最低賃金改定に関する企業の意識調査

- TDB景気動向調査2016年9月特別企画 -

 

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2016年10月17日
株式会社帝国データバンク

『小売』の48.9%が給与体系を見直し

〜最低賃金改定、消費回復には不十分と認識〜


はじめに

 2016年10月1日から20日にかけて最低賃金が改定される。2016年度の最低賃金の改定は、政府の「ニッポン一億総活躍プラン」や「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太の方針)、「日本再興戦略2016」などを踏まえ、最低賃金が時給で決まるようになった2002年度以降で最高額の引き上げとなり、すべての都道府県で700円を上回ることとなった。そのため、収入増加による消費活性化などが期待される一方で、人件費上昇による企業収益の悪化などが懸念されている。1
 そこで、帝国データバンクは、最低賃金の引き上げに関する企業の見解について調査を実施した。なお、本調査は、TDB景気動向調査2016年9月調査とともに行った。


※調査期間は2016年9月15日〜9月30日、調査対象は全国2万3,710社で、有効回答企業数は1万292社(回答率43.4%)。

※本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。

調査結果(要旨)

  1. 最低賃金の改定を受けて給与体系を「見直した(検討している)」企業は35.0%となり、特に非正社員を多く抱える『小売』や『運輸・倉庫』『製造』で4割を超えた。他方、「見直していない(検討していない)」企業は49.1%となった。地域別では、『北海道』(43.4%)が最も高く、『九州』(40.7%)、『中国』(40.2%)で4割を上回った
  2. 従業員を実際に採用するときの最も低い時給は、全体平均で約958円。最低賃金(823円)を135円上回る。『東京』において最低賃金と採用時最低時給の差額が最も大きかったが、差額が大きい地域は西日本が上位を占めた
  3. 今回の引き上げ額について、「妥当」と考える企業が40.5%で最多。「妥当」は「高い」(11.6%)、「低い」(18.1%)を大きく上回り、総じて企業側に受け入れられている様子がうかがえる
  4. 自社の業績に対する影響では、「影響はない」が57.9%で最多。「プラスの影響がある」は1.7%にとどまった一方、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えた
  5. 今後の消費回復への効果について、「ある」と考える企業は10.2%にとどまる一方、「ない」は53.7%と半数を超えており、消費回復に対しては懐疑的な見方をする企業が多数を占める
1.最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度。改定後の最低賃金は全国平均で25円引き上げられ、地域別では都道府県ごとに21〜25円引き上げられ時給714〜932円となる(産業別最低賃金等は別途定められる)。

1. 企業の3社に1社が給与体系を「見直し」

 最低賃金の改定を受けて、自社の給与体系について見直しの有無を尋ねたところ、「見直していない(検討していない)」企業が49.1%となった 2。他方、「見直した(検討している)」企業は35.0%で3社に1社が見直しを実施または検討していた。約半数の企業は給与体系に変更を加えていないものの、最低賃金の改定への対応として給与体系を見直した企業も多くみられており、最低賃金が比較可能な2002年以降で最大の上げ幅となった影響が如実に表れる結果となった。
 給与体系を「見直した(検討している)」とした企業を業界別に見ると、『小売』が48.9%となり半数近くにのぼった。非正社員の雇用割合が高く、最低賃金の引き上げが直接的に給与体系の見直しにつながっている様子がうかがえる。以下、『運輸・倉庫』(43.4%)、『製造』(41.0%)が4割を超えた一方、『金融』は1割台にとどまるなど、業界間で大きく対応が異なった。見直した企業を地域別にみると、『北海道』(43.4%)が最も高く、次いで『九州』(40.7%)、『中国』(40.2%)となり、3つの地域が4割を上回る結果となった。
 給与体系を見直した理由について、企業からは「人材確保のほか、働きやすい職場環境づくりや中途離脱者防止のため」(農業協同組合、北海道)や「非正規社員不足による人材補充への応募対応、および政府の最低賃金引上げへの対処」(貸事務所、福岡県)、「より働きやすく、成果を上げた、または頑張っている社員への評価制度を見直し、人事給与制度を抜本的に見直した」(投資業、広島県)といった声があがっており、最低賃金での採用の有無にかかわらず、人事評価も含めた給与体系の見直しを行うなど、人手不足が強まるなか最低賃金改定は人材確保に影響を与えている様子がうかがえる。


2.給与体系の見直しについて、正社員、非正社員(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など)の雇用形態は問わず、回答を求めた。

2. 従業員採用時の最も低い時給は平均958円、最低賃金を135円上回る

従業員を実際に採用するときの最も低い時給を尋ねたところ、全体平均は約958円となり、改定後の最低賃金の全体平均823円を135円上回る金額となった 3
都道府県別で比較すると、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最大だったのは『東京都』で、差額は+165円(採用時最低時給約1,097円)となった。以下、『島根県』(+162円、同880円)や『沖縄県』(+161円、同875円)、『鹿児島県』(+159円、同874円)、『福岡県』(+156円、同921円)が続き、西日本を中心に最低賃金と採用時の最低時給の差額が大きくなっている。また、両者間の乖離率をみると7県が2割以上となったものの、東日本では原発事故からの復旧が続く『福島県』が乖離率21.5%と高水準となった。
制度として定められている最低賃金と、採用時の最も低い時給の実態との間で乖離がみられ、とりわけ地域間の格差が顕著に表れる結果となった。



3.従業員を採用するときの最も低い時給として、次の条件で回答を求めた。(1)正社員、非正社員(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など)の雇用形態は問わない、(2)日給、週給、月給などの場合、時給に換算する。

3. 引き上げ額、「妥当」と考える企業が4割で最多

 今回の最低賃金の引き上げ額は、労働者やその家族が最低限度の生活を維持していくうえで、妥当と思うか尋ねたところ、「妥当」と回答した企業が40.5%にのぼり、「低い」(18.1%)を22.4ポイント上回った。「高い」は11.6%にとどまっており、人件費の増加要因となる改定にもかかわらず、今回の最低賃金の引き上げ額は総じて受け入れられている様子がうかがえる。



4. 業績への影響、企業の21.7%が「マイナスの影響」と認識

 今回の最低賃金の引き上げで、自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、「影響はない」と回答した企業が57.9%で最多となった。他方、「プラスの影響がある」は1.7%にとどまったのに対し、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えており、最低賃金引き上げが自社の業績に与える影響を懸念する企業が多くみられた。
また、自社業績への影響と引き上げ額の妥当性の関連をみると、引き上げ額が「高い」と感じている企業ほど自社業績に「マイナス」と捉える傾向がある。とりわけ、「飲食店」や「家具類小売」、「飲食料品小売」で、この傾向が顕著に表れた。


5. 消費回復への効果、半数を超える企業で懐疑的

 今回の最低賃金の引き上げは、今後の消費回復に効果があるか尋ねたところ、「ある」と回答した企業は10.2%だった一方、「ない」は53.7%と半数を超えた。最低賃金の引き上げが、消費の回復に結びつくか懐疑的に考えている企業が多数を占める結果となった。
企業からは、「家計の収支構造が変化しているなか、一概に所得を増やしたからといって消費活動が好転するとは言えない」(自動車車体・付随車製造、北海道)や「非正規雇用者の増加に歯止めがかからない状況で、最低賃金の引き上げだけで今後の消費回復に効果があるとは考えられない。根本的な雇用対策、生涯賃金レベルが改善されなければ意味がない」(農業協同組合、大阪府)といった、生涯所得が増えなければ消費に結びつかないという意見があがった。他方、消費回復が「ある」とする企業からは、「全産業で最低賃金を1,000円程度に上げるべき。賃金の底上げをすることで消費の拡大につながる」(パン・菓子製造、大阪府)や「企業が内部留保をためやすい状況のため、最低賃金の増加は長期的にみて良い手だと思う」(製缶板金、熊本県)などの声も聞かれた。

まとめ

 2016年度の最低賃金改定は10月1日から中旬にかけて全国で実施されるが、今回の引き上げ額は2002年度以降で過去最大となった。また、個人消費の弱含みが続くなかで、賃金の上昇は消費改善の基盤となることが期待される。
 本調査によると、今回の改定を受けて3割を超える企業が給与体系の見直しを実施(検討含む)していた。また、最低賃金の引き上げが自社の業績に「マイナスの影響がある」と考えている企業も2割を超えており、なかでも、非正社員を多く抱える「飲食店」や「飲食料品小売」「家具類小売」などを含む『小売』において、引き上げ額と業績への影響との関連が顕著に表れていた。
 他方、従業員を採用する際の最低時給は、最低賃金を平均して135円上回っている。最低賃金の地域間格差は幾分縮小したとされるものの、実際の採用時の賃金には依然として乖離が生じていることが明らかとなった。ただし、最低賃金の引き上げで消費の回復につながると考える企業が少ないなかで、「人材派遣料の値上がりや諸消費財の値上がりに繋がってきて、経営を圧迫して来るのではないかと危惧する」(工業用プラスチック製品製造、東京都)など、コスト負担増加に対する企業の懸念を払しょくする対策が同時に投入される必要がある。

調査先企業の属性

1)調査対象(2万3,710社、有効回答企業1万292社、回答率43.4%)

2) 企業規模区分

中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。

注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング


【問い合わせ先】
【問い合わせ先】株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
担当:窪田 剛士
Tel:03-5775-3163
e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com/)をご参照下さい。

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