資金需要に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年3月特別企画 -

 

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2014年4月14日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の4割で新たな資金需要「あり」

〜 用途は「設備投資」「新規事業」が上位に 〜


はじめに

 国内景気は上昇基調を示しており、企業が前向きな投資を行う環境が整いつつある。また、金
融円滑化法が終了したのちも、金融機関には中小企業への貸出に一定の配慮を行うことが求められている。そのため、現状の金融機関の融資姿勢や企業側の資金調達手段の変化への関心が高まっている。
 帝国データバンクは、資金需要に関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査2014年3月調査とともに行った。

調査期間:2014年3月18日〜31日
調査対象は全国2万3,130社で、有効回答企業数は1万258社(回答率44.3%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 企業の40.5%が新たな資金需要が「ある」と回答。その理由として、「設備投資の増加」や「新規事業への進出」など前向きな用途が上位に挙げられた。他方、新たな資金需要が「ない」企業は44.5%で、その理由はすでに必要な投資を実施済み、あるいは先行きに対する懸念に大別される。
  2. 最も重視する資金調達手段は「金融機関からの長期の借り入れ」が46.1%で最多。「内部資金」は25.0%と4社に1社。特に、中小企業は資金調達において金融機関からの借り入れに依存している。
  3. 金融機関から資金貸出に関するアプローチがあった中小企業は65.3%にのぼり、大企業へのアプローチを上回った。同時に、中小企業が感じる金融機関の融資姿勢についても、1 年前と比較して「積極的」になっていると考える企業が37.3%と4.8ポイント増加しており、金融機関による貸出姿勢が活発化している様子がうかがえる。
  4. 「経営者保証に関するガイドライン」は企業の約半数が知っている。しかし、内容まで知っている企業は2割程度にとどまり、企業の間で認知が進んでいない実態が明らかになった。

1.  企業の約4割で新たな資金需要があり、そのうち6割近くは「設備投資の増加」が理由、「ない」理由は「内部留保(手元資金)の増加」が最多

 現在、設備投資や事業拡大、運転資金などで、新たな資金需要が「ある(見込み含む)」企業は40.5%となった。4月1日に消費税率が8%に引上げられ、景気の先行きに不透明感を感じる企業も増えているなか、約4 割の企業が新たな資金を必要としていることは、今後の資金需要が増加する可能性が示唆される。
 とりわけ、新たな資金需要があると考える企業のうち6割近くが「設備投資の増加」を理由として挙げている(3つまでの複数回答、以下同)。さらに、「新規事業への進出」も3割弱となっている一方で、「運転資金の減少」や「内部留保(手元資金)の減少」はそれぞれ23.2%、10.7%となっており、多くの企業が新たな資金を前向きな用途で必要としている様子がうかがえる。具体的には、「設備の老朽化と能力の改善のために5月に設備を更新する」(調味料製造、東京都)や「東京オリンピックを見据えて都内にオフィスを構えたい」(事務・運動服等製造、神奈川県)といった、これまでできなかった設備投資や将来のイベントに照準を合わせた資金需要を必要とする声があった。また、「売上増を背景に仕入れ資金の調達が必要」(各種商品通信販売、東京都)など業況の改善にともなう必要資金の増加や、「生産性向上設備投資促進税制により、設備の一括償却が可能なため」(特殊産業機械製造、静岡県)といった消費税率引上げに対してとられた税制優遇措置を活用する企業もみられた。

人手が不足している部門・役割(複数回答)

     注:母数は有効回答企業1万258社        注:母数は、新たな資金需要が「ある」と回答した企業4,152社

 また、新たな資金需要が「ある」とする企業を業種別にみると、医療・医薬品・福祉関連が上位を占めているほか、教育サービスや消費税率引上げによる駆け込み需要が多くみられた業種が高くなっている。特に、上位2 業種である「医薬品・日用雑貨品小売」と「医療・福祉・保健衛 生」は資金需要を「設備投資の増加」や「売り上げの増加」、「新規事業への進出」など積極的な用途を挙げているほか、「事業承継」が1割を超え、次世代に引き継ぐための資金需要も高かった。

人手が不足している部門・役割(複数回答)

注:母数は各業種の有効回答数                注:母数は新たな資金需要が「ある」と回答した「医薬品・
                              日用雑貨品小売」16社、「医療・福祉・保健衛生」58社

 他方、新たな資金需要が「ない(見込み含む)」という回答は44.5%だった。その理由としては、「内部留保(手元資金)の増加」「売り上げの減少」「運転資金の増加」「設備投資の減少」が上位にあがり、いずれも2割を超えている(3つまでの複数回答)。企業からは、「2013年4月から2014年3月の期間に高額設備投資(新倉庫・合理化設備等)は完了している」(自動車部品製造、埼玉県)といった、すでに設備投資等を済ませているという意見は多い。また、「現在の内部留保で十分

注: 母数は、新たな資金需要が「ない」と回答した企業4,565社

(電力制御装置等製造、大阪府)や「自己資金の範囲で売上拡大している」(衣服身辺雑貨卸売、東京都)など、身の丈にあった事業を展開するという意見を指摘する企業も多くみられた。ただし、「消費税増税後の反動減がどれほど出てくるか見極めてから考慮したい」(家具小売、神奈川県)や「昨年から累積している為替差損がキャッシュフローに影響を与えてきている」(一般機械器具卸売、東京都)など、日本経済を取り巻く情勢や業界の先行きを懸念している企業もある。
 総じてみると、資金を必要とする企業は前向きな投資を考えている。一方、資金需要がない企業では、先行きに対する懸念も見受けられるが、すでに必要な投資を実施済みである場合や自己資金の範囲内で売上拡大を図っている場合など、ネガティブな要因で資金需要を必要ないとする意見は限定的であった。

2. 資金調達手段、「金融機関からの長期の借り入れ」が46.1%、「内部資金」は4社に1社

 設備投資や事業拡大などで資金が必要になったとき、どのような資金調達手段を最も重視するか尋ねたところ、「金融機関からの長期の借り入れ」が46.1%で最多となった。次いで、「内部資金」(25.0%)、「金融機関からの短期の借り入れ」(17.6%)が続いた。長期借り入れと短期借り入れを合計すると63.7%となり、概ね3社に2社が金融機関からの借り入れを重視していることが明らかとなった。
 また、規模別にみると、「内部資金」は資金力のある大企業が中小企業よりも積極的に活用している一方、「金融機関からの長期の借り入れ」は半数近くの中小企業が活用しており、中小企業が資金調達において金融機関の借り入れに依存している様子がうかがえる。

注1:「その他」の内訳は、「補助金、助成金」(3.0%)、「増資」(1.1%)、「社債等による直接調達」(0.6%)、「シンジケートローン」(0.4%)、「クレジットスコアリング貸出」(0.3%)、「動産担保融資(ABL)」(0.2%)、「VC出資を受ける」(0.1%)、「その他」(1.7%)
注2:母数は有効回答企業1万258社

     母数は大企業が2,320社、中小企業が7,938社

3. 中小企業の3社に2社はアプローチあり。
依然として資金需給のミスマッチが2割程度存在

     注:母数は有効回答企業1万258社

 中小企業の資金調達手段は金融機関からの借り入れに依存する傾向が強いことが明らかとなったが、金融機関から中小企業に対する資金貸出のアプローチも積極化している。最近、金融機関から資金貸出に関して何らかのアプローチがあったかどうか尋ねたところ、自社へのアプローチが「あった」と回答した企業は、中小企業で65.3%にのぼった。大企業も58.1%と6割近くに達しているが、中小企業は大企業を7.2ポイント上回っている。
 金融機関による中小企業への積極的なアプローチは企業からみた金融機関の融資姿勢に対する認識でも現れている。1年前(2013年3月)と比較すると、中小企業が金融機関の融資姿勢を「積極的」と感じていたのは2013年3月の32.5%から2014年3月は37.3%へと増加した。他方、「消極的」とする企業は14.4%から10.3%へと減少している。大企業も中小企業と同様の傾向を示しているが、中小企業と比較して、融資姿勢に「変化なし」と捉える割合が高くなっており、大企業に対する融資姿勢は景気状況に左右されにくいことを示唆している。

 中小企業からは、「今年に入り各行の姿勢はやや積極的にみえる。既存メーンバンクだけでなく、取引のない金融機関からのアプローチもある」(金属プレス製品製造、愛知県)や「取引をしていない銀行からアプローチがある。銀行も貸せる相手を探しているようだ」(ビルメンテナンス、神奈川県)といった、これまで取引実績のない金融機関から低利融資などの有利な条件でのアプローチが積極的に行われている。
 他方、新たな資金需要の有無別にアプローチの状況をみると、資金需要が「ある」企業には74.9%が金融機関からのアプローチが行われている。しかしながら、資金需要があるにもかかわらず、金融機関からのアプローチが行われていない企業も約2割に達する。資金需要側と資金供給側の関係に少なからず齟齬が生じている可能性がある


 注:母数は有効回答数



4.「経営者保証に関するガイドライン」、内容を知っている企業は2割にとどまる

 経営者保証には経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生等を阻害する要因となっているなど、保証契約時・履行時などにおいてさまざまな課題が存在する。そのため、経営者保証の弊害を解消することを目的に中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして、2014年2月より「経営者保証に関するガイドライン1」の適用が開始された。
 そこで、このガイドラインに対する認知度を尋ねたところ、「知っている」と回答した企業は49.3%と半数近くに達した(「内容も含めて知っている」と「(内容は知らないが)名前は知っている」の合計)。しかしながら、「内容も含めて知っている」は20.3%にとどまっており、企業の間で必ずしもガイドラインの認知が進んでいない実態が明らかとなった。とりわけ、主な対象となる中小企業でも認知度は5割程度にとどまっている。
 認知度を業界別にみると、「金融」が62.1%(「内容も含めて知っている」は39.5%)と最も高い。次いで、「建設」52.2%(同20.2%)、「卸売」50.1%(同19.4%)、「製造」50.0%(同20.7%) が半数以上となった。他方、「農・林・水産」は41.9%(同20.9%)にとどまるなど、業界間で認知度にバラツキがみられた。

人手が不足している部門・役割(複数回答)

   注:母数は有効回答企業1万258社

 企業からは、「将来、事業承継があるときにスムーズな承継が可能になる」(めん類製造、北海道)や「経営者の再生を今まで大きく妨げてきた経営者保証について、利息という利益をとる金融機関のリスクとして認められるようガイドライン通りの新たな法律の制定を望む」(金属加工機械製造、三重県)など、ガイドラインの運用や法律を含めたさらなる拡大を期待する意見がみられた。しかし、「経営者保証によるガイドラインにより、一部金融機関(ノンバンク含む)では融資に対して慎重になる恐れがある」(不動産、兵庫県)や「金融機関の現場担当者は経営者保証に関するガイドラインの認識度が非常に低い」(産業電機機器製造、神奈川県)、「経営者保証に関するガイドラインの適用方法を知らない金融機関が多い」(貸家業、神奈川県)など、金融機関の説明不足や今後の融資に対するマイナス要素となることを懸念する企業も多かった。


1
「経営者保証に関するガイドライン」・・・経営者の個人保証について、@法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと、A多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円〜360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること、B保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること、などを自主的なルールとして定めたガイドライン。

まとめ

 日本銀行の量的・質的金融緩和政策が実施されてから1年が経過し、また、アベノミクス効果もあって景気は上昇傾向を続けており、企業の業績も改善が進んできている。このようななか、企業の資金需要は2013年後半から徐々に高まってきているほか、金融機関による貸出も増加しはじめてきた。実際、新たな資金を必要としている企業は4 割程度に達しており、特に設備投資の増強や新規事業への進出など、前向きな用途への需要が顕著に現れている。他方、新規の資金需要がない企業においても、すでに設備投資を実施済みという場合や自己資金の範囲内での経営を行っているといった意見も多く、売り上げの減少などネガティブな要因は限定的であった。
 また、中小企業の資金調達としては金融機関からの長期借り入れが主要な手段となるが、金融機関から、中小企業の3社に2社が融資のアプローチを受けている。そのため、中小企業も金融機関の融資姿勢が積極化していると捉えており、今後、資金供給・資金需要ともに高まると考えられる。ただ、依然として資金需要がある企業に対する金融機関のアプローチが行き届いていないケースもみられるため、さらなる資金需給のミスマッチの解消が期待される。



調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,130 社、有効回答企業1万258社、回答率44.3%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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