大学に求める教育分野に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2015年8月特別企画 -

 

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2015年9月24日
株式会社帝国データバンク

文系・理系出身者、企業の3割で業務に違い

〜 大学で学ぶべき学問分野、“経済成長”と“社会の発展”でわかれる 〜


はじめに

 国立大学の「改革加速期間」において2016年度から第3期中期目標・中期計画が始まることにともない、文部科学省は6月8日、全国の国立大学に対し、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院について、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることを求める内容の通知を出した。成長戦略における理系強化方針や優秀な理系人材の供給を求める経済団体の要請に応えたものであったが、教育界に加えて多くの企業からも反対意見が出されるなど、今後の日本の人材育成につながる大学改革について議論が活発化している。
 そこで、帝国データバンクは、大学に求める教育分野に対する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2015年8月調査とともに行った。

※調査期間は2015 年8 月18 日〜8 月31 日、調査対象は全国2 万3,283 社で、有効回答企業数は
1 万833 社(回答率46.5%)
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 自社の業務遂行にあたり、文系と理系の出身者で求めることに違いが「ある」企業は全体の29.2%、『製造』や『建設』で4割前後と高い。従業員数別では、101〜1,000人の企業で4割を超える。一方で半数の企業で違いは「ない」と回答
  2. 大学で学ぶ・教えることが重要な分野として、“自社の成長”のためには「工学系統」、“日本経済の成長”では「経済・経営・商学系統」、“社会の発展”では「医・歯・薬学系統」がトップ。企業が考える重要度は個別分野では大幅に異なる一方、文系・理系による違いは小幅にとどまる

1. 自社の業務遂行時、約3割の企業が文系出身者と理系出身者で求めることに違いあり

 自社で業務を遂行するにあたり、大学の文系出身者と理系出身者に対して求めることに違いがあるか尋ねたところ、「ない」と考えている企業が半数となった一方、約3割は学生時代の文系・理系の相違によって求めることに違いが「ある」と回答した。
 「ある」と回答した企業を業界別にみると、『製造』(42.8%)、『建設』(39.0%)が高く、企業の4割前後にのぼる。『製造』では、「精密機械、医療機械・器具製造」が7割近くに達したほか、「電気機械製造」「輸送用機械・器具製造」「機械製造」も5割を超えており、とりわけ機械関連で出身分野により業務遂行において求める内容が異なっている様子がうかがえる。
従業員数別では、概ね従業員数が多くなるほど「ある」の割合が高くなる傾向がある。とりわけ「101〜300人」「301〜1,000人」の企業で4割を超えており、自社の得意分野を中心に事業を展開する中堅・大手企業において文系人材と理系人材を使い分けている可能性が示唆される。
 企業からは「大学出身者は約2割いるが、専門的な分野とはいえ、真の適材適所にはなっていない。やはり、自社独自の指導教育が必要不可欠と痛感している」(パイプ加工製造、静岡県)や「大学別に専門性を持たせ、卒業時に高度な専門知識を持たせるようにする。それにより多種の専門知識を持った人材を採用すれば企業力はおのずと強化される」(建設、神奈川県)といった意見がみられた。

2.  “自社の成長”は工学系、“日本経済の成長”は経済系、“社会の発展”は医学系を重視

 文部科学省の通知では、組織の見直しに関して「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、(中略)、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」としている。そこで、“自社の成長”“日本経済の成長”“社会の発展”のそれぞれについて、どのような分野を大学で学ぶ・教えることが重要だと思うか尋ねた。
 “自社の成長”においては、「工学系統」が45.7%で最も高く、次いで「経済・経営・商学系統」が43.7%で続き、いずれも4割を超えている。以下、「理学系統」「農林水産系統」「法学系統」などとなった。工学系と経済系が突出しており、自社が成長するためには両分野を重要と考える企業が多いことがわかる。
 “日本経済の成長”においては、「経済・経営・商学系統」が64.5%で最も高く、「工学系統」が63.0%で続き、いずれも6割を超える企業が重要と考えている。さらに、「農林水産系統」「理学系統」「国際関係学系統」が5割台で続いた。
 “社会の発展”については、「医・歯・薬学系統」が63.3%で最も高く、「看護・保健学系統」「教員養成・教育学系統」「文学・語学系統」がいずれも6割台となった。“自社の成長”で1位だった「工学系統」は12位、“日本経済の成長”で1位だった「経済・経営・商学系統」は14位となっており、経済の成長と社会の発展で重要と考える分野が大きく異なる結果となった。
 企業からは、「高等教育は総合成績だけでなく、語学と経済学、理学と医学、数学と経済学の融合など、学際的な融合を望む」(建設、北海道)や「学部や学科に関係なく、基礎的な学力はもちろんのこと、真実を深く知ろうとする探究心、発想力、発想したことを実現させるための行動力を身につけて欲しい」(労働者派遣、愛知県)といった、必ずしも学問分野にとらわれない教育を求めていることがうかがえる。また、「工学部の学生のレベルを向上させてほしい。日本は技術立国・ものづくり立国なのだから、理系の充実とレベルアップは絶対に必要」(有線通信機械器具製造、東京都)など、日本の経済環境を反映した意見もみられた。

まとめ

 国立大学の「改革加速期間」における第3期中期目標・中期計画が2016年度から始まることにあわせ、文部科学省による通知がさまざまな波紋を呼んでいる。
 本調査によると、自社の業務遂行にあたり、製造業や建設業を中心として全体の約3割の企業で文系出身者と理系出身者で求めることに違いが「ある」と回答した一方、半数の企業では違いは「ない」としている。大学で学ぶことが重要と考える分野については、“自社の成長”“日本経済の成長”“社会の発展”のいずれにおいても、個別の学問分野では大きく異なるものの、文系と理系という区分で大きな差はみられなかった。
 1960年代の国立大学における法文系学部全廃論争や予算の理工系学部への重点配分、2000年代初めの国立大学の法人化以来となる大きな大学改革が進められている。そのようななか、かつてスティーブ・ジョブズ氏が技術革新および経済成長のためにも「人文知と融和した技術」が必要と述べたように、経営者は大学教育に対して、さまざまな経験や知識を得てバランスの取れた人材の育成を求めていることが明らかとなった。政府は、企業が大学に求める役割として必ずしも理系のみを重視しているわけではないことを踏まえて、大学改革を進めていく必要があるだろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,283社、有効回答企業1万833社、回答率46.5%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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