電気料金値上げに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年5月特別企画 -

 

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2014年6月12日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の半数が電気料金値上げで減益を見込む

〜 6 割超の企業が値上がり分の転嫁困難に 〜


はじめに

 主要電力会社の電気料金は、燃料価格上昇による燃料費調整額の引き上げや、再生可能エネルギーの普及を目的とする賦課金などで、5 月から家庭向けに月平均322〜657 円の値上げが実施された。また、東日本大震災以後の原子力発電所の停止による原価の上昇で、昨年度以降、法人向け電気料金の値上げも相次いで行われている。
 帝国データバンクは、電気料金の値上げが自社の業績に与える影響について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年5月調査とともに行った。

調査期間:2014年5月19日〜31日
調査対象は全国2万3,373社で、有効回答企業数は1万398社(回答率44.5%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 電気料金の値上げで経常利益が「減少する」と考える企業は50.7%と半数を超える。また、電気料金の値上げ分を価格に「ほとんど転嫁できない」「まったく転嫁できない」とする企業も6割を超えており、コストの上昇を自社で吸収せざるを得ない実態が明らかとなった。
  2. 電気料金の値上げに対して、企業の6割が「既存設備での節電を実施」で対応。「設備や照明などを省エネ型に更新」する企業も4割となっており、省エネ関連ビジネスの需要増が見込まれる。
  3. 今後、重要度を増すエネルギーとしては「太陽光」が66.5%で最多。「天然ガス火力」(43.8%)や「風力」(33.9%)も上位に挙がっており、化石燃料と再生可能エネルギーによる複数のエネルギーでリスク分散が期待される。
  4. “経営的”視点でみると、原子力発電は「安全確認ができたものから順次再稼働」が最多。重要なエネルギー供給として捉えている一方、不完備な関連技術や人的ミスを指摘する声も多い。

1.  企業の半数が電気料金値上げにより減益を見込む

 電気料金の値上げは自社の売り上げにどの程度影響があるか尋ねたところ、「減少する」と回答した企業は約2割となった。また、6割近くの企業は売り上げに対する影響を見込んでいない。
 他方、経常利益についてみると、「影響はない」と考える企業が約3割となっているものの、「減少する」と考える企業は50.7%と半数を超えている。企業にとってコストアップ要因となる電気料金の値上げであるが、その多くは経常利益への打撃となって現れるといえる。
 経常利益が「減少する」の内訳をみると、「5%未満減少」が35.3%、「5%以上10%未満減少」が10.0%となるなど、企業は平均3.4%の経常利益減少を見込んでいる。その結果、企業の経常利益は全体で約2兆円減少すると試算され1、陸運業の経常利益(1.7兆円)を上回る規模の利益が失われることとなる。
 経常利益が「減少する」と回答した企業を業界別にみると、『製造』や『運輸・倉庫』『小売』が全体を上回った。企業からも「24時間プラスチックの射出成形機が稼働しているため、これ以上電気使用量の削減が出来ず、電気料金の値上げは直接、経営に悪影響を与えている」(工業用樹脂製品製造、群馬県)や「冷蔵庫の維持管理費用(経費)が増加する」(一般貨物自動車運送、神奈川県)などとあるように、工場などの生産設備や商品管理等に必要となる保冷・保温施設など、電力を多く消費する業界で業績悪化を懸念している。逆に、『不動産』は事務所内での電力使用にとどまるため大きな影響はないとの意見も多く、比較的電気料金値上げの影響を受けにくい様子がうかがえる。


2013 年度の実績見込み、2014 年度の見通しについて

母数は有効回答企業1万398社



1
経常利益の減少額は「法人企業統計 平成24年度」(財務省)より、帝国データバンク推計。ただし、電力会社を除く。

 また、「会社内の電気をLED に変えるなど、節電努力で電気代は下がった」(自動車整備、奈良 県)や「省エネ対策を行った結果、値上げ分を相殺できた」(漁業協同組合、兵庫県)など、節電 対策を行うことで電気料金値上げの影響を抑えることに成功したという意見も多かった。


「増収増益」を見通す企業の割合〜業界別〜

注1:平均減少率は、「減少する」「影響はない」「増加する」の回答結果から算出
注2:母数は有効回答企業1万398社


2.  対応策、「既存設備での節電を実施」が最多、
  省エネ関連ビジネスに需要増の可能性

 電気料金の値上げに対してどのような対策を行うか尋ねたところ、「既存設備での節電を実施」が61.7%(複数回答、以下同)で最多となった。次いで、「設備や照明などを省エネ型に更新」(38.6%)、「人件費以外のコスト削減」(19.0%)、「特に何もしない」(18.0%)、「電力会社との契約内容の見直し」(6.4%)が続いた。それぞれの企業がおかれた現状のなかで、直ちに実行可能な範囲で対応する企業が多数を占めている一方、新たに省エネ型の設備や照明に置き換えるという企業も4割近くに達しており、省エネ関連ビジネスに対する需要の増加も見込まれる。
 企業からは、「日中はほとんど照明を消灯したままであり、通常は夕方から点灯している」(家庭用電気機器卸売、東京都)や「デマンドシステムにより、上限を管理し契約電力がアップしないようにしている」(印刷、東京都)といった声が挙がった。一方、「対応策は数年来より実施済であり、さらなる値上げには対応できない」(一般貨物自動車運送、茨城県)など、これまでも対策を実施してきたなかで、自助努力により影響を抑えることに限界を感じている企業もみられた。


注1:母数は有効回答企業1万398社
注2:以下、「電力会社の変更」(2.3%、234社)、「生産・営業活動の縮小・抑制」(1.6%、164社)、
「設備投資や研究開発活動の縮小・抑制」(1.5%、153社)、「海外への事業拠点の移転・生産シフト」(1.1%、119社)、
「国内他地域への事業拠点の移転・生産シフト」(0.5%、49社)、「蓄電池の導入」(0.5%、48社)、「その他」(1.8%、189社)


3. 6割超の企業が値上がり分の転嫁困難に

 電気料金が値上げされた場合、値上げ分を自社の商品・サービスの販売価格・利用料金にどの程度転嫁するか尋ねたところ、「まったく転嫁できない」とする企業は4割を超え、これに「ほとんど転嫁できない」とする企業を加えると全体の6割を超える。逆に「ほぼ全額転嫁できる」は3.4%にとどまり、ほとんどの企業がコスト上昇分の価格転嫁は困難であると考えている様子がうかがえ、電気料金値上げによるコストアップ分の全部または一部を自社で吸収する予定であることが明らかとなった。
 企業からは、「電気料金のコストアップは商品単価に転嫁出来ないのが現状」(繊維・繊維製品・服飾品製造、京都府)や「電気料金の上昇分を製品への価格転嫁がしづらい現状では、利益を圧迫し経営に大きなダメージ」(化学品製造、島根県)など、現在の状況で価格転嫁は難しいと感じている企業が多い。一方で、「基本的には再生可能エネルギー、自然エネルギーの利用による発電に切り替え、それによるコストは販売単価に転嫁すべき」(工業用ゴム製品製造、大阪府)といった意見もあり、再生エネルギーへの切り替えによるコストアップは価格に反映させるべきと指摘する見方もあった。


注:母数は有効回答企業1万398社


4. 企業の66.5%が「太陽光」を重要エネルギーと認識、
  「天然ガス火力」「風力」も上位に

 今後、どのようなエネルギーが重要性を増すと思うか尋ねたところ、「太陽光」が66.5%(複数回答、以下同)で最多となった。次いで、「天然ガス火力」(43.8%)、「風力」(33.9%)、「地熱」(27.2%)、「原子力」(25.5%)が続いた。特に、「太陽光」はすべての企業規模、業界、地域で6割を超えており、エネルギーとしての太陽光発電に対する企業の期待の高さがうかがえる。また、 「天然ガス火力」はロシアに近い『北海道』、「風力」は洋上風力発電が活発な『東北』で高かった。
 企業からは、「非常時対策としてリスクは分散した方が良い」(和洋紙卸売、栃木県)といった特定のエネルギーに依存することを避けるべきという意見のほか、「日本近海の資源開発を急ぐ必要がある」(建設、東京都)、「自国のエネルギーは自国で賄うのがベスト。日本は海に囲まれておりメタンハイドレートの開発に期待」(婦人・子供服卸売、大阪府)など、日本独自にエネルギーを得るべきという声が多く挙がった。

注:母数は有効回答企業1万398社


5. 経営的視点でみた場合、原発は「安全確認ができたものから順次再稼働」が最多

 福島第一原子力発電所事故の発生以降、原子力発電所は48基すべてが停止しているが、経営的な視点で考えて、原発は再稼働すべきか否か尋ねたところ、企業の31.3%が「原発は安全確認ができたものから順次再稼働すべき」と回答した。他方、「原発は徐々に廃止すべき」は25.4%と2番目に高かった。また、「すぐに再稼働すべき」「すぐに廃止すべき」はともに8%台となっており、企業経営の視点で考えると、原発に関する見方は再稼働と廃止で分かれる結果となった。
 企業からの具体的な声として、「自然エネルギーの電力変換は当然だが、原子力発電は無視できない」(ソフト受託開発、大阪府)など、原発はエネルギー供給の重要な役割を果たすという意見が挙がった。しかし、企業経営という観点からみて、「現状、原子力で安全性は担保できないと思うが、このまま電気料金が上がりつづけると、経営的にはかなり影響がある」(不動産、神奈川県)など、原発の停止による電気料金の値上げで業績に悪影響が及ぶなかで、現実的な選択として原発再稼働はやむを得ないと考える企業も多い。
 一方、原発は廃止すべきと考える企業からは、「安全性、廃棄物処理等の問題が解決されるまで原子力は実施すべきでない」(合成樹脂材料卸売、東京都)や「原子力は廃止すべき。人間は間違いを起こすし、自然の力は人間には止めることができない」(建設、神奈川県)といった、不完備な原子力に関連する技術や人的ミスによる影響を指摘する声もみられた。


注:母数は有効回答企業1万398社


まとめ

 2014年4月の消費税率引上げや、液化天然ガスの輸入価格高騰など燃料価格の上昇、東日本大震災による原発の稼働停止、再生可能エネルギーを普及させるために電気料金に上乗せされる賦課金など、家庭や商店向けをはじめとして電気料金は値上げ要因が重なっている。そのようななか、電気料金値上げによる企業業績への影響は大きく、とりわけ経常利益については企業の半数が減少すると見込んでおり、全体で2兆円程度減少すると試算される。
 また、電気料金値上げに対して、企業の6割が節電を実施、4割が設備等の省エネ型へ更新するなど、コストアップに対して消費電力を抑えることで対処している。しかし、価格への転嫁は難しく、多くの企業は自社で吸収せざるを得ない状況である。また、現在、原子力発電はすべて稼働を停止しているが、企業経営の視点からみた原発の再稼働と廃止に対する見解は分かれる結果となった。今後重要性が増すエネルギーとしては太陽光や天然ガス火力、風力に対する割合が高くなっている。特に太陽光はすべての規模、業界、地域が6割を超えており、期待の高さがうかがえる。
 安定した企業活動には安定した電力供給が不可欠であるが、電気料金値上げに対する企業のコスト削減余力は縮小しつつある。そのため、電気料金の値上げが今後も続くならば、企業業績への影響はより深刻なものとなるだろう。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,373 社、有効回答企業1万398社、回答率44.5%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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