法人税減税に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年6月特別企画 -

 

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2014年7月14日
株式会社帝国データバンク産業調査部

法人税減税、企業の51.3%が前向きな投資に活用

〜 設備投資は総額6.2兆円程度増加する見込み 〜


はじめに

 現在、主要国の法人税は20%台が主流となるなか、日本の法人税率は世界的にも高く、対内投資が少ない一因ともなっており、政府が6 月に閣議決定した「骨太の方針」においても法人税減税が盛り込まれている。また、政府・与党では、法人税減税の代替財源として外形標準課税や優遇税制の見直しなど課税対象の拡大が議論される一方、経済財政諮問会議などでは赤字企業や中小企業に対する影響も指摘されている。
 帝国データバンクは、法人税減税に対する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年6月調査とともに行った。

調査期間:2014年6月17日〜30日
調査対象は全国2万3,118社で、有効回答企業数は1万571社(回答率45.7%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP
http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 法人税の減税に対する財源確保について、「外形標準課税の拡大」には企業の4割が反対。特に、賛成・反対ともに税の公平性を求める企業が多い。逆に「租税特別措置」や「税制優遇措置」の見直しには4割が賛成した。
  2. 法人税の減税分の最も可能性の高い使い道では、「内部留保」が2割。しかし、給与の増額や人員の増強など「人的投資」とする企業が3割超、設備投資や研究開発投資など「資本投資」とする企業も2割となり、企業の51.3%が前向きな投資に活用する見込み。
  3. 法人実効税率を20%台まで引き下げた場合、設備投資は総額で約6.2 兆円の押し上げが見込まれ、中長期的な投資活性化が期待される。
  4. 法人税減税により5割超の企業が日本経済の活性化につながると認識。

1.  外形標準課税の課税ベース拡大に企業の4割が「反対」

 現在、政府・与党では、法人税を減税する一方で、減税により減少する財源の確保について議論が進められている。そこで、代替財源として議論の俎上にあがっている「外形標準課税1 の拡大」「租税特別措置2 の見直し」「税制優遇措置3 の段階的縮小」のそれぞれについて賛否を尋ねた。全体として、「外形標準課税」は反対が4割、「租税特別措置」と「税制優遇措置」は賛成が4割という結果となった。租税特別措置や税制優遇措置の見直しに賛成している企業に限定すると、外形標準課税の拡大にも賛成する企業は4割近くに達しており、特に大企業でその傾向が強い。しかし、小規模企業では、租税特別措置や税制優遇措置の見直しに賛成する一方で、外形標準課税の拡大に反対する企業は半数を超えている。財政基盤が弱く、わずかな負担増が業績に大きく影響する小規模企業ほど、赤字等に関わりなく課税される外形標準課税の拡大に拒否反応を示している様子がうかがえる。

2法人税減税の代替財源に対する賛否


1 外形標準課税は、資本金や売上金、土地の面積や従業員数などをベースとして課税すること。赤字企業を含めて課税対象となるため、課税ベースが拡大する。
2 租税特別措置は、特定の政策目標を達成するため、税制上の特例として租税を減免あるいは加重する措置。中小企業の法人税減税や研究開発減税などがある。
3 税制優遇措置は、要件を満たした団体については通常とは違う課税措置がなされる制度。雇用促進税制などのほか、公益法人や宗教法人などでの優遇措置がある。

 外形標準課税の拡大について、賛成とする企業からは課税対象を広げること、反対とする企業からは企業の継続や雇用動向への悪影響を理由として挙げる企業が多く、双方とも税の公平性を指摘する意見が多くみられた。また、業種による負担の差異を理由に反対する声も挙がった。
 租税特別措置や税制優遇措置の見直しや縮小に対しては、法人課税全体としての見直しを求める声が挙がった。他方、直接的に効果を得られることを理由に反対する意見もみられた。


企業の意見(代替財源に対する賛否の理由について)

<外形標準課税の拡大>

【賛成】

  • 例外を縮小して公平な課税に戻していくべき(建設、愛知県)
  • 外形標準課税の拡大は多くの企業が納税をして法人税の引き下げをより大きいものにして欲しい(建設、東京都)
  • 赤字企業でも様々な行政サービスを受けており、外形標準課税の拡大は妥当性がある(塗工紙製造、愛媛県)
  • 通常の事業者であれば多かれ少なかれ各種インフラの恩恵を受けているはず、赤字・小規模といえども外形標準課税 は拡大すべき(普通倉庫、埼玉県)

【反対】

  • タクシー業を含め労働集約産業にはきわめて過酷な税(一般乗用旅客自動車運送、東京都)
  • 外形標準課税は、業種によりベースが大幅に異なるので、同じ売上高でも不公平感を感じる(建物サービス、神奈川県)
  • 赤字企業を含めた課税対象は企業存続に大きく影響を与える(建設、秋田県)
  • 外形標準課税が拡大されれば正社員登用の動きに水を差すことになる(建設、東京都)

<租税特別措置の見直し、税制優遇措置の段階的縮小>

【賛成】

  • 税制優遇措置は一部の業種に限られ税の平等に反しており、法人税減税後に廃止すべき(セメント卸売、岩手県)
  • 財源の確保を考えれば税制優遇措置は見直しに着手する必要がある。特に宗教法人については課税対象法人に加えるべき(不動産、山形県)
  • 利用できる法人は少ないため、その分を法人税の減税に回してほしい(証券投資信託委託、東京都)
  • 租税特別措置はそのときに応じて設けるため、時代に応じての見直しも良い(銑鉄鋳物製造、富山県)
  • 租税特別措置については景気活性化を目的とするものについては引き続き継続すべきであるが、効果が見込めないものについては見直しの対象とすべき(化学製品卸売、東京都)

【反対】

  • 租税特別措置については研究開発減税などダイレクトに資金繰りに反映されるものであり歓迎(めん類製造、北海道)
  • 租税特別措置法や税制優遇措置は、いわゆる買換え特例のような課税の繰り延べに関しては、今後とも残していくべき(建設、大阪府)
  • 租税特別措置の見直しについては企業の開発意欲および法人税減税の意味がなくなってしまう(手袋製造、香川県)
  • 中小企業は研究開発資金がないため租税特別措置を実施してほしい(建築用木製組立材料製造、広島県)
  • 租税特別措置は、特定の政策目標達成や企業活力を与えるうえで有効(建物サービス、北海道)

2.  法人税減税分を前向きな投資に使う企業が51.3%。
   ただし「内部留保」も2割を超える

 政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2014〜デフレから好循環拡大へ〜」(骨太の方針)では、法人課税の実効税率は今後、数年で20%台まで引き下げることを目指すとしている4。そこで、法人課税の実効税率が20%台まで引き下げられた場合、減税分の使い道として最も可能性が高い項目を尋ねたところ、「内部留保」が20.5%で最も高かった。他方、「社員に還元」は17.3%、「人員の増強」は14.0%となり、人的投資に使うとする企業は合わせて31.2%で3割を超えた。また、「設備投資の増強」(14.9%)と「研究開発投資の拡大」(5.1%)を合わせると20.0%が資本投資に使用すると考えている。「人的投資」と「資本投資」を合計すると51.3%となり、減税分の使い道として半数超の企業が積極的な投資を想定していることが明らかとなった。
 前回調査(2013年9月)と比較すると、積極投資を行う企業は1.8ポイント増加しており(前回49.5%)、とりわけ「人員の増強」(前回12.4%、1.6ポイント増)と「社員に還元」(同16.1%、1.2ポイント増)といった人的投資に充てると考える企業が増加した。





4 現在の法人課税の実効税率は34.62%(東京都の場合)。そのうち、法人税の基本税率は25.50%。

 法人実効税率の引き下げ分の使い道における積極投資について、「資本投資」と「人的投資」の関係をみると、『製造』は「資本投資」に使うとする傾向が非常に強い半面、「人的投資」については全体を大きく下回っている。逆に、『建設』『サービス』『卸売』は、「人的投資」として人員増強や給与・賞与の増額の財源と考える企業が多い。また、「小規模企業」では、他の企業規模と比べて、資本投資を抑えて人的投資に対して積極的に使おうとする傾向がみられた。業界や企業規模による違いが顕著となっており、各分野で新たな需要増加が期待される。



 企業からは、減税分を人的投資に回すことで従業員や消費を活気づけるという声が挙がったほか、減税対象が限られるなか経済に効果的となるように目的を明確にするべきという指摘もあった。他方、将来、景気が悪化したときのためにあらかじめ財務基盤を強化することや、少ない資金の使い道について時間をかけて考えたいという経営者の意向も現れた。

企業の意見(法人税減税分の使い道について)
  • 法人税減税の使い道は、1.従業員の生活水準アップと定着化、2.中長期戦略としての人員確保といった“人への投資”(広告制作、東京都)
  • 従業員の待遇改善に加えて、消費を向上させる環境、商品づくり(鉄鋼卸売、新潟県)
  • 法人税を支払っている企業の割合が高くないなかで減税をするならば、雇用の拡大や研究開発、設備投資など国内のGDP拡大に寄与するよう目的をはっきりさせるべき(飲食料品製造、石川県)
  • 設備にある程度投資したあとは、いつかやってくる不況に備え内部留保を蓄えたい(建設、三重県)
  • 中小零細企業では、利益の使い道は限定される。一旦、留保して、使い道をじっくりと探る(建設、山形県)

3. 設備投資の増加額は平均4,353 万円、日本全体で6.2兆円増加する見込み

 法人課税の実効税率が20%台まで引き下げられた場合の減税分の使い道として「設備投資の増強」と回答した企業1,566 社(不回答を除く)に対して、設備投資額をどの程度増やすと考えられるか尋ねたところ、「1,000 万円〜5,000 万円未満」と回答した企業が34.0%で最多となった5。次いで、「1,000 万円未満」(24.1%)、「1 億円以上」(18.4%)、「5,000 万円〜1 億円未満」(14.7%)と続いた。ただし、規模別にみると、大企業は「1億円以上」と回答した企業が3社に1社を占めた一方、小規模企業では半数近い企業が「1,000万円未満」であった。設備投資の増強を考えている企業では平均4,353 万円の設備投資が見込まれており、法人税減税による企業の設備投資は総額で6.2兆円増加すると試算される6
 企業からは、「減税効果は従業員の賃上げや設備投資の活発化を促し経済の活性を増進させる」(金属製品製造、沖縄県)や「大企業の減税を希望する。その減税した分を設備投資・研究開発に回し、我々中小企業に仕事を落としてもらいたい」(荷役運搬設備製造、神奈川県)といった、減税が取引先の設備投資などを通じて、自社の仕事へつながることを期待する声が挙がった。
 また、法人税減税に対して「一律の減税ではなく、人件費や設備投資等に対する減税を設定しても良い」(ガソリンスタンド、山形県)など、減税の方法を検討すべきという意見もあった。




5 「1,000万円未満」は「100万円未満」「100万円〜500万円未満」「500万円〜1,000万円未満」の合計。「1,000万円〜5,000万円未満」は「1,000万円〜3,000万円未満」「3,000万円〜5,000万円未満」の合計。「1億円以上」は「1億円〜10 億円未満」「10億円〜100億円未満」「100億円〜1,000億円未満」「1,000億円以上」の合計。
6 設備投資の増加額は「平成24年経済センサス−活動調査」(総務省)より、帝国データバンク推計。

4. 半数超の企業が、法人税減税は日本経済の活性化に「寄与する」と認識

 法人税の減税が、日本経済の活性化に寄与すると思うか尋ねたところ、「寄与する」と回答した企業は53.1%となり、半数超が経済への好影響を期待している。しかし、大企業と小規模企業では、「大企業」が「小規模企業」を4.7ポイント上回っており、「大手企業と中小企業の格差がさらに拡大する可能性があるため、中小企業に対してこそ法人税減税を適用し雇用の安定を図るべき」(飲食料品卸売、大阪府)といった見方を示す企業もあるなど、法人税減税による日本経済の改善に向けた期待感にはやや温度差がみられた。

注1:網掛けは、全体以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万571社

 企業からは、企業を取り巻く国内外の環境が大きく変化するなかで、法人税減税が日本経済の活性化を促す要因になると指摘する意見は多く挙がっている。他方、減税をするだけで経済の活性化につながるわけではなく、効果は税の使い方や代替財源次第であると考えている企業も多い。

企業の意見(法人税減税が日本経済の活性化に寄与するか)
  • TPPやFTAによるグローバル化が進むなかで、国内産業復活、国際競争力維持及び海外投資促進による日本経済の成長軌道への復活のためには法人税減税が必要(肥料・飼料卸売、東京都)
  • 企業の資金の使い道次第で日本経済が活性化するかどうかは決まる。投資や社員還元等を行うのであれば活性化は進む(飲食料品卸売、北海道)
  • 経済の活性化にはもっと別の真因があるはず。減税よりも税の有効的な使い方が重要(紙製品卸売、京都府)
  • 雇用者数に対して課税される法人基本税、利益に対して課税される法人収益税の二本立てだけで十分(建設機械器具賃貸、北海道)
  • 日本経済全体では底上げになると思われるが、大多数の中小企業には代替財源次第ではマイナスに働く(一般機械修理、埼玉県)

まとめ

 政府は『「日本再興戦略」改訂2014−未来への挑戦−』(成長戦略)や『経済財政運営と改革の基本方針2014〜デフレから好循環拡大へ〜』(骨太の方針)などを通じて、数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを強調している。特に、成長志向に重点をおいた法人税改革がその中心となる。しかし、日本の法人実効税率は34.62%で、そのうち法人税は25.5%となっており、主要国の多くが20%台となっているなかで、日本の法人実効税率は高水準が続いている。これらを背景に、法人税率が20%台まで引き下げられた場合、企業の5 割超が引き下げ分を給与や設備投資など前向きな投資に活用すると見込んでいる。設備投資は総額6.2兆円増加すると見込まれ、国内経済の活性化につながる可能性が高い。
 他方、法人税減税により減少する財源の確保のため、外形標準課税の拡大や租税特別措置・税制優遇措置の見直しが代替財源として、議論の俎上にあがっている。しかし、赤字企業も対象となる外形標準課税は企業の4 割が反対している一方、特定の業界や団体など恩恵を得る企業が限られる租税特別措置や税制優遇措置については4割の企業が賛成している。多くの企業が法人税制に対して“公平性”を求めているなか、「直間比率の是正の中に法人税の減税があるべき」(乾物卸売、大阪府)とあるように、税体系全体のなかで法人課税も議論される必要がある。政府は、法人税減税を実施する際に、企業間で不公平感が増幅しないように、企業の声に耳を傾けて政策を遂行すべきであろう。


注:財務省「国・地方合わせた法人税率の国際比較」(2014年3月現在)より帝国データバンク作成

調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,118 社、有効回答企業1万571社、回答率45.7%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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