2016年の景気見通しに対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2015年11月特別企画 -

 

PDF形式のファイルをご覧いただくには、
下記リンク先からダウンロードしてください。

プレスリリースをダウンロード

プレスリリースをダウンロード
2015年12月14日
株式会社帝国データバンク

2016年、「中国経済」が最大の懸念材料

〜 景気回復に必要な政策、消費関連や法人減税が上位を占める 〜


はじめに

 2015年12月8日に発表された7-9月期の実質GDP成長率2次速報は前期(4〜6月期)比0.3%増、年率換算で1.0%増となり、2四半期ぶりにプラス成長となった。また、住宅着工戸数や有効求人倍率も改善が続くなど改善傾向を示す指標がある一方、ここにきて公共投資や個人消費にやや足踏み傾向がみられ、業種や地域で景況感の格差が表れている。
 帝国データバンクは、2015年の景気動向および2016年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2015年11月調査とともに行った。なお、景気見通しに対する調査は2006年11月から毎年実施し、今回で10回目。

※調査期間は2015年11月16日〜30日、調査対象は全国2万3,051社で、有効回答企業数は1万1万620社(回答率46.1%)。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 2015年、「回復」局面だったと判断する企業は7.5%となり、2014年の景気動向とほぼ同水準となった。他方、「踊り場」局面とした企業は54.8%で、2006年(53.5%、2006年11月調査)以来9年ぶりに5割を超えた
  2. 2016年の景気見通し、「回復」を見込む企業は11.3%で、2015年見通し(2014年11月調査)から2.1ポイント減少した。「悪化」見込みは小規模企業が大企業より9.8ポイント高く、規模の小さい企業ほど厳しい見通しを示していることが判明
  3. 2016年景気への懸念材料は「中国経済」(46.4%、前年比33.3ポイント増)が最多。中国の景気減速による影響を懸念する企業が規模や業界を問わず広がっている。逆に、「原油・素材価格(上昇)」や「為替(円安)」は大幅に減少し、景気悪化の懸念材料はこの1年で様変わり
  4. 景気回復のために必要な政策、「個人消費拡大策」「所得の増加」「法人向け減税」「個人向け減税」「年金問題の解決(将来不安の解消)」が上位5項目に挙げられる。「出産・子育て支援」や「介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)」を重要施策と捉える企業も2割前後にのぼる

1. 2015年の景気動向、「踊り場」と考える企業が9年ぶりに半数を超える

 2015年の景気動向について尋ねたところ、「回復」局面であったと回答した企業は7.5%となり、2014年の景気動向(2014年11月調査)とほぼ同水準となった。他方、「踊り場」局面とした企業は54.8%で、2006年(53.5%、2006年11月調査)以来9年ぶりに5割を超えた。さらに「悪化」局面とした企業は19.9%となり、2014年実績から9.0ポイント減少した。
 「回復」局面とみている企業からは「インバウンドの増大による国内消費の拡大により、観光産業を中心に景気回復局面にある」(経営コンサルタント、大阪府)や「建設工事には人手不足で強気の金額を出しても受け入れてもらえる状況が徐々に出来つつあり、好材料が増えてきている」(建設、東京都)など、訪日観光客の増加やコスト増の価格転嫁が進みつつあることを指摘する意見がみられた。しかし、「踊り場」局面が半数超を占めるなかで、「景気は回復傾向にあるが、ユーザー単位では良いところと悪いところで二極化しつつある」(鉄鋼・非鉄・鉱業、滋賀県)といった声も多く、業種や企業間で景気の回復度合いに格差が広がっている様子がうかがえる。
 「悪化」局面とした企業からは、「プレミアム商品券による消費喚起の恩恵もなく、都心のようなインバウンド効果もないので、前年売上・入店客数をクリアできない状況」(各種商品小売、栃木県)や「高価格商材の動きが若干良くなってきているが、低価格商材の値崩れがとどまる気配がない」(化粧品卸売、愛知県)などの声が挙がり、中小企業や地方にはアベノミクスの恩恵が届いていないと考える企業が多かった。
 3年目を迎えたアベノミクスだが、回復を実感する企業は1割弱となり、2年連続で「悪化」局面を下回った。ただし、2014年と比べて「回復」と「悪化」の差は−21.1から−12.4へと縮まっており、企業の景況感はやや明るさが表れている。他方、「踊り場」局面とする見方は半数を超えており、2015年の景気は弱含み傾向を示しつつ、横ばい状態で推移したと言えよう


2.  2016年の景気見通し、「回復」「悪化」を見込む企業はともに減少

 2016年の景気は、「回復」局面を迎えると見込む企業(11.3%)が2015年見通し(2014年11月調査)から2.1ポイント減少した。また、「悪化」局面になると見込む企業が2015年見通しより減少した一方、「踊り場」局面を見込む企業は4.0ポイント増加した。
 規模別でみると、「悪化」と見通す企業の割合は「小規模企業」が「大企業」より9.8ポイント高く、規模の小さい企業ほど厳しい見通しを示していることが浮き彫りとなった(6ページ参考表参照)。業界別では、『小売』が「悪化」と見通す企業の割合が3割を超え、「回復」より20ポイント以上高くなっており、個人消費関連の業種で特に厳しく見込んでいる様子がうかがえる。
 企業からも、「2017年の消費税率引き上げに向けてますます消費は慎重になる」(男子服小売、大阪府)といった個人消費について厳しい見方をする意見や、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定では「道内経済への影響が漁業・農業分野で顕著に表れる」(医療・福祉・保健衛生、北海道)ことを懸念する企業もみられた。他方、「回復」を見込む企業からは、「雇用、所得環境が改善し、設備投資が増加する動きがみられることで景気が回復に向かうと期待」(金融、北海道)や「オリンピック特需もあり2016年の景気見通しは良好」(不動産、東京都)、「企業の設備投資では更新需要を消費税率引き上げ前に実行する動きが活発化し、景気の好循環から個人消費も伸びると予想」(娯楽サービス、愛知県)といった、雇用拡大や設備の更新需要などを期待する声も挙がった。


3. 「中国経済」の動向を懸念する企業が急増

   2016年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、「中国経済」が46.4%で最も高かった(3つまでの複数回答、以下同)。「中国経済」は前回調査(2014年11月)から33.3ポイント増加しており、中国の景気減速による影響を懸念する企業が企業規模や業界を問わず広がっていることが浮き彫りとなった。逆に、前回2位だった「原油・素材価格(上昇)」は前回調査から23.0ポイント減の24.7%、前回1位だった「為替(円安)」は同31.1ポイント減の19.5%となっており、景気の懸念材料はこの1年で大きく様変わりした。また、「消費税制」は37.7%で2位、「人手不足」は25.6%で3位となっており、景気を左右する重要項目として上位にあげられた。
 業界別にみると、「中国経済」では『金融』『製造』、「消費税制」では『小売』が5割を超える企業で景気への懸念材料として挙げている。また、「人手不足」は『建設』と『運輸・倉庫』が4割超となっており、「人件費の上昇による人手不足と業績悪化への影響が表れ始めている」(普通倉庫、愛知県)など、最低賃金の引き上げとともに労働需給ひっ迫にともなう人件費上昇による収益悪化を懸念している様子もうかがえる。
 企業からは、「中国経済の成長鈍化、パリのテロ事件の世界への拡散リスクなど予断を許さない多くのリスクがある」(建設、宮城県)や「仕事があっても、人手不足等により受注できない状況が続くことは避けられない」(建設、北海道)といった、中国経済や人手不足などを挙げる企業が多かったほか、テロによる影響を懸念する企業も非常に多かった。また、「食品に対する消費税の軽減税率で混乱が大きくなる可能性」(飲食料品・飼料製造、三重県)など、消費税率引き上げにともなう影響を指摘する声も多くみられた。

4. 景気回復に必要な政策、個人消費関連や法人減税が上位を占める

   今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、「個人消費拡大策」が42.6%(複数回答、以下同)で前回調査(2014年11月)に続いて4割を超え、4年連続で最多となった。次いで「所得の増加」「法人向け減税」「個人向け減税」「年金問題の解決(将来不安の解消)」が3割を上回った。実質賃金の伸び悩みが続くなか、今後の景気回復には個人消費の拡大とともに、企業の競争力向上として法人税など法人向けの減税策が重要な課題であると捉えていることが明らかとなった。
 また、政府の成長戦略や新三本の矢に掲げられている女性活躍で重要となる「出産・子育て支援」(23.3%)は4社に1社、「介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)」(19.1%)は5社に1社が、今後の景気回復に必要な政策として挙げている。また、前回調査で9位に入っていた「財政再建」は7.7ポイント減少し11位へと後退しており、企業がこれまでより景気に配慮した政策を求めている様子がうかがえる。
 企業の声としては、「個人が消費できるよう、将来への不安の払拭が優先されるべき」(不動産代理、宮城県)や「国内回帰を促し、製造業の国内生産高を増加させ雇用の充実と所得増加を促進し個人消費拡大をねらう」(電気機械製造、群馬県)、「減税や手当では溜め込むだけとなる。使った費用に対する助成が消費拡大につながる」(一般貨物自動車運送、茨城県)といった、消費や国内生産の拡大につながる政策を必要とする意見が多かった。また、「消費税率引き上げやマイナンバーなど、小さな会社にとっては対応が大変で非常に手間がかかる。そのため経費もかかり利益は減るばかり」(建設、北海道)といった、制度変更にともなう負担増に対する中小企業への支援を求める意見も聞かれた。

まとめ

 2015年の景気は9年ぶりに「踊り場」局面と考える企業が半数を超えた。業種間や企業間で景気の回復度合いに格差が拡大しており、企業の間ではアベノミクスの成果が中小企業や地方に届いていないとする不満も広がっている。
 さらに、2016年の景気を「回復」「悪化」局面とみる企業は前回調査より減少し、「踊り場」局面と見込む企業が増加している。企業は、海外経済の減速や慎重な設備投資、個人消費の低迷などもあり、2016年の景気が横ばい状態で推移するという方向感を持っている様子がうかがえる。
 とりわけ、懸念材料として「中国経済」を挙げる企業が規模・業界を問わず急増している。日本経済に対する中国経済の影響力が高まっていることを背景に、企業が中国の景気減速による影響を注視している様子がうかがえる。また、消費税率引き上げの影響が長引いている状況とともに、人件費上昇による収益悪化を懸念している一方、原油・素材価格の上昇や円安に対する懸念は急速に低下している。そのため、企業は今後の景気回復に向けて、個人消費拡大策や所得増加策、法人・個人向け減税など消費や企業の競争力向上に向けた政策の実施を必要としている。
 2015年の企業の景況感は3月をピークに緩やかに悪化を続け、9月以降は横ばい傾向で推移し、日本全体の景気が膠着状態となっている[「TDB景気動向調査2015年11月」(帝国データバンク)]。政府には、アベノミクスが成果をあげ、日本経済が自律的な好循環を達成するためにも、経済を第一とした政策を実行する重要性が一段と高まっている。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,051社、有効回答企業1万620社、回答率46.1%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。
当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。

プレスリリースをダウンロード   会員募集中

このページのトップへ

このサイトについて  サイト利用規定  プライバシーポリシー  免責事項  サイトマップ
Copyright (c) 2002- TEIKOKU DATABANK, LTD. all rights reserved.