イギリスのEU離脱に関する企業への影響調査

- TDB景気動向調査2016年8月特別企画 -

 

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2016年9月14日
株式会社帝国データバンク

企業の51.3%が日本経済に「マイナス」

〜 イギリスへの直接進出企業、移転先にアジアや北米・中南米も候補に 〜


はじめに

 2016年6月24日(日本時間)、イギリスは国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を選択した。Brexitの影響は、イギリスやEU域内に進出している企業にとどまらないとみられている。また、現在交渉が進む「日EU経済連携協定」についても、EUの混乱にともなう合意の遅れは避けられず、対EU貿易やEU市場参入などにおいて、広く日本企業へ影響が出ることが懸念される。
 そこで、帝国データバンクは、イギリスのEU離脱に関する企業への影響について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2016年8月調査とともに行った。

※調査期間は2016年8月18日〜8月31日、調査対象は全国2万3,700社で、有効回答企業数は1万508社(回答率44.3%)。

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 現在、企業の9.2%がイギリスまたは欧州連合(EU)加盟国に進出。販売拠点や現地法人の設立など直接的な進出は1.9%だった一方、業務提携や輸出入など間接的な進出は7.5%。規模別では、大企業ほど直接進出する傾向が高い。業界別では、『製造』『卸売』が上位を占めるが、直接進出では『金融』がトップ
  2. 進出先では、「ドイツ」が35.9%でトップ、次いで「イギリス」が31.5%、「フランス」(23.3%)、「イタリア」(21.4%)が続く。進出企業のうち、検討・予定している移転先では「アジア地域」が2.9%で最も高い。次いで「EU域内(具体的な移転先は未定)」が1.6%、「イタリア」が1.5%で続く。とりわけ、現在イギリスに直接進出している企業では、「EU域内(具体的な移転先は未定)」が7.7%で最も高く、「ドイツ」「フランス」「アジア地域」「北米・中南米地域」が同率の3.8%で続き、「EU域内」を検討・予定している企業は合計で12.8%
  3. 企業の51.3%がイギリスのEU離脱で日本経済に「マイナスの影響がある」と認識。自社の企業活動に対しては、「影響はない」が62.6%と最多で、「マイナスの影響がある」は9.4%にとどまるが、イギリスに直接進出している企業では46.2%がマイナス影響を懸念

1. 企業の約1割がイギリスまたはEU加盟国への進出あり

 現在、自社がイギリスまたは欧州連合(EU)加盟国に進出しているか尋ねたところ、生産拠点や販売拠点など直接的な進出を行っている企業は1.9%、業務提携や輸出など間接的な進出は7.5%となった(複数回答、以下同)。直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業は9.2%となり、約1割の企業がイギリスまたはEU加盟国と関わりを持って事業を行っていることが明らかとなった。他方、「進出していない」は87.9%だった。
 「直接進出あり」と回答した企業の海外事業内容をみると、支社・支店などを含む「販売拠点」が1.0%で最も多く、「生産拠点」は0.5%だった。また、「現地法人の設立」は0.7%、「資本提携」は0.3%となった。他方、「間接進出あり」では、商社や取引先などを経由した「間接輸出」、商社等を経由せず直接海外と取引している「直接輸入」、「間接輸入」、「直接輸出」、技術提携などの「業務提携」、生産委託などの「業務委託」の順で高かった。



 規模別にみると、進出企業は規模が大きくなるほど多く、「イギリスまたはEU加盟国への進出あり」は「大企業」(13.0%)、「中小企業」(8.2%)、「小規模企業」(5.5%)と続き、「大企業」は「小規模企業」を7.5ポイント上回る。特に、直接進出では「大企業」の4.5%に対して「小規模企業」は0.8%となり、間接進出と比較して企業規模間でイギリスやEU加盟国への進出状況の違いが大きく表れている(「大企業」と「小規模企業」の進出倍率は直接進出5.63倍、間接進出2.02倍)。
 業界別では、イギリスまたはEU加盟国に進出している企業は『製造』(14.4%)と『卸売』(11.3%)が1割を超えている。他方、直接的な進出に絞ると、『金融』が3.3%で最も高く、次いで『製造』(2.9%)、『運輸・倉庫』(2.8%)、『卸売』(1.8%)が続いた。


2. イギリスへの直接進出企業、検討・予定している移転先は「アジア地域」がトップ、「EU域内」計は約1割

 イギリスまたはEU加盟国に進出している企業に対して、現在、どこの国・地域に進出しているか尋ねたところ、「ドイツ」が35.9%でトップとなった。次いで、「イギリス」が31.5%となり、「ドイツ」とともに3割超の企業が進出していた。以下、「フランス」(23.3%)、「イタリア」(21.4%)が2割を超えたほか、「スペイン」「オランダ」(ともに11.9%)、「ベルギー」(9.0%)、「その他のEU加盟国」(7.9%)、「スウェーデン」(7.5%)、「オーストリア」(5.2%)が上位10カ国・地域となった。
 また、現在の進出先から検討・予定している移転先を尋ねたところ、「アジア地域」が2.9%でトップとなった。以下、「EU域内(具体的な移転先は未定)」(1.6%)、「イタリア」(1.5%)、「イギリス」(1.3%)、「ドイツ」(1.2%)が続いた。他方、現在イギリスに直接進出している企業をみると、「EU域内(具体的な移転先は未定)」が7.7%で最も高く、次いで、「ドイツ」「フランス」「アジア地域」「北米・中南米地域」が3.8%で続いた。イギリスに直接進出している企業で「移転は検討してない/予定はない」は5.1%にとどまっており、「EU域内」計 でも12.8%となっている。現時点では、多くの企業は対応を考えあぐねているものの、一定数の企業がイギリスから他の国・地域への移転を検討・予定している様子が浮き彫りとなった。


「EU域内」計は、各EU加盟国または「EU域内(具体的な移転先は未定)」の少なくとも1カ国・地域を選択した企業の割合


3. イギリスのEU離脱で半数超の企業が日本経済に「マイナスの影響」、 イギリスへの直接進出企業では46.2%が自社の企業活動に「マイナス」と認識

 イギリスが欧州連合(EU)から離脱することで、日本経済全体や自社が属する業界、また自社の企業活動にどのような影響があると思うか尋ねた。
 日本経済全体に対しては、「プラスの影響がある」と回答した企業は0.9%だった一方、「マイナスの影響がある」は51.3%となり、半数を超える企業で日本経済に与える影響について懸念を抱いていることが明らかとなった。また、「影響はない」は1割程度だったほか、「分からない」も35.8%となっており、3社に1社は影響をはかりかねている様子がうかがえる。

1.「EU域内」計は、各EU加盟国または「EU域内(具体的な移転先は未定)」の少なくとも1カ国・地域を選択した企業の割合


 自社の属する業界に与える影響については、「プラスの影響がある」は0.6%で日本経済全体と差異はみられなかったものの、「マイナスの影響がある」が16.3%と35.0ポイント減少した一方、「影響はない」は49.1%と半数近くへと増加している。
 また、自社の企業活動に与える影響は、「プラスの影響がある」が0.7%となり日本経済全体や自社の属する業界と同程度だったものの、「マイナスの影響がある」は9.4%となった。他方、「影響はない」は62.6%と6割を超えており、日本経済全体を50.5ポイント上回った。
 イギリスのEU離脱について多くの企業が経済全体への影響を懸念する一方、自社の企業活動など身近な領域になるほど、より楽観的に捉えている様子がうかがえる。しかしながら、イギリスに直接進出している企業では、46.2%が自社の企業活動に「マイナスの影響がある」と考えており、各社は海外戦略の見直しを含めた対応に直面していくとみられる。
 企業からは、「イギリスに進出している企業は多く、離脱の影響は日本経済全体にもあらわれる」(ごみ収集運搬、北海道)や「顧客が進出しており体制が不安定であると設備投資に影響が出る」(プラスチック加工機械・同付属装置製造、東京都)といった、設備投資などマクロ経済への影響を指摘する声があがった。また、「どんな展開になるのか、現在のところ予想がつかず、静観中。離脱のスケジュールが具体化した段階で、国内提携先と相談の上、対応を決めたい」(医療用機械器具製造、長野県)や「取引先に英国進出先があるが、態度は未定なため今後注視していく必要がある」(非鉄金属ダイカスト製造、岩手県)など、自社や取引先が進出している企業においても対応を決めかねているという声が多くあった。他方、「イギリスのEU離脱によるポンド安は当社にとっては追い風になる」(自動車部分品・付属品卸売、滋賀県)や「EU離脱により為替が円高傾向に推移しており、輸入価格(支払)が安価になったため、利益率が10%以上向上した」(精密機械器具卸売、大阪府)など、プラスの影響を指摘する意見も一部で聞かれた。

まとめ

 イギリスがEUから離脱するという国民投票の結果は、日本経済においても株価下落や円高進行などが一時的に生じることとなった。今後については、先行きへの不確実性が高まり、政策対応も見えないなかで、日本経済や企業活動に対する影響は長期的な視点で考える必要がある。イギリスには1,380社の日本企業が進出しているなか(「イギリス進出企業実態調査」帝国データバンク)、離脱問題はイギリスやEU加盟国と間接的に取引している企業や、国内におけるその取引先にも影響が及ぶ可能性がある。
 本調査によると、企業の半数超が日本経済に「マイナスの影響がある」と見込んでいることは、今後の経済活動にとっても明るい材料になるとはいい難い。現在、イギリスまたはEU加盟国に進出している企業は大企業を中心に約1割にとどまる。しかしながら、とりわけ、イギリスに直接進出している企業では、半数近くの企業が自社の活動にマイナスの影響があると考えており、海外戦略の見直しを含めて今後の重要な課題として捉えている様子がうかがえる。
 EUの運営は従来以上にドイツやフランスが主導することになると予想されている。イギリスの不在で非ユーロ圏の権益確保がますます難しくなるとみられるなかで、自由貿易の推進に逆風となる可能性も否定できない。企業から「他のEU加盟国に離脱の動きが波及しないか心配。EU体制は理想としては良いが、加盟国間の経済・財政等の格差が大きい中では矛盾もはらんでいる」(缶詰・瓶詰食品卸売、北海道)といった声もあるように、EUそのものの将来を懸念する見方も多い。最低でも2年間が必要とされるイギリスとEUとの離脱交渉が進むなかで、今後、企業が取りうる対策を慎重に見極めていくことが肝要となろう。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,700社、有効回答企業1万508社、回答率44.3%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 産業調査グループ 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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