2014年度の雇用動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年2月特別企画 -

 

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2014年3月13日
株式会社帝国データバンク産業調査部

正社員採用、4年連続で改善

〜 ただし、小規模企業ほど今後の雇用環境改善に厳しい見方 〜


はじめに

 地方圏が主導する形で景気の上昇基調が続き雇用・所得環境に明るさが垣間見えてきたなか、2014年1月の有効求人倍率は1.04倍と3カ月連続で1倍以上となっている(厚生労働省)。また、新規学卒者の就職内定率は2013年12月1日時点で76.6%(大卒)と3年連続で上昇し、景気回復による雇用環境の改善を示している(厚生労働省、文部科学省)。しかし一方で、地域間や業界間、社員・非正社員間などの雇用動向には依然として格差がみられる。
 このようななか、帝国データバンクは、2014年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2014年2月調査とともに行った。

調査期間:2014年2月18日〜28日
調査対象は全国2万2,862社で、有効回答企業数は1万544社(回答率46.1%)。
なお、雇用に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し、今回で10回目。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。


調査結果(要旨)

  1. 2014年度の正社員採用は「採用予定がある」が59.5%で前年比微増。4年連続で改善したものの、採用を増加させる企業は『建設』や『運輸・倉庫』『サービス』など一部の業界にとどまる。「採用予定はない」は30.6%と微減。公共事業や駆け込み需要への対応に加えて人手不足感が高まり雇用環境は改善しているものの、消費税増税後の景気に不透明感が感じられており、緩やかに改善するとみられる。
  2. 非正社員採用については、「採用予定がある」が47.7%となり、4年連続で改善した。特に、「採用予定はない」は2008年度以来6年ぶりに3割台まで減少しており、非正社員の採用状況は徐々に改善している。
  3. 雇用環境の改善時期は、今後3年以内に改善すると考える企業は3社に1社にとどまる。とりわけ、規模の小さい企業ほど長期的な改善を見込めない状況となっている。
  4. 自社が活用に注力している人材、「若者」が3社に1社で最多。「キャリア採用」「女性」が続く。

1. 2014年度の正社員採用、「予定あり」が約6割、4年連続で改善も一部業界にとどまる

 2014年度(2014年4月〜2015年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は1万544社中6,275社、構成比59.5%となった。2013年度(2013年2月調査)の56.9%と比べると2.6ポイント増となり、小幅ではあるものの4年連続で改善した。他方、「採用予定はない」は30.6%と4年連続で減少した。とりわけ、2013年度で「採用予定はない」と回答した企業のうち、約3割が2014年度に正社員の採用予定ありへと転換した。また、2013年度に「増加する」と回答した企業のうち7割が2014年度も採用を増加または維持するとしている。逆に、採用予定ありから採用予定なしへの転換は15%程度にとどまった。
 ただし、採用意欲が高いのは大企業や一部の業界にとどまっている。過去10年間で正社員採用が最も厳しかったリーマン・ショック後の2010年度は、中小企業にとって優秀な人材を確保する好機でもあり、採用増加を見込む中小企業は大企業を上回っていた。他方、2014年度は景気の上昇が続くなか、採用意欲は「大企業」のほか、「技術者の人手不足もあり、中途・新規とも採用している」(建設、高知県)など震災復興を含む公共事業の拡大による人手不足の高まりや、これまで採用を控えて

きたことで「若手社員が極端に少ない」(建設、広島県)といった年齢構成の是正を必要とする『建設』や『運輸・倉庫』など一部の業界で高くなっている(7ページ参考表1参照)。採用の拡大が多くの業界に広がりにくい背景として、「景気の先行きが読めない」(不動産、熊本県)といった消費税増税後の景気に不透明感を感じている企業も多く、正社員の採用を慎重になっていることも一因として挙げられる。
 総じてみると、正社員の採用予定ありとする企業は2010年度の43.4%から2014年度には59.5%へと着実に増加しており、正社員の雇用環境は緩やかに改善している。

  注1:「採用予定がある」は、「増加する(見込み含む)」「変わらない(見込み含む)」
     「減少する(見込み含む)」の合計
  注2:有効回答社数は、2010年度が1万624社、2011年度が1万990社、
     2012年度が1万711社、2013年度が1万338社、2014年度が1万544社

  注:母数は、2013年度および2014年度のいずれも回答した企業8,364社


2. 2014 年度の非正社員採用、「採用予定あり」が増加、4年連続で改善

 2014年度(2014年4月〜2015年3月入社)の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は47.7%となり、2013年度(2013年2月調査)から4.8ポイント増加した。リーマン・ショック後に非正社員を削減し、既存正社員の雇用確保を優先する傾向がみられたこともあり採用を予定している企業が最も少なかった2010年度(29.8%)以降、4年連続で改善しており、非正社員を採用する企業は5割近くまで回復してきた。とりわけ、「飲食店」や「各種商品小売」、「医薬品・日用雑貨品小売」などでは採用予定ありとする企業が8割を超えており、非正社員の人手が特に不足している業種で採用意欲が高い。
 他方、「採用予定はない」は39.3%で、2008年度(39.0%)以来6年ぶりに3割台まで減少した(7ページ参考表2参照)。非正社員の「採用予定はない」はピークだった2009年度(58.6%)と比較して20ポイント近く低下しているほか、「将来の正社員昇格の人材確保のためにも非正社員を増やしていく」(ガソリンスタンド、山形県)や「急な稼働などに備え対応する人員を確保するため」(一般貨物自動車運送、愛知県)といった意見もみられるなど、非正社員の雇用状況も徐々に改善している。


人手が不足している部門・役割(複数回答)

注1:「採用予定がある」は、「増加する(見込み含む)」「変わらない(見込み含む)」「減少する(見込み含む)」の合計
注2:有効回答社数は、2010年度が1万624社、2011年度が1万990社、2012年度が1万711社、2013年度が1万338社、2014年度が1万544社



3. 雇用の改善時期、今後「3年以内」と考える企業は3社に1社にとどまる

 自社の属する地域・業界の雇用環境が改善する時期はいつ頃になるか尋ねたところ、今後3年以内に雇用環境の改善が見込めると考える企業は3社に1社にとどまった(改善時期が「2014年度」「2015年度」「2016年度」の合計)。前回調査(2013年2月)で3年以内に改善すると答えた41.6%を下回り、企業は今後の雇用環境については一転して厳しくなると見ていることが浮き彫りとなった。
 さらに、「長期的に改善する見込みはない」も2割超となった。とりわけ、「小規模企業」(24.6%)は「大企業」(15.9%)を8.7ポイント上回っており、規模が小さいほど長期的にも雇用環境に改善を見込めていない様子がうかがえる。




4. 活用に注力している人材、「若者」が3社に1社で最多、
「キャリア採用」「女性」が続く

 政府は日本再興戦略(成長戦略)で、雇用制度改革・人材力の強化として若者・女性・高齢者等が活躍する機会の拡大を目指している。そこで、自社で主にどのような人材の活用に注力しているか尋ねたところ、「若者」が最多となった。さらに、中途採用や子育て後の復職など多様なルートで採用・登用されている「キャリア・スキル・経験の多様な人材」、「特定層に限定しない」、「女性」が続いた。

注1:網掛けは、全体以上を表す
注2:対象とする人材は、正社員だけでなく、パートタイマーや派遣社員など非正社員を含む
注3:「キャリア・スキル・経験の多様な人材」とは、中途採用、子育て後の復職などにより、多様なルートで採用・登用されている人材などを指す
注4:母数は、有効回答企業1万544社

 「若者」は『建設』や『運輸・倉庫』、『卸売』など、高齢化が進んでいる業界で若者の活用に注力している企業が多かった。他方、「高齢者」について、『運輸・倉庫』や『農・林・水産』などの業界では、既存の高齢従業員の活用に重きを置いている様子もうかがえる。また、「女性」については、セールス等で女性の関わる職務が比較的多い『金融』や『小売』、『不動産』で2割を超えている。
 具体的には、「若者」と回答した企業からは「新分野進出に若手の柔軟な判断と行動力を活用している」(水産食料品製造、静岡県)といった新しい柔軟な視点が企業の生き残りに必要とする意見もあった。また、「女性」では、「リフォーム業における営業職やプランナー等には、女性特有のきめの細かさが非常に適している」(建設、福井県)など、女性の強みをいかして活躍しているという声が挙がった。他方、「キャリア・スキル・経験の多様な人材」では、「従来、自社がやっていなかった事業内容の人材を活用し、新規事業を立ち上げた」(産業用電気機器卸売、神奈川県)といったこれまでに培った経験に期待する声が多かった。


5. 雇用規制の緩和、「裁量労働制の見直し」が最多

 2014年6月の策定が予定されている安倍内閣の成長戦略第二弾では、雇用に関する規制緩和が議論されている。そこで、どのような雇用規制の緩和を進めた方が良いと思うか尋ねたところ、「裁量労働制の見直し」が最も多かった。次いで「再就職支援金の導入」、「限定正社員の普及」、「解雇無効時の金銭解決」が2割超となった。
 企業からは、「簡単に解雇できる仕組みを作ってもらえれば、正規社員の雇用を増やし、優秀な人材の確保を目指す」(建設、大分県)や「労働規制が厳しすぎて柔軟に対応できない。労働者にもっとチャンスを与えられる環境が重要」(印刷、福岡県)といった、制度の基礎的な部分での改善を求めている意見が挙がった。

他方、「財務体質も脆弱である中小企業の経営実態に即した規制緩和であってほしい」(産業用電気機器卸売、福島県)や「解雇規制の緩和は単純明快で分かりやすい方が良い」(人材派遣、栃木県)など、経営実態の理解に基づいた雇用規制に関する議論の必要性を訴える意見も多く挙がった。さらに、「少子化なども踏まえると、規制緩和だけで人手不足は解決しない」(建設機械器具賃貸、北海道)といった雇用単独ではなく、少子化など日本社会が抱える問題との関係を指摘する意見もみられた。

注: 母数は有効回答企業1万544社

まとめ

 2014年度の雇用動向は、徐々にではあるが、正社員・非正社員ともに改善するとみられる。リーマン・ショック後の大幅な落ち込みを経て、採用を増やす企業は増加し、採用を見合わせる企業は減少を続けてきていることは、今後の雇用・所得環境の改善に向けて明るい材料である。しかしながら、採用が増加するという企業は、「建設」「運輸・倉庫」「サービス」などが高く、業界間における差異は顕著に現れている。また、規模別でみると、小規模企業の採用状況の厳しさが現れる結果となった。
 そのようななかで、人材の活用が積極的に行われている対象は「若者」や「キャリア・スキル・経験のある人材」や「女性」である。そして、企業は厳しい経営環境にありながらも、そのような人材が活躍できる場を作り出していることもうかがえた。
 企業の採用意識は着実に改善しているものの、消費税増税後の経済の先行きについて不透明感を覚えているなかで、従業員を増加させることに躊躇する企業も多く存在する。今後、雇用改善が景気の好循環につながっていくためには、中小企業の実態を把握し、施策を打っていく必要がある。


参考表

【参考1】正社員採用について

注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万544社

【参考2】正社員および非正社員の採用について(時系列)

【参考3】非正社員採用予定あり上位10業種

【参考4】雇用の改善時期について

注1:網掛けは、全体平均以上を表す
注2:母数は、有効回答企業1万544社。2013年調査の母数は有効回答企業1万338社

調査先企業の属性

1) 調査対象(2万2,862 社、有効回答企業1万544社、回答率46.1%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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