2016年度の雇用動向に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2016年2月特別企画 -

 

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2016年3月14日
株式会社帝国データバンク

正社員採用、高水準続くも拡大基調に頭打ち

〜 非正社員、採用予定企業が6年ぶりに前年を下回る 〜


はじめに

 人手不足が深刻化するなか、2016年1月の有効求人倍率は1.28倍と、1991年12月以来24年1カ月ぶりの高水準となった。また、新規学卒者の就職内定率は2015年12月1日時点で80.4%(大卒)と5年連続で上昇し、リーマン・ショックの影響前の2008年の水準に迫っている。しかし一方で、地域間や業界間、社員・非正社員間などの雇用動向には依然として格差がみられる。
 こで、帝国データバンクは、2016年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2016年2月調査とともに行った。


※調査期間は2016年2月16日〜29日、調査対象は全国2万3,189社で、有効回答企業数は1万497社(回答率45.3%)。なお、雇用に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し、今回で12回目。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)することで、定期昇給は含まない。

調査結果(要旨)

  1. 正社員の採用予定があると回答した企業の割合は62.9%と、2年連続で6割を超えたものの、6年ぶりに前年を下回った。企業の採用意欲は依然として高水準が続いているが、規模別にみると中小企業では6年ぶりに減少しており、正社員の採用動向にやや陰りが見え始めた
  2. 非正社員の採用予定があると回答した企業の割合は48.8%で6年ぶりに減少した。他方、採用予定のない企業は38.8%と7年ぶりに増加した。非正社員の採用動向はリーマン・ショック後に急減したのち回復傾向を示していたが、ここにきて非正社員の採用を抑制する傾向が表れてきた
  3. より良い人材を採用するために行っている取り組みでは、「募集方法・内容を多様化」が31.3%で最多。次いで、「自社採用ホームページの公開」「福利厚生制度の充実(特別休暇など)」「分煙、禁煙の実施」が2割台で続いた。企業は募集対象や方法の多様化、福利厚生制度の充実などソフト面を強化することで、優秀な人材の採用・確保を図っている
  4. 採用に関して望ましい選考活動の開始時期については「分からない」「選考活動の開始時期は関係ない」が多いものの、従来の選考活動開始時期であった「4月」が望ましいとする企業が1割超となった。次いで、現在の2017年卒の選考活動開始時期である「6月」と、2016年卒の解禁日と同時となる「3月」が続いた

1. 2016年度の正社員採用、「採用予定あり」が6年ぶりに減少

 2016年度(2016年4月〜2017年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は62.9%となった。採用予定のある企業は2年連続で6割を超えたものの、2010年度以来6年ぶりに悪化した。他方、「採用予定はない」は27.0%となり、2年連続の2割台で推移した。
 正社員全体の採用意欲はやや減少したものの、全国10地域すべてで6割を超えているほか、業界別でみても10業界中7業界が6割超となっており、企業の採用意欲は前年同様高水準で推移している。しかしながら、規模別でみると、大企業の採用意欲は6年連続で増加し8割を上回っている一方、中小企業は57.3%と6年ぶりに悪化した。人手不足が継続するなかで人件費も上昇し、業績は厳しさを増してきており、中小企業の採用意欲はやや陰りが見え始めた。
 採用予定のある企業からは、「平均年齢が高齢化しており、若年社員の新規採用が必要不可欠」(土木工事、埼玉県)や「経験豊かな即戦力となる人材を求めている」(各種食料品小売、鳥取県)、「将来の事業承継候補者の育成のため」(繊維・繊維製品・服飾品製造、愛知県)など、従業員の年齢構成を要因にあげているほか、技術の承継による業務の効率化を挙げる企業もみられた。他方、採用予定のない企業からは、「2016年に入り不動産売買の動きがなくなった」(不動産、東京都)や「社会保険などの企業負担の現状では、正社員を雇用する余地はない」(婦人・子供服卸売、愛知県)といった、需要の減少や社会保険などコスト要因を挙げる企業が多くみられた。また、「アルバイトから正社員登用が採用方針」(がん具・娯楽用品小売、東京都)など、正社員の新規採用ではなく非正社員からの登用をあげる企業も多い。




2.  非正社員採用、採用予定企業が6年ぶりに減少に転じ5割を下回る

 2016年度(2016年4月〜2017年3月入社)の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は48.8%となった。非正社員の採用予定は2011年度以降5年連続で上昇してきたが、今回は減少に転じており、ここにきて企業に採用を抑制する傾向が表れてきた。
 非正社員の採用予定割合を従業員数別にみると、従業員数が5人以下の企業では2割台にとどまる一方、300人を超える企業では7割を超えている。これらの傾向は前年から変わらないものの、従業員数が「21〜50人」の場合を除き、採用予定のある企業はいずれも減少している。
 企業からは、「退職者がでて若干不足気味だが、若年から中年層の応募は少なく高年齢化している」(スーパーストア、秋田県)や「賃金を上げてもなかなか採用できない」(料理品小売、大阪府)といった、非正社員の採用が難しくなっているという意見がみられた。また、「自社のような外食業では、サービス力でどのように差別化するかが重要なポイントのため、非正社員も積極的に採用して、その中から正社員にも登用していきたい」(酒場・ビアホール、熊本県)などの声もあがった。
 他方、「採用予定はない」(38.8%)と回答した企業は7年ぶりに増加した。非正社員の雇用状況は、リーマン・ショック後に急激な人員調整に直面してきたのち改善が続いていたが、ここにきて変化の兆しが表れてきた。


3.  優秀な人材の採用、募集方法・内容の多様化や福利厚生制度などソフト面を充実

 より良い人材を採用するために自社でどのような取り組みを行っているか尋ねたところ、「募集方法・内容を多様化」と回答した企業が31.3%で最も多かった(複数回答、以下同)。次いで、「自社採用ホームページの公開」(25.3%)、「福利厚生制度の充実(特別休暇など)」(23.6%)、「分煙、禁煙の実施」(21.2%)が2割台で続いた。企業は、募集対象や方法の多様化、福利厚生制度の充実などソフト面の強化を図ることで、優秀な人材を採用・確保しようとしている様子がうかがえる。
 企業からは、「不定期の水曜休みを不定期の土曜休みに変更するなど、定休日を変更することで優秀な人材を確保しやすくなると考えている」(水産食料品製造、山梨県)や「休暇が取りやすい会社であるところをアピールしている」(輸送用機械器具卸売、奈良県)、「介護休暇や育児休暇の取得など社員の働き方を支える制度として、ワーク・ライフバランスに取り組んでおり、自己啓発活動を行う社員への支援活動も休暇取得の手法で積極的に取り組んでいる」(ソフト受託開発、滋賀県)など、さまざまな制度や就業環境を改善しているという声があがった。「昨年、交通の便の良いと言われる地域にオフィスを移転した。また、女性社員が多い職場なので環境の整備や全員インフルエンザの予防接種等を行った。口コミなどを期待したい」(事業サービス、岩手県)といった、オフィスの移転や健康経営の充実によってより良い人材を確保している意見もみられた。
 上記の結果から、優秀な人材を採用するために必要なポイントとして、次の5項目にまとめられる 1

1. 優秀な人材を採用するために必要な5つのポイントは、上記選択肢の回答結果に対して因子分析を行い導出。因子分析の方法は主成分解により因子を抽出し、直交バリマックス回転を行った。

4.  望ましい選考活動の開始時期、4社に1社が「関係ない」と回答も、4月開始が1割超

 2017年春の卒業予定者について、就職活動のスケジュールが昨年の2016年卒業者より前倒しされた。昨年の採用活動を後ろ倒しした結果、学生の就職活動が長期化し、学業に悪影響を及ぼしたという状況を踏まえ、選考活動を昨年より2カ月早めることとなった(下図参照)。
 そこで、自社にとって選考活動は何月に開始されるのが望ましいと思うか尋ねたところ、「分からない」(30.1%)や「選考活動の開始時期は関係ない」(26.6%)と回答する企業が多かった。多くの中小企業にとって、人材が必要となったタイミングで採用を行っているほか、大手企業の採用活動終了後や通年で採用を行っていることも多く、選考活動の開始時期に左右されないという傾向がある。
 他方、具体的な時期では、従来までの選考活動開始時期の「4月」と考える企業が10.6%で高く、次いで、現在の2017年卒の選考活動開始時期である「6月」と、2016年卒の解禁日と同時となる「3月」が8.4%で続いた。また、従来までの解禁日と同時となる「12月」が7.8%だった一方、前年の2016年卒の選考活動開始時期だった「8月」と回答した企業は3.5%にとどまった。
 企業からは、「時期を早めるなら 特別職(技術職)を先行して、その後、総合職や営業職といった分野ごとに時期を決めたほうが良い」(建物サービス、神奈川県)や「学生のためにも、一切の採用活動は大学4年の4月からにして、内定時期は任意で良い」(配管・暖房・冷凍装置・同付属品卸売、愛知県)といった意見があがった。また、「大企業(上場企業)などの採用活動が一段落した後が中小企業の出番となるので、大企業の数カ月後という相対的な時期で活動している」(電子応用装置製造、東京都)や「選考活動の開始時期の変更により事務担当のスケジュールを大幅に変更したため、その対応でコストアップになった」(各種機械・同部分品製造修理、兵庫県)といった声のほか、「新卒一括採用制度は疲弊している。そろそろ変える時期かもしれない」(経営コンサルタント、広島県)という現行の採用制度そのものに対する問題点を指摘する意見もみられた。

まとめ

 2016年度の雇用動向は正社員、非正社員ともにやや陰りが見え始めた。人手不足が継続するなかで業績への懸念も高まっている。大企業の正社員の採用意欲は高水準が続いているものの、中小企業では6年ぶりに悪化した。また、非正社員についても、リーマン・ショック後の大幅な人員調整に直面したのち改善が続いてきたが、ここにきて変化の兆しが表れてきた。
 他方、中小企業が優秀な人材を確保するためには、募集対象や方法を多様化し、福利厚生制度や就業制度などソフト面を充実させ、自社のPR活動を強化することなど、さまざまな工夫が必要となる。しかしながら、「地方の若者が都会に流れ、また大企業が多くを採用しているため中小企業の採用状況は非常に厳しい」(製缶板金、宮崎県)という根本的な問題に対する解決策は見出されていない。頻繁に変更される採用活動の開始時期をめぐる混乱は、人手不足にともなう人件費の上昇とも相まって、業績改善が進まないなかで人手の確保・維持のために拡大してきた中小企業の採用活動を抑制させる一因となっている。

 2016年度の企業の採用意欲は高水準が続いているものの、拡大基調に頭打ちの兆候がみられる。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,189社、有効回答企業1万497社、回答率45.3%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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