イノベーション活動に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2015年8月特別企画 -

 

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2015年9月15日
株式会社帝国データバンク

イノベーション活動、企業の約4 割が実施

〜 組織やマーケティングの工夫で中小・零細企業の品質・シェア拡大も 〜


はじめに

 日本再興戦略改訂2015(成長戦略)においてイノベーションによる“稼ぐ力”の強化が掲げら
れているほか、女性の活躍推進政策のなかで、職場において多様な価値観をもたらし、イノベー
ションの創出につなげることも求められている。また、大学改革の成果を生かしながら、産学官
の橋渡し機能の強化や研究開発法人の機能強化など“イノベーション・ナショナルシステム”を
本格稼働させるための政策が打ち出されている。
 そこで、帝国データバンクは、企業のイノベーション活動に対する見解について調査を実施し
た。なお、本調査は、TDB 景気動向調査2015 年8 月調査とともに行った。

※調査期間は2015 年8 月18 日〜8 月31 日、調査対象は全国2 万3,283 社で、有効回答企業数は
1 万833 社(回答率46.5%)
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. イノベーション活動、企業の39.4%が実施。ただし、規模別にみると実施割合は「大企業」ほ
    ど高く、業界別にみると『製造』『サービス』で高く、『運輸・倉庫』『不動産』『建設』で低くなっており、規模や業界で実施状況が大きく異なる
  2. イノベーション活動の実施状況をタイプ別にみると、「プロダクト・イノベーション」(23.3%)「プロセス・イノベーション」(21.6%)「組織イノベーション」(21.0%)は2 割台となっているが、「マーケティング・イノベーション」は16.2%にとどまる
  3. イノベーション活動による効果、「商品・サービスのラインナップが拡充した」「商品・サービスの質が向上した」企業が4 割超。ラインナップの拡充は「プロダクト・イノベーション」を実施した企業では6 割台。市場シェアの拡大はマーケティング・イノベーションで高い効果
  4. イノベーション活動の阻害要因は、「能力のある従業員の不足」が47.4%でトップ、「技術に関する情報の不足」「市場に関する情報の不足」が2 割台で続く
  5. イノベーション活動は寡占化が進む市場ほど実施傾向が高まるものの、中小・零細企業は組織 やマーケティング・イノベーションの実施で品質向上やシェア拡大の可能性もある

1. イノベーション活動、企業の約4 割が実施

 過去3 年間(2012〜2014 年度)に、自社でイノベーション活動を実施したか尋ねたところ、約
4 割の企業が何らかの形で実施していた1
イノベーション活動の実施状況を規模別にみると、規模が大きいほどイノベーションを行って
いたという傾向がうかがえる。業界別では、『製造』『サービス』で高く、『運輸・倉庫』『不動産』
『建設』などで低かった。最も高い『製造』と最も低い『建設』を比較すると、イノベーションの実施割合に17.8 ポイントの差があった。イノベーション活動は、さまざまな資源の制約で規模の小さい企業で行うことが難しいだけでなく、業界間においても取り組みに顕著な違いがみられる。
 企業からも「零細企業にとって最大のネックは、実情報の不足と自社の立ち位置の把握不足、自社人材と資金捻出が難しいこと。零細企業主の高年齢化が改革の気力と将来展望を不透明なものにしている」(建設、青森県、小規模企業)など、小規模企業ほどイノベーション活動を行うために必要な資源が不足しているという意見が多くみられた。



1 イノベーション活動として、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、組織イノ ベーション、マーケティング・イノベーションのいずれかを実施した企業

2.  タイプ別実施状況、「プロダクト」「プロセス」「組織」は2割、「マーケティング」は1割台

 過去3年間(2012〜2014年度)のイノベーション活動についてタイプ別に実施状況を尋ねたところ、プロダクト・イノベーション2 、プロセス・イノベーション3 、組織イノベーション4について、いずれも2割超の企業がイノベーション活動を実施していた。他方、マーケティング・イノベーション5を実施した企業は1割台にとどまっており、マーケティング分野において比較的少なくなっている様子がうかがえる。
 企業からは、「地方でのマーケティング・イノベーションは難しいものがあるが、取り組む必要性は大きく感じている」(木材・竹材卸売、長野県)や「組織イノベーションもしなければならないと痛感しているが、人材、資金、時間ともに不足している」(石工工事、三重県)などの声が挙がった。しかしながら、「社員全般に改革意識もあり、特に、プロセス、マーケティングでは大きな成果を上げてきている」(ごみ収集運搬、島根県)といった意見もみられ、イノベーションを実施することが成果につながっているという企業も多かった。


2 プロダクト・イノベーションとは、自社にとって新しい製品・サービスを市場へ導入することを指す。既存の知識や技術を組み合わせたり、新しい用途へ転用したものを含む。例えば、機能や性能、使いやすさ、ソフトウェア、提供方法(サービス)について、新しいまたは既存の製品・サービスを大幅に改善したもの。有形物だけでなく小売や保険など無形物も含む

3 プロセス・イノベーションとは、自社における生産工程・配送方法・それらを支援する活動(プロセス)について、新しいものや既存のものを大幅に改善したものを導入することを指す。例えば、技法や装置、ソフトウェア、生産工程、配送方法、流通方法、保守システム、購買・会計・コンピュータ処理などについて、新しいまたは既存の製品・サービスを大幅に改善したものも含む

4  組織イノベーションとは、業務慣行や職場組織の編成、他社や他の機関など社外との関係に関して、自社がこれまでに利用してこなかった新しい組織管理の方法を導入することを指す。例えば、業務遂行の方法や手順などの業務慣行、権限の移譲、仕事の割り振り・編成などの職場組織、社外との関係構築に関する新しい方法なども含む

5.  マーケティング・イノベーションとは、自社の既存のマーケティング手法とは大幅に異なり、なおかつこれまでに利用したことのなかった新しいマーケティング・コンセプトやマーケティング戦略を導入することを指す。例えば、製品・サービスの外見上のデザインの大幅な変更、自社にとって新しい販売促進方法・手法、販売経路、価格設定方法なども含む


3. 実施企業の4割超が商品・サービスの「ラインナップ拡充」「質向上」で効果を認識

 イノベーション活動を実施した企業4,269社に対して、イノベーションによりどのような効果があったか尋ねたところ、「商品・サービスのラインナップが拡充した」と「商品・サービスの質が向上した」がいずれも4割を超えトップ2となった(複数回答、以下同)。次いで、「売り上げが増加した」が3割台、「市場シェアが拡大した」「利益が拡大した」「生産能力が拡大した」もイノベーションを実施した企業の2割台がその効果として捉えていた。

 とりわけプロダクト・イノベーションを実施した企業では、「商品・サービスのラインナップが拡充した」が6割を超えており、自社の提供する商品やサービスが充実したと考える企業が多かった。また、マーケティング・イノベーションを実施した企業では、「市場シェアが拡大した」とする企業が全体を13.5ポイント上回っていた。市場シェアを重視する戦略を考えている企業にとっては、マーケティング・イノベーションを実施することが効果的であることが示唆されよう。他方、プロセス・イノベーションと組織イノベーションを実施した企業では、「商品・サービスの質が向上した」を挙げる企業が最も多くなっており、質の面で高い効果をもたらすことが明らかとなった。

 

 

4. イノベーション活動の阻害要因、「能力のある従業員の不足」が半数に迫る

 過去3年間(2012〜2014年度)において、どのようなことが自社のイノベーションの実現やイノベーション活動を阻害する要因となったか尋ねたところ、「能力のある従業員の不足」が47.4%で半数近くに達し、最多となった(複数回答、以下同)。さらに、「技術に関する情報の不足」と「市場に関する情報の不足」が2割台となっており、イノベーション活動に対して情報が不足していると捉えている企業が上位にあがった。以下、「イノベーションにかかるコストの高さ」「新しい製品・サービスへの需要の不確実性」「自社内、または自社が属する企業グループ内の資金不足」「協力相手を見つけることが困難」という回答が続いた。
 企業からは、「新たなビジネスモデルの創出を模索するも、社員の能力と意欲がついてこられない現実がある」(ソフト受託開発、愛知県)や「昨年、技術に明るい人材を採用したが、まだ結果が出てない」(有機化学工業製品製造、群馬県)など、必要な人材の不足や結果を出すまでに時間がかかることを指摘する意見がみられた。他方、「常に変化する市場、労働環境に対応するための不断の取り組みが、イノベーションを生み出す根源」(一般貨物自動車運送、埼玉県)や「小さいイノベーションをかさねて画期的商品の市場投入を目指していきたい」(鉄鋼・非鉄・鉱業、山形県)と指摘する意見もあり、市場の不透明さや情報不足など困難な状況が続くなかでイノベーション活動を進めようとする企業も多くみられる。

5.  イノベーション活動は市場の集中が進むほど実施傾向が高まるものの、中小・零細企業は組織やマーケティング・イノベーションの実施で品質向上やシェア拡大の可能性も

 イノベーションを実施するとき、市場の競争環境も影響することが考えられる。そこで、各産業における競争度を表す指標としてハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を算出し、求めたHHIを同業種数ずつ5段階に分類、各業種のイノベーション活動の実施状況を調べた6。その結果、イノベーション活動は、市場の寡占化が進み、競争度が低い業種ほど実施される傾向のあることが明らかとなった。特に、商品やサービスに直結するプロダクト・イノベーションやプロセス・イノベーションでその傾向は強く、「競争度低低」の業種は「競争度高高」の業種よりイノベーション活動の実施割合が10ポイント以上高くなっている。背景として、競争度の高い市場では多数の中小・零細企業が存在するなかで、イノベーション活動を実施する人材や資本、時間などが不足している一方、寡占化が進んでいる市場では少数の大手企業による市場支配力が高くなっており、それぞれのイノベーション活動を実施する能力の高いことが要因となっていると考えられる。

 他方、組織イノベーションとマーケティング・イノベーションについては、同様の傾向はみられるものの競争度による格差は小さく、中小・零細企業においてもこれらのイノベーション活動を実施することにより、商品・サービスの質の向上や市場シェア拡大に寄与することが可能になると言えよう

6 ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)は企業の市場集中度を表す指標。市場に参入している企業の市場占有率(%)を2乗し、すべての企業における総和を求めたものであり、0から10,000の値をとる。企業の市場占有率は、帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(146万社収録)を用いて算出し、TDB産業分類細分類1,359業種別にHHIを求めた。

まとめ

 企業が競争力を向上させ“稼ぐ力”を高めるために、イノベーション活動は欠かせない。また、産学官連携による“イノベーション・ナショナルシステム”の本格稼働に向けた動きも始まっている。
 本調査によると、企業の約4割が過去3年間に何らかの形でイノベーション活動を実施していた。しかし、企業規模や業界で実施状況は大きく異なっており、人材や資金、時間などが不足している小規模企業ほど困難な状況に直面していることが改めて浮き彫りとなった。その傾向は、市場の寡占化が進み、少数の大企業を中心とした競争環境にある業種ほどイノベーションが実施されていることからも確認できよう。
 他方、イノベーション活動をタイプ別にみていくと異なる様相も表れている。相対的に多くの資金を必要とするプロダクト・イノベーションやプロセス・イノベーションは寡占度の高い業種で実施される傾向が強いが、組織イノベーションやマーケティング・イノベーションでは、その格差は比較的小さなものとなる。そのため、中小・零細企業は組織イノベーションやマーケティング・イノベーションを実施することで、品質向上や市場シェアの拡大に寄与することが可能であると言えよう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,283社、有効回答企業1万833社、回答率46.5%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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