地方創生に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2014年12月特別企画 -

 

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2015年1月26日
株式会社帝国データバンク産業調査部

企業の半数超が地方創生に関心、人口減少地域で高水準

〜 地方創生に向けた政策、若年世代の支援を重視 〜


はじめに

 日本経済の発展には地域経済の活性化が欠かせない。2014年11月21日に可決・成立した「まち・ひと・しごと創生法案」及び「地域再生法の一部を改正する法律案」では、人口減少・超高齢社会への取り組みとして地方創生を掲げている。また、1月20日には内閣府地方創生推進室が設置され、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部とともに安倍政権における地方創生の動きが本格化してきた。
 そこで、帝国データバンクでは、地方創生に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2014年12月調査とともに行った。

調査期間:2014年12月15日〜2015年1月5日
調査対象は全国2万3,324社で、有効回答企業数は1万583社(回答率45.4%)
本調査における詳細データは、景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 企業の53.3%が地方創生に「関心あり」。業界別では、『金融』『建設』『農・林・水産』で高く、地場産業を生かした経済の活性化に期待。地域別では、将来人口の急減や働き手の不足が予測されている8県で7割以上に
  2. 地方創生で重要な政策は「若い世代の経済的安定」がトップ。「子ども・子育て支援の充実」「妊娠・出産・子育てまでの切れ目のない支援」も上位にあがっており、企業は若年世代の支援を重視。さらに、仕事の創出と安心な暮らしを確保し、人口減少への歯止めを期待
  3. 企業は定量的・客観的なデータ分析に基づく地方版・総合戦略策定を概ね支持。データ活用の重要性を認識しつつも、地域特性や構想力の発揮を注視

1. 企業の半数超が地方創生に「関心あり」、人口減少地域では7割以上に達する県も

 地域経済を活性化させる地方創生について、どの程度関心があるか尋ねたところ、「関心あり」と回答した企業は53.3%で半数を超えた(「非常に関心がある」と「関心がある」の合計)。他方、「関心なし」(「全く関心はない」と「関心はない」の合計)は12.3%にとどまった。
 「関心あり」を業界別にみると、地域の資金需要を担う『金融』や、公共事業や農林行政など国の政策によって大きな影響を受けやすい『建設』『農・林・水産』などが上位にあがり、いずれも6割を超えた。企業からは「地方創生や地域経済活性化には、まず第1次産業が元気を取り戻すこと」(漁業協同組合、和歌山県)や「公共事業投資で種を撒く方法もある」(産業廃棄物処分、千葉県)といった声もあり、地場産業を生かした経済の活性化に期待している様子がうかがえる。

 地域別にみると、大都市圏を抱える『南関東』『東海』『近畿』が4割台となった以外は、すべての地域で6割以上の企業が地方創生に対して関心を持っていた。とりわけ、「鹿児島」「宮崎」「高知」「秋田」「長崎」「青森」「福島」「徳島」では7割以上となっており、将来人口の急減や働き手の不足が予測されている「鹿児島」「宮崎」など8県1において強い危機感も反映して、高い関心を示す結果となった。



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将来の人口予測は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」参照。


企業の意見(地方創生について)
【関心あり】
  • 地方創生や地域経済活性化には、まず第1次産業が元気を取り戻すこと(漁業協同組合、和歌山県)
  • 地方創生は国主導ではなく自治体と企業・大学の連携が不可欠(家具・建具卸売、岡山県)
  • 基本的に地方創生とは、地域自体で自主自立できる状況だと考える。地域内の企業が国内または国際的に販売を行い、利益から地域に納税を行い、それが地域整備または、福祉に使われ、中央からの補助金なしですべてが行える状態と理解している(建設、山形県)
  • 地域産業の育成、地域人材の育成による地域活性化が地方創生には必要なこと(化学品卸売、宮崎県)
  • 都市部への人口集中抑制と地方の人口増への施策の充実を図っていただきたい。人口減少では、経済のパイは大きくならない(養鶏、徳島県)
  • 地方の人口減対策が特に必要。人口減対策には全てが含まれる(建設、福島県)
  • 中央は財政的な支援に留め、方法論は地方自身が考えるべき(ガソリンスタンド、石川県)
  • 地方創生ができない環境を変えるには、若い人の教育を変えないと何もはじまらない(ソフト受託開発、宮城県)
  • 地方創生や地域経済活性化の大前提は、定住者の増加と考える(電気機械器具卸売、福島県)
  • 地方創生も地域経済活性化も税収が見込まれる範囲内ですべき(一般貨物自動車運送、山口県)
  • 国が消費税増税、社会福祉の再生と強化を標榜して「大きい政府」にむかって突き進んでいる間は、地方創生や地域経済活性化は唱えているだけで、実現の可能性は低い。地方創生は「小さい政府」でやらないと失敗する(建設、大阪府)
  • 地方創生や地域経済活性化の課題は地域ごと多岐にわたる。そのため、地方の実情に応じた生活者の暮らしの確保、交流人口の拡大、中小企業振興、農林水産業振興等に道筋をつける必要がある(電気機械製造、東京都)
  • 地方創生はシステム作りを行っても現実的には効果は期待薄ではないか。見える化されても、これを効果的に作動させるコーディネーター、管理者が地方ないし中小企業の本当の問題点を理解しない限り難しい(精密機械製造、埼玉県)
  • 地方創生は民間活力で行なうべき事柄で、行政機関が新たな制度を作るべきではない(建設、兵庫県)
  • 公共事業投資で種を播く方法もある(産業廃棄物処分、千葉県)
【関心なし】
  • 地方創生をするには、まず東京一極集中を防ぐ政策が先(印刷、東京都)
  • 時代の流れを政治でコントロールできないと考える。無理やりしようとすると、総量規制みたいな形で後の経済に悪影響をおよぼすだけ(電気機械製造、大阪府)
  • 地方創生・地域経済活性化によって実現される国の姿が見えない(建設、広島県)

2.  地方創生に向けた政策では若年世代の支援を重視

 「まち・ひと・しごと創生本部」では、地方創生に向けた政策の検討が進められている。そこで、地方創生においてどのような政策が重要と考えるか尋ねたところ、「若い世代の経済的安定」が43.7%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで2位には「子ども・子育て支援の充実」(35.1%)が続き、さらに7位には「妊娠・出産・子育てまでの切れ目のない支援」が挙げられており、企業は地方創生における政策として若年世代の生活を安定させ、結婚・出産・子育てができるような社会経済環境を実現するための政策を重視している様子がうかがえる。
 他方、3位以下には「地域を支える個別産業分野の戦略推進」、「地方都市における経済・生活圏の形成」、「企業の地方拠点機能強化」が続いており、仕事の創出と安心な暮らしを確保し、人口減少に歯止めをかけることが期待されている。企業からも、「地方経済が復活すれば、過疎化、人口減の問題の多くが解消される」(建設、埼玉県)や「地方で働く人、起業する人に手厚く支援する施策があるとよい」(自動車一般整備、北海道)など、都市圏への人口流出・過疎化などの問題には地域経済の回復が最大の解決策とする意見が多くみられた。


企業の意見(地方創生で重要な政策について)
  • 防災面へのリスク拡散、地方活性化のためにも、中央官庁機能を大阪、名古屋、福岡などの地方の大都市にも分散することで企業、人材の地方への分散が進み均衡ある地方の発展につながる(飲食料品卸売、香川県)
  • 里山資本主義的な発想で地域資源が有効活用できれば雇用が生まれるのではないか。また、ふるさと納税のような地域の産業が振興する政策は大賛成(金物卸売、東京都)
  • 地方経済が復活すれば、過疎化、人口減の問題の多くが解消される(建設、埼玉県)
  • 若い人達が、地元で就職・生活ができる環境を整えることが必要(建設、福島県)
  • 地方創生の成功の鍵は、地方自治体のやる気が一番問われる(事業協同組合、静岡県)
  • 地方における事業、産業の育成が必須。雇用に直接つながるか否かという視点だけでなく、地方の事業が稼げるようになることが大切(パッケージソフト、福岡県)
  • 地方が東京のような大都市化を目指すのではなく、その地方独自の産業を発展させる個性ある政策が必要(建設、神奈川県)
  • 地方の医療設備など生活環境を整備し、安心して生活できる環境整備が必要(建設、山形県)
  • 地域経済が活性化すれば、就職の機会も増え、人の流れも変わる(無機化学工業製品製造、東京都)
  • 女性の社会進出を謳いながら、子育て支援が不十分。中小企業は公務員や大企業のような待遇ができないので、行政が支援して欲しい(飲食料品卸売、広島県)
  • 地方で働く人、起業する人に手厚く支援する施策があるとよい(自動車一般整備、北海道)
  • 1次産業の6次産業化など、地方の特性を活かした新たな産業の創出が必須(電気通信、東京都)
  • 地域に優秀な中小企業もたくさんあるので、マッチングと若者の収入を増やし安心して暮らせる環境を整備することが、結婚、出産、育児につながる(生活関連サービス、東京都)
  • 地方再生、日本再生のためには地方に製造拠点を再構築する必要がある(電気機械製造、岡山県)
  • すべての基本は雇用である。「人材還流システム」や地方移住の推進をしなくても、仕事があれば人は集まってくる(電気通信、福井県)

3.  地方版・総合戦略、データ活用の重要性を認識しつつも、地域特性や構想力を注視

 地方創生関連法では、地方自治体が定量的・客観的なデータ分析に基づき、地域特性を踏まえた地方版・総合戦略の策定を求めている。そのため、国はビッグデータを活用した「地域経済分析システム2」を開発し、その分析手法の普及を図るとしている。そこで、このような考え方で地方自治体が地方版・総合戦略を策定することに対する考え方を尋ねたところ、「重要である」とする回答が36.8%で最多となった(「非常に重要」と「重要」の合計)。他方、「重要ではない」は約1割にとどまった(「全く重要ではない」と「重要ではない」の合計)。
 企業からは、「ビッグデータは大いに利用すべきで役に立つ。ただし、誰が、どういう観点で使うのかが重要」(建設、北海道)や「どれだけの個人企業のデータが拾えるかによって対策を考える必要がある。法人だけではなく全ての業種に対策が必要」(化学品製造、大阪府)、「地域の産業マップ的なツールを整備することは重要。それによりさまざまな分析が一目で理解可能となる」(精密機械製造、岩手県)など、ビッグデータの活用とともに、使い方が重要と指摘する意見があがった。逆に、「重要ではない」とする企業からは、「ビッグデータだけからは何も見えてこない。データの文脈を読み取る力が必要。また、現状のデータ分析は大事だが、そこから先への構想力が重要」(経営コンサルタント、大阪府)といった、データ分析を通じた地域特性や構想力の重要性を指摘する意見がみられた。



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地域経済分析システムとは、企業が保有する企業間取引データ等を活用し、地域経済に関するさまざまなビッグデータから都道府県・地区町村の産業や企業の実体(産業マップ)などを分かりやすく「見える化」するシステム。

まとめ

 1月20日、政府は内閣府地方創生推進室を設置し、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局とあわせて、安倍政権における地方創生の動きが本格化している。
 日本の直面する人口減少、特に地方における人口流出は地域経済縮小という悪循環が懸念されるが、本調査では企業の半数超が地方創生に関心を持っていた。とりわけ、将来人口の急減や働き手の不足が予測されている地域における地方創生への期待は高い。また、地方創生に向けた政策では、若年世代の支援を重視する回答が多くみられた。若い世代が経済的に安定することで、人口流出を防ぎ、地域経済の活性化に資すると考えている様子がうかがえる。さらに、企業は地方自治体が定量的・客観的データを活用する重要性を認識しているものの、現状では判断しかねている企業も多く、地域特性や構想力を持って地方版・総合戦略を策定することが重要となろう。
 “いつの時代も日本を変えてきたのは「地方」”である。そして、地域経済が活性化することは日本経済を勢いづけると同時に、地方が抱える問題の解消にもつながる。そのため、地方創生の成否は将来の日本社会の姿を規定することにもなり、スピード感のある政策実行が求められる。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,324社、有効回答企業1万583社、回答率45.4%)


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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