2015年度の業績見通しに関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2015年3月特別企画 -

 

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2015年4月14日
株式会社帝国データバンク

3割が「増収増益」も、規模間格差拡大への懸念強まる

〜 アベノミクスへの企業の評価は100点満点中64点 〜


はじめに

 国内景気は、企業の設備投資意欲の改善で生産関連が堅調に推移しているほか、原油安や円安による外部環境の改善も加わり、消費税率引き上げ後の悪化傾向から脱し、上昇基調の様相をみせている。他方、人手不足による受注機会の喪失は景気拡大を抑制する懸念材料ともなっているなか、地域や業界、規模によって景気動向が業績に与える影響は異なっている。
 帝国データバンクは、2015年度の業績見通しに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2015年3月調査とともに行った。

※調査期間は2015年3月18日〜31日、調査対象は全国2万3,336社で、有効回答企業数は1万845社(回答率46.5%)。なお、業績見通しに関する調査は2009年3月以降、毎年実施し、今回で7回目
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 2015年度の業績見通しを「増収増益」とする企業は28.0%。2014年度実績見込みからは2.1ポイント減少するものの、「減収減益」は減少、「前年度並み」は大幅に増加しており、総じて上向く傾向。ただし、規模間格差が拡大する懸念は高まっている
  2. 2015年度業績見通しの下振れ材料は「個人消費の一段の低迷」が37.8%でトップとなり、「原油・素材価格の動向」「人手不足」が続いた。特に、「人手不足」は前年度より9.7ポイント増加しており、業績への影響を懸念する企業が大幅に拡大している。他方、上振れ材料は「個人消費の回復」が43.2%でトップとなり、「公共事業の増加」「原油・素材価格の動向」が続いた
  3. 安倍政権の経済政策(アベノミクス)の成果に対する企業の評価は、100点満点中64.2点。しかし、アベノミクスの評価は企業規模によって分かれ、大企業優先という不満が中小企業や地方で高まっている様子がうかがえる

1. 2015年度は約3割の企業が「増収増益」見通しも、規模間格差拡大の懸念高まる

 2015年度(2015年4月決算〜2016年3月決算)の業績見通し(売上高および経常利益ベース)について尋ねたところ、「増収増益(見込み)」と回答した企業は28.0%となり、2014年度実績(見込み含む)から2.1ポイント減少した。他方、「減収減益(見込み)」は前年度から4.2ポイント減少した。また、「前年度並み(見込み)」は10.1ポイント増加した。
 2014年度の企業業績は4月の消費税率引き上げによる景気落ち込みの影響を受け、「減収減益」だった企業は2013年度実績(17.3%)から5.4ポイント増加した。2015年度見通しは2014年度実績と比較すると、「増収増益」が2.1ポイント減少しているものの、同時に「減収減益」を見込む企業も減少している。大手企業の春闘における賃上げ回答や正社員採用意欲の高まりなどによる雇用・所得環境が改善しているほか、原油・天然ガスの価格低下によるコスト負担の軽減などが予想されるなか、企業の45.0%が増収を見込むなど(「増収」は、「増収増益」「増収減益」「増収だが利益は前年度並み」の合計)、2015年度業績は総じて前年度を上回る見通しである。

注1:母数は「分からない/不回答」を除く2013年度実績見込みが1万151社、2014年見通しが同1万134社、
2014年度実績見込みが同1万774社、2015年度見通しが同1万773社
注2:業績は、売上高および経常利益ベース

 2015年度の「増収増益(見込み)」企業の割合を業界別にみると、『金融』が最多となったほか、『サービス』や『運輸・倉庫』『小売』などが全体を上回った。特に、『小売』は2014年度実績より5.6ポイント増加しており、最も業績の改善が進むとみられる。企業からも「2014年度に設備投資、幹部教育、新卒人材確保などのシステムを作り、2015年度の先行投資を行った」(繊維・繊維製品・服飾品小売、宮崎県)や「より性能の良い外国製の太陽電池を扱うことで他社との差別化をはかり、能率よく工事を行うことで利益率が大幅に向上する」(家電・情報機器小売、北海道)といった声が挙がっており、先行投資や差別化を進めたことで、消費税率引き上げ後の厳しい時期を乗り越えていけると見込んでいる様子がうかがえる。
 他方、『農・林・水産』は前年度より10ポイント以上減少している。具体的には「鳥インフルエンザの発生防止にかかっている。TPP交渉妥結後の農業分野への影響度合いが不透明」(養鶏、徳島県)や「農家にとっては、後継者不足・賃金の不安定など課題が山積」(農業協同組合、石川県)といった意見も指摘されており、先行きに対する不安感が高まっている。
 2015年度の業績見通しを従業員数別にみると、1,000人超の企業では7割近くが「増収」を見込んでいる一方、5人以下の企業では4割弱にとどまる。「増収増益」も同様の傾向がみられ、2015年度の業績は大企業を中心に回復が進むと予想され、企業業績において規模間格差の拡大が懸念される。


2.  2015年度業績見通し、「人手不足」を下振れ材料に挙げる企業が急増

 2015年度の業績見通しを下振れさせる材料を尋ねたところ、「個人消費の一段の低迷」が37.8%で最多となった。次いで、「原油・素材価格の動向」「人手不足」「為替動向」「消費税率引き上げによる影響の長期化」が続いた。とりわけ、「人手不足」(29.2%)は2014年度と比較して9.7ポイント増加し、順位も前年度の8位から3位に上昇した。「恒常的な人手不足とコスト上昇が懸念材料」(建設、東京都)や「人手不足に起因する工程の遅延や賃金上昇、購入品価格上昇などの影響による業績下振れ懸念がある」(輸送用機械・器具製造、広島県)といった、人手不足やそれによる賃金上昇をカバーするための単価引き上げが困難な状況にあるなかで、業績を下振れさせる要因と考える企業が拡大している。
 2015年度の業績見通しを上振れさせる材料では「個人消費の回復」が43.2%で最多となり、4年連続で上振れ要因のトップとなった。次いで、企業から「公共事業の発注件数の増加を期待」(機械製造、長野県)といった声もある「公共事業の増加」が続いたほか、個人消費を押し上げる要素としての「所得の増加」も2割超が上振れ材料として挙げている。特に、「原油価格が低めで推移することに期待」(飲食料品・飼料製造、山形県)など原油安に期待を寄せる意見も多い「原油・素材価格の動向」は8.8ポイント増加し、前年の5位から3位に上昇した。

注1:2015年3月調査の母数は有効回答企業1万845社、2014年4月調査は1万204社

注1:2015年3月調査の母数は有効回答企業1万845社、2014年4月調査は1万204社


3.   アベノミクスへの評価は平均64.2点

 安倍政権による経済政策(アベノミクス)について、現在までのアベノミクスの成果を100点満点で評価した場合、何点と評価するか尋ねたところ、平均64.2点だった。企業は2年余りにわたるアベノミクスについて、60点以上の点数をつけている。
 企業からは、「経済政策の目標が明確で、日本の進むべき方向が示されている」(不動産、兵庫県、95点)や「低調な機運を上昇方向に向けてくれた」(建設、大分県、77点)など、方向性を明確化したことや日本社会の雰囲気を転換させたという意見が多くみられた。また、「大幅な金融緩和によって円安を誘導し、国内生産の回復を図ったことは評価できる」(教育サービス、大阪府、80点)や「完璧な政策など過去を見てもあり得ないが、現在での最善ではあると感じている」(建設、栃木県、95点)などの声が挙がった。
 しかし、アベノミクスに対する評価には企業規模による差が表れている。「大企業」が66.5点だった一方、「小規模企業」は62.2点となっており、大企業ほどアベノミクスを評価する傾向がある。企業からも「地方や中小企業が置き去りになっている」(一般貨物自動車運送、北海道、50点)や「大企業と中小企業、大都市と地方の格差拡大により、地方の中小企業の経営が苦しくなっている」(出版・印刷、山形県、30点)、「被災地以外の地方では深刻な人手不足で、人件費の上昇を引き起こしている。バランスが悪すぎる」(肥料・飼料卸売、北海道、19点)といった、アベノミクスが大企業を優先しており、企業間格差が拡大しているとの指摘が挙がった。 総じて、企業はこれまでのアベノミクスに60点以上をつけているものの、中小企業や地方において大企業優先という不満も高まっており、企業の約3割は60点未満となっている。政府には、これらの企業が訴える実情を踏まえて、政策を実行していくことが求められる。



まとめ

 2014年4月の消費税率引き上げで悪化した景気が再び上昇基調に戻ってきたなか、企業の2015年度業績に対する見通しは総じて前年度を上回るものとなった。2015年度は企業の約3割が「増収増益」(前年度実績比2.1ポイント減)を見込んでいるが、同時に「減収減益」とする企業も4.2ポイント減少している。大手企業の春闘における賃上げ回答や正社員採用意欲の高まりなど、雇用・所得環境の改善が予想されているほか、原油価格の下落にともなうエネルギーコストの負担軽減は企業業績に好材料といえよう。しかしながら、2015年度の業績見通しからは、規模間格差の拡大という懸念材料が強まっていることがうかがわれた。特に、従業員数が1,000人超の企業では約7割が「増収」を見込んでいる一方、5人以下の企業では4割未満にとどまる。
 2015年度の業績見通しを下振れさせる要因として「人手不足」が俄かにクローズアップされてきた。前年度と比較して下振れ材料と考える企業が10ポイント近く増加しており、下振れ材料としての順位も3位まで上昇してきた。特に、中小企業では人手不足にともなう賃金上昇を製品やサービスの単価引き上げでカバーすることも難しく、業績を悪化させる要因と捉えている。
 また、企業はこれまでの安倍政権の経済政策(アベノミクス)に対する評価について平均64.2点をつけていることが明らかとなった。日本社会の雰囲気を前向きに転換させたことを評価しつつも、中小企業まで効果が至っていないことに不満を抱いている様子もうかがえた。
 2015年度の企業業績見通しは悪くないものの、規模間格差の拡大に不安を感じる企業も多く、政府はこれらの実情を踏まえて政策を実行していかなければならない。


調査先企業の属性

1) 調査対象(2万3,336社、有効回答企業1万845社、回答率46.5%


2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

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