2016年度の賃金動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2016年1月特別企画 -

 

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2016年2月15日
株式会社帝国データバンク

賃金改善を見込む企業は46.3%で7年ぶり減少

〜 賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が過去最高の73.8% 〜


はじめに

 2015年の景気は「踊り場局面」とする企業が半数を超える(「2016年の景気見通しに対する企業の意識調査」)など停滞感の漂う一年となったが、政府は官民対話を通じて賃金の引き上げを要請している。そのため、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引き上げなど、賃金改善の動向はアベノミクスの行方を決定づける要素として注目されている。
 このようななか、帝国データバンクは、2016年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2016年1月調査とともに行った。

※調査期間は2016年1月18日〜31日、調査対象は全国2万3,228社で、有効回答企業数は1万519社(回答率45.3%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で11回目。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)することで、定期昇給は含まない。

調査結果(要旨)

  1. 2016年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は46.3%。前回調査(2015年度見込み)を2.0ポイント下回り、リーマン・ショックで大幅減を記録した2009年調査(2009年度見込み)以来7年ぶりの減少。また、2015年度は3社に2社が賃金改善を実施
  2. 賃金改善の具体的内容は、ベア35.5%(前年度比1.2ポイント減)、賞与(一時金)26.0%(同1.4ポイント減)。2013年度以降3年連続で上昇していたベアは4年ぶりに低下
  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が73.8%で過去最高を記録。また「同業他社の賃金動向」の割合も過去最高を更新するなか、「自社の業績拡大」は3年連続で減少。改善しない理由は、「自社の業績低迷」が61.5%で最多となる一方、「同業他社の賃金動向」「人的投資の増強」は前年調査より3ポイント以上増加
  4. 2016年度の総人件費は平均2.49%増加する見込み。従業員の給与や賞与は総額で約3.4兆円増加と試算される

1. 2016年度の賃金、企業の46.3%が改善を見込むものの7年ぶりに減少

 2016年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と回答した企業は46.3%となり、前回調査(2015年1月)における2015年度見込み(48.3%)を2.0ポイント下回った。賃金改善のある企業が減少したのは、リーマン・ショックで大幅減を記録した2009年度見込み(17.1ポイント減)以来、7年ぶりとなった。一方、「ない」と回答した企業は23.7%と前回調査(27.4%)を3.7ポイント下回った。また、「分からない」は5.7ポイント増加しており、2016年度の賃金について結論を出していない企業が増している。しかしながら、6年連続で「ある」が「ない」を上回るとともに、その差も過去最大となっている。

 2015年度実績では、賃金改善が「あった」企業は6割を超え、景気の先行き不透明感が増すなかで、多数の企業が賃金改善を実施していた様子がうかがえる。
 2016年度に賃金改善が「ある」と回答した企業を業界別にみると、『運輸・倉庫』が最も高く、『建設』、『製造』、『サービス』が続いた。企業からは、「仕事がないのに労働力確保のため賃上げが必要になっている。公共予算を拡充し、仕事を回してほしい」(鳥取県、特定貨物自動車運送)といった指摘もあり、引き続き人手不足の状況が継続すると見込まれれるなか、人員確保のために賃金改善を行うという意識は多くの企業が有しているようだ。

 
 従業員数別では、「6〜20人」(50.2%)、「21〜50人」(52.4%)が5割を超えた。ただし、従業員数別では多くの企業で賃金改善を行う割合が前年比で減少しているなか、唯一1,000人超のいわゆる大企業のみが1ポイント未満だが、前年を上回っている。
 2016年1月に日本銀行がマイナス金利の導入を決定し、一段の金融緩和が進められたものの、海外の経済情勢に不透明感が増すなかで、企業の賃金改善状況も揺れている。従業員数別では50人以下の企業で比較的賃金改善に前向きな姿勢を示している一方、5人以下の企業では約3割にとどまる。2015年度実績は全体で7割近くが賃金改善を実施したうえで、さらに2016年度も半数近くの企業が見込んでいる。賃金改善への姿勢は企業によって異なるものの、引き続き高水準が続いている。

2.  賃金改善の具体的内容、ベア実施企業が35.5%、賞与(一時金)は26.0%

 2016年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が35.5%となり、「賞与(一時金)」は26.0%となった。前回調査(2015年度見込み)と比べると、ベアが1.2ポイント、賞与が1.4ポイントそれぞれ減少した
 リーマン・ショック前の2008年調査(2008年1月)では「ベースアップ」が40.0%、「賞与(一時金)」が22.1%あった。しかし、2013年度以降3年連続で上昇していた「ベースアップ」は4年ぶりの低下となっている。

 


3.  賃金改善理由、「労働力の定着・確保」が7割超で過去最高を更新

 2016年度の賃金改善が「ある」と回答した企業4,875社にその理由を尋ねたところ、最も多かったのは「労働力の定着・確保」の73.8%(複数回答、以下同)となり、2006年の調査開始以来初めて7割を超え過去最高を記録した。さらに「自社の業績拡大」(46.2%)が続いたが、3年連続の減少となった。また、人手不足が続くと同時により良い人材の確保が必要とされるなかで、「同業他社の賃金動向」(21.1%)は過去最高を更新し、他社の賃金動向をより意識する傾向が強まってきた。他方、「物価動向」や「消費税率引き上げ」で賃金改善を行うとする企業は大幅に減少した。
 企業からは、「労働力の質の向上のため」(化学製品卸売、北海道)や「すべては人員確保のためであり、苦渋の選択」(情報家電機器小売、富山県)といった、従業員の質向上や人員確保を挙げる企業が多くみられた。
 他方、賃金改善が「ない」企業2,490社にその理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が61.5%(複数回答、以下同)と前年調査(65.3%)より3.8ポイント減少した。また、「同業他社の賃金動向」や「人的投資の増強」は前年調査より3ポイント以上増加している。

 企業からは、「業績によって賞与で賃金を調整している。今期業績の現状では賃金改善は出来ない」(給排水・衛生設備工事、長野県)や「賃金の代わりに休暇制度を充実させた」(旅館、宮城県)、「資金繰り改善に至るまでの間は現状維持としている」(専門サービス、青森県)といった、現状の業績では難しいとする意見のほか、賃金以外で従業員に報いる方法を考えている企業もみられた。

4.  2016年度の従業員給与・賞与は約3.4兆円増加と試算

 2016年度の自社の総人件費は、2015年度と比較してどの程度変動すると見込んでいるか尋ねたところ、「増加」1と回答した企業が63.7%にのぼった。他方、「減少」は9.2%にとどまっており、総じて企業は人件費が増加すると見込んでいる。2016年度の総人件費は前年比で平均2.49%増加すると見込まれ、総額で約4.3兆円、そのうち従業員への給与や賞与は約3.4兆円増加すると試算される2
 業界別にみると、『運輸・倉庫』で「増加」すると回答した企業が最も高かった。また、人材が不足している不動産管理などで賃金改善を見込む『不動産』では、総人件費が平均3.25%増と唯一3%を超えている。
 企業からは「高収益を得られる企業であれば、大いに実施したいが、当社レベルでは存続が第一義となる」(一般貨物自動車運送、新潟県)といった、賃上げには財務体質の強化が欠かせないという指摘があった。他方、「給与の上昇分はほとんど社会保険、住民税の上昇分、生活物資の値上がりで相殺され、消費税の上昇分等を賄うことができない」(保育所、岩手県)や「賃上げし、一般消費者の財布を肥やしたとしても、財布の紐は堅いであろう」(まき網漁業、愛媛県)といった声も挙がった。

 

1. 「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計

2. 人件費増加額は「法人企業統計」(財務省)より、帝国データバンク推計

まとめ

 2016年1月に日本銀行が公表した「経済・物価情勢の展望」で、インフレ率2%という目標の達成時期は2017年度前半へと先延ばしされた。そのようななかにあって、賃金の上昇はアベノミクスの成否を決定する重要なファクターとなっている。そのため、政府は官民対話等を通じて業績が改善している企業に対して賃金の引き上げを要請している。
 2015年度には3社に2社が賃上げを実施したなか、2016年度も半数近くの企業が賃金改善を実施する見通しとなった。企業の総人件費は平均2.49%上昇すると見込まれ、従業員への給与・賞与は約3.4兆円増加すると推計される。しかし、賃金改善の理由として「労働力の定着・確保」を挙げる企業は7割を超え、逆に業績が拡大したことを理由とする企業は3年連続で減少している。企業の賃金改善は、業績よりも労働力の定着・確保を第一に捉えて実地するという姿勢が明らかとなっている。
 本来的に、賃金は企業の業績拡大を通じて上昇することが望ましく、そうでない状況は長続きしえないだろう。現状は人手不足が生じているなかでの賃上げで、業績はまだそれに追いついていない。賃金上昇を確実なものとし、安定的なインフレ率が達成されるためにも、企業業績の改善は一段と重要になってくる。残された時間は少ない。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,228社、有効回答企業1万519社、回答率45.3%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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