海外進出に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年9月特別企画 -

 

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2014年10月15日
株式会社帝国データバンク産業調査部

海外進出企業のうち4割が撤退を検討

〜 今後の生産拠点で最も重視する国、「ベトナム」がトップ 〜


はじめに

 大企業の海外進出が進むなかで、中小企業は取引先なども含めて海外需要の取り込みを期待される一方、為替環境の変化や日本と外国との関係の変化や進出国からの撤退の困難さなど多くのリスクがある。また、政府は成長戦略の1つとして2020年までには中堅・中小企業からの輸出額を2010年比で2倍にするという目標を掲げており、国や自治体は中小企業の海外進出を積極的に支援している。
 そこで、帝国データバンクは、企業の海外進出に関する見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年9月調査とともに行った。

調査期間:2014年9月16日〜30日
調査対象は全国2万3,561社で、有効回答企業数は1万968社(回答率46.6%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 企業の27.0%が直接・間接のいずれかで海外に進出している。大企業ほど海外への進出割合は高く、業界別では『製造』『卸売』が突出している。直接進出している企業の具体的内容は「現地法人の設立」、「生産拠点」、「販売拠点」の順で多い
  2. 直接進出企業のうち、中国に進出している企業は65.0%に達する。中国進出で重視する点は、“生産拠点”と“販売先”が拮抗。また、政治的な関係悪化で進出しないという意見もみられた
  3. 直接進出企業のうち、約4割が撤退または撤退検討の経験がある。その際には資金回収の困難さや現地従業員の処遇の難しさに直面し、特に中国への進出企業では法制度や行政手続きを課題として挙げる割合が高くなっている
  4. 今後の海外進出先として、生産拠点は「ベトナム」、販売先は「中国」がトップ。生産拠点・販売先ともに、上位10カ国はアメリカを除きすべてアジア諸国が占めた

1. 企業の27.0%が海外進出「あり」、『製造』は4割を超える

 現在、自社が海外に進出しているかどうか尋ねたところ、生産拠点や販売拠点など直接的な進出を行っている企業は14.7%、業務提携や輸出など間接的な海外進出は18.8%となった(複数回答、以下同)。直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業は27.0%となり、4社に1社超が海外との関わりを持って事業を行っていることが明らかとなった。他方、「進出していない」は71.1%だった。
 「直接進出あり」と回答した企業の海外事業内容をみると、「現地法人の設立」が9.1%で最も多く、次いで支社・支店などを含む「生産拠点」や「販売拠点」、M&Aなどの「資本提携」が続いた。他方、「間接進出あり」では、商社や取引先などを経由した「間接的輸出」、商社等を経由せず直接海外と取引している「直接輸出」、生産委託などの「業務委託」、技術提携などの「業務提携」の順で高かった。

 規模別にみると、海外に進出している企業は規模が大きくなるほど多く、「海外進出あり」は「大企業」(35.8%)、「中小企業」(24.4%)、「小規模企業」(15.0%)と続き、「大企業」は「小規模企業」を20.8ポイント上回る。特に、直接進出では「大企業」の26.6%に対して「小規模企業」は4.8%となり、間接進出と比較して企業規模間で海外進出状況の違いが大きく現れている。
 業界別では、海外に進出している企業は『製造』(42.8%)と『卸売』(31.2%)が突出して高い。さらに細かくみていくと、海外進出しているのは、医療用品や測定器などを中心とする「精密機械、医療機械・器具製造」(63.0%)が最も高く、次いで婦人服や織物など「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(60.7%)が6割を超えた。以下「機械製造」(58.9%)、「輸送用機械・器具製造」(57.6%)、「化学品製造」(52.3%)が続いた。これを直接的な海外進出に絞ると、「輸送用機械・器具製造」が45.8%と半数近くに達しており、生産拠点の設置や現地法人設立が積極的に行われている。また、「機械製造」(34.2%)と「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(30.4%)も3割超となった。
 地域別の海外進出状況をみると、三大都市圏が3割を超えている一方、域内経済における製造業のシェアが小さい『北海道』(9.1%)や『東北』(11.3%)などの地方で海外進出が低くなっている。
 企業からは、「ASEAN全体が販売ターゲット」(医療用品製造、千葉県)や「MADE IN JAPANの商品の販売、紹介など、良さをアピールすべき」(男子服卸売、愛知県)など、海外需要の取り込みや日本製品の強みを生かした形で海外進出しているという意見があった。また、「海外工場から直接、海外顧客へ納入する際、関税が非関税化されている事が大きなメリット」(輸送用機械・器具製造、静岡県)や「海外進出理由は、現地生産、現地消費による納期対応をはじめ、顧客対応が迅速に行えるため」(機械工具製造、愛知県)など、現地で生産することによるメリットを理由としている声も多く挙がった。一方、「国内の人口減による売上減対策」(医療用機械器具製造、東京都)といった国内市場の縮小への対応として海外進出するという意見も多かった。

2.  海外進出企業の65.0%が中国に進出、重視点は“生産拠点”と“販売先”が拮抗

 「生産拠点」や「販売拠点」、「資本提携」、「現地法人の設立」など、海外に直接進出している企業1,611社に対して、中国に進出しているかどうか尋ねたところ、65.0%が進出していた。海外進出企業の実に3社に2社が中国に進出しているという実態が明らかとなった。特に、繊維関連の製造・卸売における中国進出が目立つ。
 中国に進出している企業のうち「“生産拠点”として重視している」企業が34.3%、「“販売先”として重視している」企業が30.7%であった。生産拠点として考えている企業が若干上回っているものの、ほぼ同程度の企業が消費地として中国を捉えていることが判明した。

営業秘密の漏洩に対する認識

 地域別にみると、『近畿』『中国』『四国』で中国に進出している割合が7割を超えていた。
 企業からは「自動車メーカーが生産拠点のグローバル化を推進するなかで、部品製造業として低コストでの製造を目論み中国での生産を行っている」(電気機械製造、広島県)や「国内のメーカーが中国生産にシフトしたため、当社も現地に工場を出した」(電気機械製造、大阪府)など、取引先の中国進出や低コスト化を目的として中国に進出しているという声が挙がった。
 しかし、「中国の賃金上昇を含む、経費の増大化」(化学品製造、大阪府)に直面する企業もある。中国に進出していない企業からは、「中国などは政治的事情により当面様子見の状態で、距離を置く事が良策」(不動産、兵庫県)や「中国のような規制が強く外資に不利な国では、リスクの大きいことが積極的な進出を阻む要因となっている」(医療・福祉・保健衛生、千葉県)など、政治的な関係悪化や規制などカントリーリスクを理由に中国に進出していないという意見もあった。


3. 海外進出企業のうち、撤退・検討の経験がある企業は約4割

 海外に直接進出している企業に対して、海外から撤退したこと、または海外からの撤退を検討したことがあるか尋ねたところ、「撤退は考えていない」企業が56.3%で半数を超えた。他方、「撤退または撤退の検討あり」の企業は39.4%で、約4割が海外から撤退または撤退を検討した経験があった。

 海外からの撤退または撤退検討時に直面した課題は、「資金回収が困難」が38.3%で最も多く、次いで「現地従業員の処遇」(31.8%)、「法制度・会計制度・行政手続き」(29.5%)、「為替レート」(26.5%)が続いた。大企業では、資金回収や法制度、現地従業員との関係を課題として挙げる企業が多かった一方で、「為替レート」を課題に挙げる企業は規模が小さいほど多く、小規模企業では38.7%と4割近くに上った(大企業は21.7%)。
 また、中国に進出している企業についてみると、海外から撤退または撤退を検討した割合は全体と大きく変わらなかった。しかし、撤退時の課題に関しては、「法制度・会計制度・行政手続き」(35.8%)が全体を6.3ポイント上回り、制度や手続き面が中国からの撤退における課題とする企業が多かった。さらに、「現地従業員の処遇」(36.3%)、「資金回収が困難」(42.6%)、「現地政府(地方政府)との交渉」(20.6%)などを挙げる企業の割合が全体を大きく上回るなど、中国進出企業が撤退する時にはより多くの解決すべき課題に直面することが浮き彫りとなった。
 企業からは、「中国において現在は順調だが、中国の法制度自体の不安定さで常に撤退時のリスクを感じている」(電気機械製造、滋賀県)や「投資した分の回収ができておらず撤退しようにもできない状況」(包装用品卸売、宮崎県)などの意見が挙がった。

4. 今後の海外進出先、生産拠点は「ベトナム」、販売先は「中国」がトップ

 今後、海外に進出する場合、生産拠点として最も重視する国・地域はどこか尋ねたところ、「ベトナム」が10.9%でトップとなった。以下、「中国」「タイ」「インドネシア」「ミャンマー」など、アジア諸国・地域が続いた。他方、販売先では、「中国」が12.2%でトップだった。以下、「アメリカ」「タイ」「ベトナム」「インドネシア」が続いた。上位10カ国・地域では、アメリカ以外はすべてアジア諸国・地域が並んだ。
 今後の海外進出で生産拠点として最も重視する国・地域で1位となった「ベトナム」について業種別にみていくと、「家具類小売」「繊維・繊維製品・服飾品製造」「繊維・繊維製品・服飾品卸売」「郵便、電気通信」「情報サービス」が高かった。企業からは、「日本企業の海外生産として東南アジア進出が現実になっているなかでは、現地生産、現地販売でコスト低減と販売先の確保に取り組むことが不可欠」(フェルト・不織布製造、東京都)や「労働者の年齢が若くかつ技能のレベルが高いベトナムに注目している」(電気機械製造、栃木県)など、コストの低減を図るための進出先として注目しつつ、さらに技能の高さも生かしたいと考えている様子がうかがえる。

 また、販売先で重視する国・地域で1位となった「中国」について、業種別にみると、宝飾品などの「その他の小売」のほか、「電気機械製造」「化学品製造」「繊維・繊維製品・服飾品卸売」「精密機械、医療機械・器具製造」「繊維・繊維製品・服飾品製造」などが高い。特に、宝飾品や電気・化学品・精密機器関連、繊維製品関連で市場としての中国に期待している様子がうかがえる。企業からは「当面の市場としては中国を第1とする」(化学品製造、岐阜県)や「中国市場については、生産拠点としていると同時に製品販売の有望市場と見込んでいる」(飲食料品・飼料製造、東京都)など、生産拠点としてだけでなく、大きな市場を取り込みたいという意見が多くみられた。

まとめ

 少子高齢化が進展する下で、日本経済が持続的に成長するためには、企業が現地のニーズを的確にとらえて成長力の高い海外市場に進出し、海外需要を積極的に取り込むことが重要といえる。他方、収益に海外進出の効果が現れるまでには2〜3年程度かかるとも言われている1。そのようななか、政府は成長戦略の1つとして2020年までには中堅・中小企業からの輸出額を2010年比で2倍にするという目標を掲げ、さらに国や自治体は中小企業の海外進出を積極的に支援している。
 今回の調査でも、回答企業の14.7%が海外に直接進出し、18.8%が間接進出している。直接・間接を合わせると企業の27.0%が海外進出している。しかし、それは大企業を中心に進んでおり、業種でみても『製造』や『卸売』が突出している状況である。進出先においては中国が多くなっているのが現状となっている。他方、今後の進出先となると、生産拠点としては「ベトナム」がトップに挙げられるなど、日本企業の海外進出候補国としてタイ、インドネシア、ミャンマーなどアジアの新興国が上位の多くを占めている。
 ただし、海外進出においては情勢の変化や迅速な経営判断などで進出先からの撤退も重要な要素となる。現在、海外に直接進出している企業のうち約4割が撤退または撤退を検討した経験を持っていた。その際には、多くの企業が資金回収や現地従業員の処遇、法制度・会計制度・行政手続きなどの課題に直面していることが明らかとなった。特に、中国に進出している企業ではその割合が高くなっている。
 日本企業の海外進出には、進出だけでなく撤退のしやすさも重要な判断基準として取り入れることが重要になるであろう。そのためには企業自身の進出国に対する調査だけでなく、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)など、政府間における法制度やルール整備を急ぎ、企業が円滑に海外市場の取り込みを図れるよう急ぐ必要がある。



1 [1]Edamura, Kazuma, Laura Hering, Tomohiko Inui and Sandra Poncet (2011), “The Overseas Subsidiary Activities and Their Impact on the Performance of Japanese Parent Firms”, RIETI Discussion Paper Series, 11-E-069. [2]Tanaka, Ayumu (2012), “The Effects of FDI on Domestic Employment and Workforce Composition”, RIETI Discussion Paper Series, 12-E-069. [3]桜健一・近藤崇史 (2013)、「非製造業の海外進 出と国内の雇用創出」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No.13-J-8 など参照

調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,561 社、有効回答企業1万968 社、回答率46.6%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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