画税」(0.4%)
「その他」(1.3%)
注3:母数は有効回答企業1万826社


4. 高い実効税率、企業の50.5%が競争力に「悪影響がある」と回答

 現在の法人課税負担が継続する場合、企業の競争力にどのような影響を与えるか尋ねたところ、「競争力にある程度はマイナスの影響を与える」と回答した企業が42.3%となった。また、「競争力に深刻な影響を与える」も8.2%と1割近くが強い懸念を感じており、合計すると企業の50.5%が現状の法人課税では競争力に悪影響があると考えていることが明らかとなった。
 規模別にみると、「競争力に深刻な影響を与える」とした「大企業」は5.8%だったのに対して、「中小企業」は8.9%と3.1ポイント上回った。さらに、「小規模企業」は10.0%で「大企業」より4.2ポイント高く、規模の小さい企業ほど現在の法人課税が続くと自社の競争力にとって大きな負担になると危惧している。「競争力にある程度はマイナスの影響を与える」を合わせた競争力に悪影響があると考えている企業は「中小企業」が51.1%と半数を超えた。
 業界別では、「競争力に深刻な影響を与える」は『不動産』(14.8%)、「競争力にある程度はマイナスの影響を与える」は『製造』(46.8%)が最も高く、両業界では5割を超える企業が競争力に悪影響があると考えている(『製造』が56.8%、『不動産』が54.2%)。
 具体的には、「輸入自由化の下での国際競争力維持及び国内産業空洞化の歯止め、購買力の背景となる賃金上昇等の観点で(法人税を)欧米先進国並みの水準に下げることは必要であり、また貿易増加傾向のアジア諸国とのバランスも必要」(肥料・飼料卸売、東京都)や「海外、特に中国、韓国等と価格競争の厳しい企業が対等の競争力を保てる税制・環境にするべき」(一般貨物自動車運送、福岡県)など、企業の国際競争力を高め、さらに産業空洞化に対処するためにも他の主要国並の税率にすべきといった意見が多く挙がった。
 ただし、「企業競争力の強化は必要であるが、“減税”という手段によって実現させる問題ではない」(経営コンサルタント、東京都)といった指摘もあり、競争力を強化することが重要としつつも、実効税率によって解決すべき問題かどうかを疑問視する企業も少なからず見られた。


注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万826社。


5. 高い実効税率、雇用や設備投資を抑制する要因として挙げる企業が約4割

 現在の法人課税負担が継続する場合、雇用や設備投資にどのような影響があるか尋ねたところ、雇用については「影響はない」が41.9%で最多となった。しかし、「マイナスの影響」は36.8%に達しており、「プラスの影響」の1.7%を大きく上回った。他方、設備投資については、「マイナスの影響」が41.4%となり、「影響はない」(33.2%)を8.2ポイント上回った。現状の法人課税負担が続くと、企業の3社に1社が雇用に悪影響を与え、4割以上が設備投資に悪影響を与えると考えていることが明らかとなった。
 企業からは、「このまま高い法人課税が続けば、企業は皆海外へ工場を移管し国内の雇用を圧縮してしまい、雇用の空洞化が深刻になる」(自動車・同部品小売、愛知県)や「やはり心配なのは工場等の海外移転などにより、日本の雇用が減ってしまうこと」(情報提供サービス、東京都)、「雇用すると、会社が負担する費用も大きいため、一時的な税制改正だけではメリットが無い」(建設、山形県)など、高い法人課税によって企業の雇用状況に懸念を感じている様子がうかがえる。また、「企業に対する税負担が大きいため、大型の設備投資や企業買収における投資効果の観点から抑制せざるを得ない状況がある。また、新事業への投資などへも影響している」(情報処理サービス、東京都)や「法人税や事業所税など増税になればなるほど経営がやりづらくなり、人件費を確保しようとすると設備投資には回らず悪循環を強いられる」(建設、三重県)といった、設備投資を抑制する要因として挙げる企業も多い。


注:母数は有効回答企業1万826社


まとめ

 日本の実効税率は35.64%(復興特別法人税を含めると38.01%)であり、20%台を主流とする海外主要国と比べて高い税負担がかねてより指摘されてきた。特に、アメリカが連邦法人税を現行の35%から28%(製造業は25%)への引き下げを柱とする税制改革案を発表したことで、産業界からも競争力の喪失や国内産業の空洞化を懸念する意見が挙がっている。
 そのようななかで、企業の3社に2社が法人課税の実効税率引き下げを求めていることが明らかとなった。とりわけ、法人税の見直しを求める企業が約6割に達した。また、減税分の使い道では最も高い項目として、人員増強や給与や賞与を含む社員への還元といった人的投資に振り向ける企業が28.5%、設備投資や研究開発など資本投資に振り向ける企業が21.0%となり、約半数の企業が積極的な投資に使うとしている。しかし、利益に対して課税される法人税に対して、中小企業は固定資産税など事業を継続する資産を保有することで生じる税に負担感を抱えている。
 さらに、現状の実効税率が続いた場合、企業の半数が競争力に悪影響があると考えている。特に、製造業でその傾向が強く、国内から海外に移転する1つの要素となっていることが浮き彫りとなった。国内においても、雇用や設備投資に「マイナスの影響」と考える企業が約4割を占めており、企業は日本経済の基盤となる事項に危機感を覚えている様子もうかがえる。
 総じて、企業は税制や財政状況を勘案しても法人実効税率の引き下げを求めている。さらに減税分を積極的な投資に振り向けるという意識が高まってきているなかで、「海外と比較して国内の税制が魅力的なものになれば、国内投資や雇用も増え、法人税や個人所得税・消費税が増加して政府・自治体の収支も改善される」(セメント卸売、広島県)とあるように、税体系全体と合わせて今後の成長戦略を迅速に実施することで企業活動を活発にし、日本経済を持続的な成長軌道に乗せることができるであろう。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万2,733社、有効回答企業1万826社、回答率47.6%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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