TPPに関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2015年12月特別企画 -

 

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2015年1月19日
株式会社帝国データバンク

企業の64.5%が日本に必要と認識

〜 「農・林・水産」の6割超がマイナスの影響を懸念、プラス影響は「飲食店」がトップ 〜


はじめに

 22015年10月5日、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定が大筋合意された。高い水準の自由化と高度なルールを、世界のGDPの約4割を占める12カ国が約束したことで、関税等の大幅な削減・撤廃が行われ、域内全域に共通のルールが適用されることとなる。TPP協定は、域内市場の一体化が進展し、ヒト、モノ、資本、情報が活発に行き交うことで、日本経済の活性化につながると期待されている。他方、農産物などにおいては、関税撤廃などによる国内生産者への影響が懸念されているほか、金融や社会保障分野でのルールも課題に挙げられている。
 帝国データバンクはTPPに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2015年12月調査とともに行った。なお、TPPに関する調査は2010年12月調査以来2回目。

※調査期間は2015年12月15日〜2016年1月5日、調査対象は全国2万3,097社で、有効回答企業数は1万547社(回答率45.7%)
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. TPP協定、企業の64.5%が日本にとって「必要」。自社の属する業界では29.7%が「必要」と考えているが、5年前(38.3%)と比べると大幅に減少。
  2. 自社への影響は「プラスの影響」(16.3%)が「マイナスの影響」(7.3%)を上回るも、「影響はない」「分からない」がそれぞれ4割近くに達し、自社への影響を必ずしも捉えきれていない現状が浮き彫りに。業種別では、プラス影響は「飲食店」(47.2%)、マイナス影響は「農・林・水産」(65.6%)がトップ
  3. 具体的内容、影響を想定する企業のうちプラス面では「原材料コストの低下」(38.9%)がトップ。以下、「輸出の増加」「売り上げや利益の増加」が続く。マイナス面では「販売価格の低下」(27.9%)がトップ。「新規参入の増加による競争の激化」「売り上げや利益の減少」が続く
  4. TPP協定への対応、企業の81.1%が「検討していない」。業界別にみると、「農・林・水産」では半数超の企業で何らかの対応策を検討
  5. 対応を検討している企業のうち、57.2%の企業が「TPP関連情報の収集」を検討。以下、「売り上げや収益への影響分析」が4割台、「海外販路の開発・拡大の方法」が3割台で続く

1. TPP協定、企業の6割超が日本に必要とする一方、自社業界では3割にとどまる

 TPP(環太平洋パートナーシップ)協定 1 は「自社の属する業界」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は29.7%となり、「必要だとは思わない」(30.6%)と拮抗する結果となった。しかしながら、TPP交渉への参加が議論されていた前回調査(2010年12月調査)と比較すると、「必要だと思う」が8.6ポイント減少した一方、「必要だとは思わない」は9.6ポイント増加しており、自社の業界にとって5年前よりTPP協定の必要性を捉えかねている企業が増えていることが明らかとなった。
 また、TPP協定が「日本」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は64.5%に達し、「必要だとは思わない」(9.7%)を大幅に上回った。前回調査と比較しても傾向に大きな変化は見られず、日本全体で考えた必要性は依然として多くの企業が有している様子がうかがえる。  企業からは「人口減少のなか、国の枠を超え連携をとることは必要」(ガラス繊維製造、滋賀県)や「今後経済発展するにはリスクがあっても国際化に沿ったルールに準じた経済活動が必要。TPPの正式締結にはまだ時間を要するため、いまはTPPルールに沿った戦略を思案する時間に活用すべき」(自動車部品・付属品製造、長野県)など、日本経済が人口減少に直面するなかで、リスクを避けることなくルールに合わせた戦略を構築するべきという意見がみられた。他方、「プラスとマイナスの影響要因に対しそれぞれ前広に対応していくことが必要」(事業協同組合、東京都)や「牛・豚肉価格の低下による鶏肉価格の下げ圧力と生産農家の将来に対する不安増幅で、後継者不足がより深刻になる懸念がある」(養鶏、徳島県)といった、農林水産業への懸念やTPPによる影響にさまざまな政策が必要と考える企業も多い。
 TPP協定は企業の3社に2社が日本にとって必要と考えている一方、自社業界に対しては3割程度にとどまる。また、「分からない」も4割近くに達しており、影響をはかりかねている様子がうかがえる。


1 環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership, TPP)協定  
 オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国およびベトナムの合計12カ国で高い水準の、野心的で、包括的な、バランスの取れた経済連携協定をめざし交渉が進められてきた。2015年10月のアトランタ閣僚会合において、大筋合意に至った。今後は、各国と連携しつつ、協定の早期署名・発行を目指していくことになる。TPP協定は、自由貿易協定(FTA)の基本的な構成要素である物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易のみではなく、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルールのほか、新しい分野(環境、労働、分野横断的事項等)を含む包括的協定となっている。

2.  自社への影響、「農・林・水産」は企業の6割超がマイナスの影響を見込む

 現時点において、TPP協定が自社にどのような影響を与えるか尋ねたところ、「プラスの影響がある」と回答した企業は16.3%となった。「マイナスの影響がある」は1割未満にとどまったものの、「分からない」が4割近くに達している。他方、「影響はない」は37.9%だった。TPP協定について、3割の企業が自社業界に必要としながらも、多くの企業で自社への影響を必ずしも捉えきれていないことが浮き彫りとなった。  
 TPP協定が自社に「プラスの影響」があるとする企業を業種別にみると、「飲食店」が47.2%で5割近くに達した。以下、「家具類小売」「旅館・ホテル」「人材派遣・紹介」などが続いた。食品や家具類の仕入価格の低下のほか、旅行客増加などが期待される業種が上位に挙がった。また、関税引き下げなどが期待される製造関連では、「機械製造」「輸送用機械・器具製造」「飲食料品・飼料製造」「精密機械、医療機械・器具製造」がトップ10に入った。
 企業からは、「海外輸入食料品の原価の逓減に期待」(旅館、宮城県)や「関税の撤廃で、輸出・輸入とも当社に有利に働くと期待」(食料品加工機械製造、静岡県)、「他国の税率低下が大きなメリット」(体積計製造、東京都)といった声が挙がった。
 他方、TPP協定が自社に「マイナスの影響」があるとする企業では、「農・林・水産」が65.6%で突出して高かった。関税引き下げによる低価格競争に危機感を抱いている企業は多い。次いで、「医薬品・日用雑貨品小売」「飲食料品卸売」「家電・情報機器小売」などが続いた。
 企業からは、「大筋合意ということで詳細な内容の把握ができていないなか、経営の合理化(組織体の奨励)による高齢農家の意欲減退、定年後の農業参入への後退など、農畜産業への影響は大きなものがあると思う」(農業協同組合、石川県)や「農産物の市場への販売業者として、農家の対応・市場の今後の状況などが不安」(野菜卸売、沖縄県)など農林水産業の構造変化への対応や零細農家の先行きに不安を感じていることのほか、「協定の細目がわからないので対応もできない」(医薬品小売、岡山県)といったTPP協定の詳細が分からないことを指摘する意見もみられた。


3.  具体的影響、プラス面「原材料コストの低下」、マイナス面「販売価格の低下」がトップ

   TPP協定が自社に「プラスの影響がある」または「マイナスの影響がある」と回答した企業2,488社に対して具体的にどのような影響が想定されるか尋ねたところ、「プラス面」としては、「原材料コストの低下」が38.9%で最も高かった。以下、「輸出の増加」「売り上げや利益の増加」が3割台だったほか、「調達ルートの拡大」「自社の競争力向上(貿易・投資ルールの統一化・透明化・簡素化などによる)」が続いた。参加国の関税引き下げによる原材料価格の負担軽減や輸出増加など、輸出・輸入両面でのプラス要素が挙がっている。また、ルールの統一化などによる競争力向上も上位となった。
 他方、「マイナス面」では、「販売価格の低下」が27.9%でトップだったほか、「新規参入の増加による競争の激化」が2割台で続いた。次いで、「売り上げや利益の減少」「新たなルールに対応する組織・商習慣の変更」「海外市場での海外企業との競争の激化」が高かった。競争の激化やそれにともなう販売価格の低下、新ルールへの対応などを懸念している様子がうかがえる。
 企業からは、「設備投資の需要が創出される」(鉄鋼・非鉄・鉱業、北海道)や「規制緩和による新事業・産業がでてくると予想」(一般貨物自動車運送、長野県)、「海外対応や効率化・大規模化を強化することが求められる企業の増加により、ICTの活用機会が増加する」(ソフト受託開発、愛知県)といった声が挙がった。他方、「食材中心に価格が低下することで販売価格も連動して低くしなければならない」(飲食店)や「原材料等のコスト削減には繋がるが、価格競争はコスト削減以上に進む」(男子服卸売、東京都)といったマイナス面を指摘する意見も多くみられた。


4. 企業の8割がTPP協定への対応を検討していないなか、農林水産業の対応際立つ

 TPP協定への対応について自社内で検討しているかどうか尋ねたところ、「検討してない」が81.1%だったうえ、「すでに検討した」「現在、検討している」「検討を予定している」を合計しても1割に満たない。現状ではほとんどの企業で対応策を進めていないことが明らかとなった。  しかし、業界別にみると、「農・林・水産」では対応への意識が高い。TPP協定に対する検討状況について、「すでに検討した」(8.2%)「現在、検討している」(19.7%)「検討を予定している」(26.2%)となり、半数超の企業で何らかの対応策を検討しており、TPP協定に対する危機感の高さがうかがえる。
 企業からは、「必然的な流れであり、それに対応できる状況を作り出す必要がある」(野菜卸売、福岡県)や「一次産業におけるICT活用は必須となるはずであり、これに対する何らかの対応は必要」(ソフト受託開発、愛知県)など、自由化の流れに対応する必要性や新たな需要拡大に向けた対応を検討しているという声が挙がった。他方、「TPP協定が締結されたことで何かを対応するというよりも、日常の企業活動のなかで、どのような環境に対しても適応可能な能力を養っていくことが重要だと認識している」(楽器・同部品製造、埼玉県)といった、TPP協定に限らず日ごろの環境対応の一環として捉えているという指摘もあった。

5. 具体的対応策、「TPP関連情報の収集」が半数超で最多

   TPP協定への対応を「すでに検討した」「現在、検討している」「検討を予定している」のいずれかを回答した企業1,039社に対して、具体的にどのような対応策を検討(予定)しているか尋ねたところ、「TPP関連情報の収集」が57.2%で最も高かった。以下、「売り上げや収益への影響分析」が4割台だったほか、「海外販路の開発・拡大の方法」が3割台、「競合する輸入品価格への影響分析」「自社製品の優位性への影響分析」が2割台で続いた。参加国の関税引き下げによる原材料価格の負担軽減や輸出増加など、輸出・輸入両面でのプラス要素が挙がっている。また、ルールの統一化などによる競争力向上も上位となった。まずは、情報収集を進めるとともに、売り上げや収益への影響を検討している企業が多い。他方、「TPP参加国への拠点設置」や「生産拠点の日本国内への移転(国内回帰)」といった、生産・販売関連の見直しは1ケタ台にとどまっており、TPP協定の内容を見極めたうえで対応を進めようとする傾向もうかがえた。
 企業の声としては、「TPPによってマイナスの影響を受ける得意先への企画提案」(広告代理、富山県)や「自社商品にどのような影響がでるのかを正しく理解できていない」(米麦卸売、福井県)、「各仕入れメーカー、取引先にヒアリングした」(包装用品卸売、大分県)といった意見が挙がった。他方、「関税率の低減から、消費者が買いやすい価格になれば消費も伸びる。対策を予定する必要はない」(食料・飲料卸売、東京都)などの指摘もある。TPP協定への対応は情報収集を進めるなかで、各社とも先を見据えつつ具体策を検討している状況にあるといえよう。

まとめ

 TPP(環太平洋パートナーシップ)協定は2015年10月5日に大筋合意された。世界のGDPの約4割を占める12カ国が合意した意味は大きい。内閣官房TPP政府対策本部によると、TPP協定の意義として以下の3点が柱として挙げられている。1.21世紀型の新たなルールの構築、2.中小・中堅企業、地域の発展への寄与、3.長期的な、戦略的意義、である 2
 このような意義を持つTPP協定は、日本の経済構造の変革を大きく迫るものとなる。企業の3社に2社はTPP協定が日本にとって必要と捉えているが、自社業界になるとその必要性を感じる企業は大きく減少する。自社業界の必要性は、交渉参加の議論が行われていた5年前と比較しても減少している。また、自社には「影響はない」あるいは「分からない」がともに4割近くとなっており、自社への影響を必ずしも捉えきれていない様子もうかがえる。
 しかしながら、TPP協定が及ぼすプラスまたはマイナスの影響は業種により大きく異なる。食材費の低減を受ける「飲食店」で好影響を期待する企業が多い一方、「農・林・水産」では6割超の企業が悪影響を懸念する。また、現状では、TPP協定に対して企業の8割超が対応策を検討していない。これらの多くはTPP協定の詳細が分からないことから生じている面もある。政府は1月7日に協定案全文の和訳を公表したが、さらなる説明を行う必要があろう。
 TPP協定の参加12カ国は2月にも協定案に署名する予定である。企業の多くが日本にとってTPP協定は必要と認識しているように、日本経済の成長にとって重要な協定となる。しかし、マイナスの影響が懸念されることも多いため、政府は企業の声に耳を傾けて手続きを進めていくことが肝要である。

2. 内閣官房TPP政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」(2015年10月5日)参照

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,097社、有効回答企業1万547社、回答率45.7%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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