営業秘密に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年8月特別企画 -

 

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2014年9月11日
株式会社帝国データバンク産業調査部

漏洩の疑い、過去5年間で企業の1割が経験

〜 漏洩防止への取り組みは5割にとどまる 〜


はじめに

 企業が保有する情報について、その管理に対する経済的・社会的関心が高まっている。また、ひとたび情報漏洩が起こった場合には、取引先や消費者からの信用を失い、企業価値を著しく毀損してしまう。さらに、政府は知財立国を目指すなか成長戦略で「営業秘密や知的財産の管理にかかる環境整備を2014年度中に行う」としており、政策における重要性も増している。
 そこで、帝国データバンクは、営業秘密に関する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年8月調査とともに行った。

調査期間:2014年8月18日〜31日
調査対象は全国2万3,533社で、有効回答企業数は1万1,023社(回答率46.8%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 営業秘密の漏洩について企業の8割が重要性を認識しており、企業規模が大きいほど営業秘密の漏洩に対する認識は強い。業界を問わず高い意識を有しているが、とりわけ『金融』業界では営業秘密の漏洩をより重要な課題として捉えている
  2. 企業の約1 割が過去5 年間で営業秘密漏洩の疑いを経験。従業員や取引先の多い大企業でその割合が高く、業界別では『金融』が最も高い。『金融』は危機意識が高い一方で、漏洩事例も多く、強い危機感を抱く一因となっていることが示唆される
  3. 営業秘密の漏洩防止に取り組んでいる企業は約半数にとどまる。重要性を認識している企業、あるいは漏洩の疑いのある企業でも、約3 割が漏洩防止に対する取り組みを行っていない
  4. 漏洩防止に向けた取り組みの具体的内容としては、「情報の管理方針等の整備」が最も多くトップ。以下、従業員や役員、取引先などと「秘密保持契約を締結」、「データ等の持ち出し制限を実施」、「営業秘密とそれ以外の情報を区分」が続く

1.  企業の8割が営業秘密の漏洩について「重要」と認識

 営業秘密1の漏洩について、自社の見解としてどのように考えているか尋ねたところ、8割超の企業が「重要である」と回答した(「非常に重要である」「やや重要である」の合計)。他方、「重要ではない」は12.3%、「分からない」は5.4%となった。
 「重要である」と回答した企業を規模別にみると、「大企業」が87.6%だったのに対して、「小規模企業」は74.3%で13.3ポイント下回った。また、「中小企業」も80.7%となっており、企業規模が大きいほど営業秘密の漏洩を強く警戒している様子がうかがえる。

営業秘密の漏洩に対する認識

注:母数は有効回答企業1万1,023社

 業界別にみると、営業秘密の漏洩に対する重要性を最も強く認識しているのは『金融』(89.5%)であった。次いで、『サービス』『製造』『卸売』が続き、最も割合が低い『農・林・水産』においても7 割を超えている。営業秘密の漏洩に関する意識は、業界を問わず高水準であった。とりわけ、『金融』は、「非常に重要である」と考える企業だけで8 割を超えており、二番目に高かった『サービス』(60.3%)を20ポイント以上上回るなど、その危機意識の強さが際立っている。『サービス』の内訳をみると、特に個人や他社を含め情報を多く扱う「情報サービス」や「人材派遣・紹介」において、営業秘密の漏洩に対する重要性を認識している。

「重要である」と回答した企業の規模別・業界別割合

1 営業秘密とは、企業秘密やトレードシークレットとも呼ばれる。特許権などのように積極的に権利化できるも のだけでなく、顧客データや製造ノウハウ、成分組成など権利化ができない、あるいは権利化することが事業活動上、不得策となるような情報も含まれる。なお、不正競争防止法上で保護される営業秘密とは、(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)、(2)事業活動に有用であること(有用性)、(3)公然と知られていないこと(非公知性)、の3要件すべてを満たす技術上または営業上の情報をいう

2.  企業の約1割が営業秘密漏洩の疑いあり

 自社において、過去5 年間での営業秘密の漏洩事例2の有無を尋ねたところ、「漏洩事例はなかった」が75.8%となり、8割近くの企業では営業秘密の漏洩はみられなかった。しかし、「漏洩事例があった」(1.7%)と「漏洩と疑われる事例があった」(7.8%)を合わせると9.5%の企業で営業秘密漏洩の疑いのあることが明らかとなった。
 漏洩があった(疑い含む)と回答した企業を規模別にみると、大企業は小規模企業に比べて割合が若干高くなっている。大企業は、守秘義務や社内教育、セキュリティーが充実している場合が多いものの、営業秘密は“人”の介在で漏洩することが多く、従業員や取引先の多い大企業で漏洩事例を経験する傾向が高くなっている。他方、小規模企業は人材や資金面などで漏洩対策が十分に実施できない状況にある場合も多い。

営業秘密の漏洩に対する認識

注:母数は有効回答企業1万1,023社

業界別では、『金融』が最も高く、『小売』『不動産』『農・林・水産』『卸売』が1割を超えた。『金融』は営業秘密の漏洩に対する意識が非常に高い一方で漏洩事例も多く、強い危機感を抱く一因となっていることが示唆される。また、『小売』では、「家電・情報機器小売」や「自動車・同部品小売」などが高かった。
 企業からは「営業社員の引き抜きにともない営業担当の得意先が一部流れた」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)や「独立をすることが多い業界なので顧客はある程度流出する」(不動産)など、転職や独立を機に情報を持ち出されることで漏洩したという声が多く挙がった。



2 漏洩事例には、製造に関するノウハウや生産プロセス等の工程、経営戦略に関する情報、サービス提供のノウ ハウ、顧客情報、個人情報などを含めて質問している

3. 漏洩防止への取り組み、企業の半数にとどまる、漏洩経験企業でも3割が“取り組まず”

 自社の保有する情報について、営業秘密の漏洩防止に取り組んでいるか尋ねたところ、「取り組んでいる」と回答した企業は半数にとどまった。他方、「取り組んでいない」企業は3分の1以上にのぼった。
 とりわけ、取り組み状況は企業規模により異なり、「大企業」は67.3%が取り組んでいるのに対し、「小規模企業」は37.8%で「大企業」を29.5ポイント下回っている。企業からは、「どうしたらいいのか、良くわからない」(玩具・運動用具製造)や「現状では、営業秘密管理に取り組むだけの人的・金銭的リソースが無く、やりたくてもできないのが実情」(建具製造)など、営業秘密の漏洩防止に対する重要性を認識しつつも、規模が小さくなるほど取り組む余裕がない状況にあることも現実問題として表れている。
 また、営業秘密に関する認識別にみると、「重要である」と認識している企業では、漏洩防止に取り組んでいる企業は6割を超えているが、重要性を感じていない企業では1割程度にとどまる。

注:「漏洩の疑いあり」は、「漏洩事例があった」と「漏洩と疑われる事例があった」の合計

注1:網掛けは、全体以上を表す
注2:母数は有効回答企業1万1,023社

ただし、重要性を認識しつつも現在、漏洩防止に取り組んでいない企業も3割近くに達する。さらに、過去5年間で営業秘密漏洩の疑いのある企業においては、現在「取り組んでいる」のは約6割となっているが、やはり3割の企業は取り組んでいないという結果となった。漏洩事例があり、かつ取り組んでいない企業からは、「個人に帰属する事柄が多く、退職後に再就職先で使用(漏洩)されるのは防ぎようがない」(情報サービス)といった意見や、「どんな対策をすればいいのか分からない」(化学品製造)という小規模企業の声も挙がった。


4. 漏洩防止に対する取組内容、「情報管理方針等の整備」「秘密保持契約を締結」が上位

 営業秘密の管理に関して、具体的にどのような取り組みを実施しているか、または今後実施するか尋ねたところ、「情報の管理方針等の整備」が37.5%で最多となった(複数回答、以下同)。次いで、従業員や役員、取引先などとの「秘密保持契約を締結」(36.6%)、「データ等の持ち出し制限を実施」(33.7%)が3割を超えた。以下、「営業秘密とそれ以外の情報を区分」(28.2%)、「デ ータ等の暗号化・アクセス制限の実施」(22.9%)などが続いた。
 特に、現在、漏洩防止に取り組んでいる企業では「秘密保持契約を締結」と「情報の管理方針等の整備」が半数を超えた。また、現在は行っていないが、今後、漏洩防止に取り組みたいと考えている内容では、「情報の管理方針等の整備」や「営業秘密とそれ以外の情報を区分」「データ等の持ち出し制限を実施」が2割を超えている。
 企業からは、「ISO27001 を取得し社内情報セキュリティーマネジメントシステムを構築している」(建設)や「取引先とは必ず秘密保持契約書を締結している」(一般貨物自動車運送)などの意見が挙がった。他方、「基本的に社員を信用するしかない。中途半端な対策は対策にならない」(木製品製造)や「最終的に個々のモラルの問題となるので、賞罰両面での取り組みが重要」(飲食料品製造)、「根源が“人”なので、非常に難しい」(電気機器修理)といった、最後は個人の問題に行き着くとの指摘も多かった。社内での円滑な人間関係の構築などによって、漏洩防止を図ることも重要であろう。

注:母数は有効回答企業1万1,023社。「現在取り組んでいる」は5,693社、「今後取り組む」は3,879社

まとめ

 営業秘密の漏洩に対する報道が後を絶たない。ひとたび情報漏洩が起こると、取引先や消費者などからの信用が失われたり、競争力を削がれたりすることとなり、企業価値を大きく毀損してしまう。消費者や企業が安心して取引を行うためにも、営業秘密の管理に対する企業の意識・取り組みは非常に重要である。実際、企業の8割は営業秘密の漏洩に対してその重要性を認識している。特に、非常にセンシティブな情報を有する『金融』業界において高い意識を持っていることがうかがえる。しかし、過去5年間で、企業の1割が営業秘密漏洩の疑いを持っており、なかでも『金融』が最も多かった。その結果、漏洩リスクに対する危機意識の高さにつながる一因となっていることも示唆される。また、情報漏洩は“人”を介して行われることが多く、従業員や取引先を多く抱える大企業ほど情報を持ち出す対象となりやすい。
 しかしながら、現在、営業秘密の漏洩防止に取り組んでいる企業は約半数にとどまる。さらに、重要性を認識している企業、あるいは過去に漏洩の疑いがあった企業であっても、約3割が漏洩防止の取り組みを行っていない。特に、規模の小さい企業では営業秘密の漏洩防止に対する人的・金銭的な余裕がないことも取り組み実施の障害となっている。漏洩防止に対しては、「情報の管理方針等の整備」や、従業員や役員、取引先などと「秘密保持契約を締結」することで取り組んでいる。ただし、漏洩防止に対しては「対症療法的な対応を重ねてきたため、体系的抜本的な対応策を検討中」(建設)など、必ずしも取り組みに正解があるわけではない。政府が成長戦略で「知財立国を目指す」としているなかで、各企業が高い意識を持ちながらも人的・金銭的要因などで取り組むことができない状況は望ましくなく、このような企業に対する金融支援や漏洩防止策策定のための専門家の派遣、被害の立証負担の軽減など、早急に対策を実施する必要がある。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,533 社、有効回答企業1万1,023 社、回答率46.8%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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