事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2016年6月特別企画 -

 

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2016年7月14日
株式会社帝国データバンク

BCP策定、企業の15.5%にとどまる

〜 半数超の企業が「地震」を意識、大規模地震の想定地域で高く 〜


はじめに

 近年、地震や台風・豪雨などの自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合の企業活動への影響を想定し、企業活動を休止することなく、あるいは早期復旧させるなどして事業を継続させるため、予め防災・減災対策、災害発生時や発生後の対応措置などに対する重要性が高まっている。
 そこで、帝国データバンクは、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2016年6月調査とともに行った。
※調査期間は2016年6月17日〜30日、調査対象は全国2万3,606社で、有効回答企業数は1万471社(回答率44.4%)

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 普段、業務を行うなかで最も意識している災害は「地震」が51.8%で最多。さらに、「火災」19.5%、「水害」7.7%など、8割超の企業が自然災害を挙げた。特に「地震」では、「高知県」「静岡県」「和歌山県」「愛媛県」「東京都」など、大規模地震の発生が想定されている地域で高い
  2. 事業継続計画(BCP)の策定状況は、「策定している」企業が15.5%にとどまる。「現在、策定中」「策定を検討している」を合わせても半数に満たず。従業員の少ない企業ほど策定が進んでおらず、策定している割合は従業員数「5人以下」と「1,000人超」では10倍以上の開き
  3. 災害時における人的資源への対策について、自社で経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりとなる人物が「いる」企業は63.7%。ただし、従業員数「5人以下」では42.9%にとどまり、経営者が不測の事態に陥ることが企業の存続問題につながりやすい状況
  4. 自社に緊急事態が起こった場合の従業員の安否確認方法は、「携帯電話、携帯メール」が82.7%で最多。「固定電話(公衆電話含む)、FAX」「IP電話、パソコンメール」が続く。大規模地震への対策では、「設備の転倒防止(固定等)」が33.7%で最多となり、以下「食料の備蓄」「災害用の損害保険への加入」が続く。他方、大企業では「避難訓練」「食料の備蓄」が4割を超える
  5. 緊急事態発生後のキャッシュフローに必要となる売上の1カ月分以上の現預金を災害に備えて保有している企業は39.4%。ただし、現預金が1カ月分未満にとどまる企業も多く、災害復旧時や緊急時にかかる資金手当てに不足が生じる可能性も

1. 企業の半数超が「地震」を最も意識、自然災害が8割を占める

 普段、業務を行うなかでどのような災害を最も意識しているか尋ねたところ、「地震」と回答した企業は51.8%で半数超にのぼった。さらに、「火災」19.5%、「水害」7.7%と続き、「他の自然災害」と合わせて8割を超える企業が自然災害を挙げた。以下、「犯罪行為(不正アクセス、テロなど)」5.6%、「伝染病(新型インフルエンザなど)」3.4%、「その他」1.3%となった。また、普段、災害を「意識していない」企業は4.6%で、多くの企業が突発的な災害を意識している様子がうかがえる。
 特に、「地震」を最も意識している企業を都道府県別にみると、「高知県」が最も高く80.0%となった。次いで「静岡県」71.6%、「和歌山県」70.2%、「愛媛県」66.1%、「東京都」65.4%が高く、東南海・南海トラフ地震や東海地震、首都直下地震などの大規模地震が想定されている地域で高くなっている。
 企業からは、「会社自体を安全な場所に移し、地震や津波、水害などが来ても、最小の被害で済むようにしている」(生ゴム・ゴム製品卸売、茨城県)や「地震等の災害の場合、自社のみならず顧客、取引先にも影響がある事を考慮すると、東日本大震災と同様に、暫く機能マヒを起こすことが予想される。その際のビジネス停止部分の継続性に関して検討が必要と認識している」(経営コンサルタント、東京都)や「地震や水害などで被災することは、現時点では想定していないが、火災などの2次災害に対しての防災・初期消化の対策をしている」(自動車(新車)小売、青森県)などの声があった。しかし、「災害が少ない地域なだけあってほとんど考えていなかった。地域としては水害が一番懸念されるものの、立地としてはあまり心配のない地区なので対策をしていない」(米麦卸売、福井県)、「地震などが事業継続において危険であることは分かっているが具体的な行動に移せていない」(各種食料品小売、静岡県)といった、災害対策を十分に行っていないという意見もみられた。

2. 事業継続計画(BCP)、「策定している」企業は15.5%にとどまる

 自社における事業継続計画(BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」と回答した企業は15.5%にとどまった。また、「現在、策定中」8.3%、「策定を検討している」22.7%を合わせても半数に満たず、事業継続計画の策定が進んでいない実態が浮き彫りとなった。
 BCPを「策定している」企業を業界別にみると、『金融』が最も高く44.9%だった。次いで、『農・林・水産』が22.4%で2割を超えていた。しかし、『不動産』は10.1%にとどまっているほか、『卸売』12.1%や『小売』12.7%も割合が低くなるなど、業界間でBCPの策定状況が大きく異なることが分かった。
 とりわけ、従業員数別にみると、BCPの策定状況の違いが顕著に表れている。従業員数が5人以下の企業では5.3%にとどまる一方、1,000人超の企業では56.6%と半数を超える企業でBCPが策定されており、10倍以上の開きがあった。
 企業からは、「東日本大震災を教訓としてBCPを策定し、2013年10月1日より運用している」(アルミニウム・同合金圧延、福島県)や「事業継続計画については、インフルエンザのパンデミックを機に策定した」(生鮮魚介卸売、兵庫県)など、過去の震災等を機に策定したという声が多かった。しかし、「BCPは策定しているが、現実的にどのような状態になるかは想定できない。未経験のため計画推進に自信がないのが現状」(試験機製造、東京都)といった、計画は策定しているものの、運用に不安を感じているという意見もあった。中小企業からは、「当社のような中小企業では、策定するノウハウがない」(床板製造、群馬県)や「BCPの策定まで手が回らない。また、それを策定できる人員あるいは能力が不足している」(利用運送、愛媛県)など、策定したくともノウハウや人員が足りないと指摘する企業も多くみられた。






3. 経営者に不測の事態が起こった時、従業員「5人以下」では企業の存続問題に直結

 災害時における人的資源への対策について、自社の経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりの人物がいるかどうか尋ねたところ、「いる」と回答した企業は63.7%だった。企業の6割超は、不測の事態における経営者の代わりを務める人材が確保されていた。
 しかしながら、経営者不在時に代わりとなる人物が「いる」企業を従業員数別にみると、従業員数が「5人以下」の企業では4割程度にとどまっている。従業員数が増加するにつれて、経営者の代わりとなる人物が確保できており、従業員数「1,000人超」では8割を超え、「5人以下」の企業の約2倍となっている。経営者(代表)の代わりとなる人物は従業員が少ないほど確保できておらず、経営者が不測の事態に陥ることが当該企業の存続問題につながりやすい状況が浮き彫りとなっている。


 

4. 緊急事態における従業員の安否確認方法、「携帯電話、携帯メール」が8割超

 災害など自社に緊急事態が起こった場合、従業員と連絡を取り合うためにどのような安否確認の方法を決めているか尋ねたところ、企業の82.7%が「携帯電話、携帯メール」と回答し、最多となった(複数回答、以下同)。次いで、「固定電話(公衆電話含む)、FAX」が28.2%で2位、「IP電話、パソコンメール」が21.2%で3位となり、従来型の電話やパソコンメールが2割を超えた。以下、「SNS(ツイッター、Facebook、LINEなど)」15.8%、「直接訪問」15.5%、「災害伝言サービス(171、スマホアプリ)」15.1%、「自社の安否確認システム」10.8%と続いた。また、「特に決めていない」は1割未満となり、9割を超える企業で従業員との連絡方法を取り決めていた。

 企業からは、「外部の従業員安否確認サービスに加入」(アルミニウム・同合金圧延、福島県)や「簡易型無線機を事務所基地局と各サービスカーに搭載」(圧縮ガス・液体ガス卸売、神奈川県)、「災害時優先電話回線を設置」(一般電気工事、岩手県)といった意見があった。

 

5.大地震対策は「設備の転倒防止」が最多、大企業は「避難訓練」「食料備蓄」が4割超

 大規模地震に対してどのように対策しているか尋ねたところ、「設備の転倒防止(固定等)」が33.7%で最多となった(複数回答、以下同)。次いで、「食料の備蓄」27.6%、「災害用の損害保険への加入」27.0%、「避難訓練」26.4%が続き、いずれも2割超となった。ただし、大規模地震に対して、「大企業」ほど複数の対策を講じているほか、その対策項目も「避難訓練」46.8%や「食料の備蓄」45.7%が4割超となっており、「中小企業」「小規模企業」を大幅に上回っている。
 企業からも、「データを遠隔地でバックアップ」(印刷、山形県)といったデータ保全対策や、「従業員の帰宅困難者の事務所での宿泊設備の準備」(非鉄金属卸売、愛知県)、「高度利用緊急地震速報端末の設置」(電気機械器具卸売、東京都)など、さまざまな対策を取り入れている様子がうかがえる。


 

6.災害に備えた現預金、「売上の1カ月分以上」を保有している企業は4割にとどまる

 中小企業庁では「中小企業BCP策定運用指針」において、緊急事態発生後のキャッシュフロー対策として「災害発生後1カ月分の支出を賄える現金・預金を保有していることが望ましい」としているほか、事業中断による損害に備えて「月商の1カ月分くらいの現金・預金を持っていること」を薦めている。
 そこで、自社で災害に備えて現預金をどの程度保有しているか尋ねたところ、売上の1カ月分以上を保有している企業は39.4%(「売上の1〜3カ月分未満」と「売上の3カ月分以上」の合計)となり、約4割の企業が緊急事態発生後のキャッシュフローに必要となる1カ月分以上の現預金を保有していることが明らかとなった。ただし、「ほとんど保有していない」企業が2割を超えているほか、「売上の1週間〜1カ月分未満」が14.0%、「売上の1週間分未満」という企業も6.5%となっており、災害復旧時における事業運営費や、緊急時における工場や事務所の整備や事業再開への対策等にかかる資金の手当てに不足が生じる可能性もある。
 規模別にみると、「中小企業」で売上の1カ月分以上を保有している企業は40.1%となっている。一方、「うち小規模企業」は現預金を確保する余力が苦しいこともあり36.0%にとどまった。


 

まとめ

 平成28年熊本地震などの大規模地震のほか、台風や豪雨災害、あるいは伝染病やテロ、不正アクセスなど、緊急事態が発生した時に事業を継続させるための計画「事業継続計画(BCP)」を策定する重要性が高まっている。しかしながら、本調査の結果、企業のBCP策定状況は依然として進んでいない実態が浮き彫りとなった。とりわけ、従業員の少ない企業では、策定のためのノウハウ不足や時間、コストの負担などから策定していない企業が多い。また、大規模地震の想定される地域を中心に企業の半数超が「地震」災害を意識し、「設備の転倒防止」や「食料の備蓄」「災害用の損害保険への加入」などの対策を講じている様子がうかがえる。
 他方、6割超の企業では、災害時に経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりとなる人物がいることも明らかとなった。緊急事態発生後のキャッシュフローは売上の1カ月分以上が望ましいとされるが、災害に備えて現預金を確保している企業は4割となっている。
 企業はBCP策定とともに、災害復旧時や事業再開時の資金不足への対応も予め想定する必要があろう。

 

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,606社、有効回答企業1万471社、回答率44.4%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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