消費税率引き上げ後の仕入・販売価格に関する
企業の動向調査

- TDB景気動向調査2014年10月特別企画 -

 

PDF形式のファイルをご覧いただくには、
下記リンク先からダウンロードしてください。

プレスリリースをダウンロード

プレスリリースをダウンロード
2014年11月25日
株式会社帝国データバンク産業調査部

仕入価格は平均3.7%上昇、小規模企業ほど収益環境悪化

〜 企業の4割近くが消費税率引き上げ後に経常利益が「減少」 〜


はじめに

 2013年4月に始まった日本銀行による“異次元”の量的・質的金融緩和政策で円安が進み、原材料などの輸入価格が上昇した。また、人手不足による人件費の上昇や2014年4月の消費税率8%への引き上げなど、企業は多くのコストアップ要因に直面している。さらに、消費税率引き上げ後の反動で需要減少にも見舞われており、企業収益に与える影響も懸念されている。
 そこで、帝国データバンクは、消費税率引き上げ後の仕入・販売価格に関する企業の動向について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2014年10月調査とともに行った。

調査期間:2014年10月20日〜31日
調査対象は全国2万3,327社で、有効回答企業数は1万755社(回答率46.1%)。
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/visitors/)に掲載している。


調査結果(要旨)

  1. 仕入単価は前年同月比3.7%上昇した一方、販売単価は0.6%の上昇にとどまる。小規模企業ほど厳しい収益環境に直面。川下産業に比べて川上産業の方が収益環境は厳しく、川上産業が自社利益を減らすことで吸収している可能性がある
  2. 1年後の販売単価は平均1.7%の上昇を予想しており、現状より上昇率が1.1ポイント高まるとみている。資材価格や工賃の上昇などに直面している『建設』で販売価格への反映が顕著だが、『金融』や『サービス』では依然として販売価格の見通しに対して厳しい見方を崩していない
  3. 消費税率8%への引き上げにより、企業の4割近くが経常利益の減少に直面。特に、『小売』では6割を超える

1. 価格動向、小規模企業ほど厳しい収益環境に直面

 2014年10月の仕入単価および販売単価が1年前(2013年10月)と比較してどの程度変化したか尋ねたところ、仕入単価は平均3.7%上昇していた。他方、販売単価は平均0.6%の上昇にとどまっており、収益環境(販売単価−仕入単価)は厳しさを増している様子がうかがえる(いずれも税抜き価格)。
 その傾向はとりわけ「小規模企業」で顕著で、収益環境は−3.8ポイントとなり、「大企業」(−2.3ポイント)を1.5ポイント下回った。販売単価は小規模企業と大企業であまり差がみられないなかで、特に仕入単価の上昇が小規模企業の収益を圧迫している実態が浮き彫りとなった。
 業界別にみると、『不動産』『建設』『製造』が非常に厳しい収益環境のもとにおかれている。特に、資材などの価格上昇が顕著な『不動産』『建設』は仕入単価が大きく上昇していることで、収益環境を悪化させる要因となっている。また、『製造』は仕入単価が大幅に上昇している一方、販売単価はわずかな上昇にとどまった。概ね『卸売』や『小売』など川下産業に比べて川上産業の方が収益環境は厳しく、川上産業において原価の上昇を販売価格に転嫁できず、利益を悪化させている可能性が示唆される。
 企業からは、「為替の動向次第で、仕入原材料価格が上下するため、非常に先行き判断が難しい」(飲食料品・飼料製造、愛知県、小規模企業)や「円安による資材価格の上昇は建設業にとっては痛手」(建設、新潟県、中小企業)、「アベノミクス効果で輸入品をはじめとする仕入価格が上がり燃料も上がっている。中小企業は切迫した事態に陥っている」(窯業・土石製品卸売、福井県、小規模企業)など、価格交渉力の弱さや為替のリスクヘッジができない小規模企業などで自社努力だけではどうにもならない状況に直面しているという声が多く挙がった。


2. 1年後の販売単価、平均1.7%の上昇を予想

 2014年10月と比較して1年後(2015年10月)の販売単価(税抜き)がどの程度変化すると予想しているか尋ねたところ、予想販売単価上昇率は平均+1.7%となった。現状の同+0.6%と比べると、販売単価上昇率が1.1ポイント高まり直近一年の上昇率の約3倍になるとみていることが分かった。
 規模別にみると、「大企業」と「中小企業」は同程度の上昇を予想する一方、厳しい収益環境の状態にある「小規模企業」は+2.1%と予想しており、販売価格に関してやや強気の上昇を見込んでいる。

 業界別では、『建設』『卸売』『運輸・倉庫』がいずれも平均+2%超となっており、全体を上回る販売単価の上昇を予想している。特に『建設』は、現状で最も高い上昇率(+1.3%)だったのに続き、今後も3%近い単価上昇を見込んでいることが明らかとなった。資材価格や人手不足による工賃の上昇などでコストアップの続く『建設』において、販売価格への反映も顕著に表れている様子がうかがえる。他方、『金融』や『サービス』は現状でマイナスとなっているなかで(それぞれ、−0.6%、−0.002%)、単価は上昇に転じるもののわずかにとどまるとみており、依然として販売価格の動向について厳しい見方を崩していないようだ。

 さらに業種別にみると、「家具類小売」(+5.4%)や「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(+4.0%)が高い上昇率を示しているが、いずれも現状の収益環境が非常に厳しい業種だった(それぞれ、−7.2ポイント・ワースト1位、−5.1ポイント・ワースト2位)。そのため、これらの業種では、今後は収益環境の改善が期待される。他方、「郵便、電気通信」は現状の収益環境が相対的に良かった(−1.4ポイント、5位)ものの、今後は厳しさが増す可能性がある。
 企業からは、「円安のさらなる進行で、輸入品価格は今後もじりじり上昇に向かう」(化学品製造、栃木県、中小企業)や「原料高や人員不足で今後も厳しい状況が続くと思われるが、これを価格に転嫁できない」(情報サービス、東京都、大企業)など、為替動向や人手不足による先行き不安とともに、「部品の価格が上がる一方、販売価格は据え置きで、今後どのような対策を打てば良いか不安」(機械製造、山梨県、小規模企業)といった手詰まり感を抱く意見もあった。


3. 企業の4割近くが、消費税率8%への引き上げで経常利益「減少」

 消費税率8%への引き上げにより、4月以降の経常利益にどのような影響があったか尋ねたところ、「減少した」は36.9%にのぼり、4割近くの企業で経常利益の減少に直面していた。た。他方、半数の企業は「変わらない」と回答し、「増加した」企業は5.3%にとどまった。
 経常利益が「減少した」と回答した企業を業界別にみると、『小売』は6割を超える企業が経常利益の減少に見舞われていた。次いで、『卸売』と『不動産』も4割超が減少していた。
 規模別にみると、規模が小さくなるにつれて経常利益の減少を訴える企業は多くなり、「小規模企業」(38.6%)は「大企業」(34.3%)を4.3ポイント上回った。


まとめ

 2013年4月に始まり、10月31日から追加実施されている日本銀行による“異次元”の量的・質的金融緩和政策により円安が進行し、大手製造業者を中心に好業績の企業がみられる一方、原材料など輸入価格の上昇をもたらした。また、アベノミクスによる景気上昇過程のなかで現出した人手不足などを通じた人件費の上昇など、多くの企業がコストアップに直面した。さらに、4月に実施された消費税率8%への引き上げもあり、反動減を通じた需要減少にも見舞われている。このようななかで、仕入単価DIと販売単価DI(帝国データバンク「TDB景気動向調査」)をみると、2012年12月以降、急速に仕入れ価格の上昇が加速していたことが分かる。
 しかし、本調査で明らかとなったように、仕入れ価格が上昇する一方で、販売価格はわずかな上昇にとどまっており、現状の収益環境は厳しさを増している。特に、小規模企業ほどその傾向が強く、また川上産業において利益の圧縮で吸収している可能性が示唆される。また、消費税率の引き上げ以降、企業の経常利益も減少しており、企業がさらなる負担増に耐えられなくなる可能性は高まっていると言えよう。他方、1年後には現状よりも高い販売価格上昇を予想しており、少しずつ収益環境は改善していくと期待されていることは明るい材料でもある。
 アベノミクスにおける第三の矢が効果的に行われているとは言い難いなか、円安傾向は一段と強まっており、企業収益の悪化が懸念される。政府はこのような企業の現状を踏まえた経済対策を切れ目なく打ち出すことの重要性が一段と増している。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,327社、有効回答企業1万755社、回答率46.1%


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

プレスリリースをダウンロード   会員募集中

このページのトップへ

このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.